数字がぼくを蝕む
ぼくの目は、数字に呪われている。
SNSの画面に並ぶ、小さな黒い文字列――「いいね」や「リツイート」の数。
それは本来、ただの情報のはずだ。
しかし、ぼくにとっては脈打つ生き物のように見える。
一つ増えれば胸がわずかに浮き、一つ減れば胃の底が沈む。
まるで血圧計の針のように、その数字はぼくの生命活動を測ってくる。
「今日は低いですね」と言われれば、もう生きている実感すら薄れる。
かつては、読んだ人の表情を直接見ることができた。
教室の後ろの席、喫茶店の斜め向かい。
ほんの一瞬の目の輝きや、息を呑む気配が、ぼくに生きている証拠をくれた。
だが、今のぼくには数字しかない。
そして数字は、何も語らない。
冷たい、しかし残酷なほど正直な沈黙だけを差し出す。
夜中、通知の光に呼び寄せられてスマホを開く。
指先で画面をスライドするたび、脳のどこかが甘く疼く。
それは麻薬に似た感覚かもしれない。
「もう一度見れば、また数字が増えているかもしれない」
そう思っては何度も更新する。
だが大抵、数字は変わらない。
変わらないことが、ぼくをまた更新へと駆り立てる。
眠れないまま朝を迎える。
まぶたの裏に、青白い数字が焼きついて離れない。
ぼくはもう、文章を書くためにSNSを開いてはいない。
数字を見るために、書いているのだ。
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