第14話 空を汚す物


 ドラゴンが実在する


 それだけの事で、人間社会はとんでもない大騒ぎだ

 ヤトが航空妨害を行ったせいで、海路も閉ざされ、今や他国間の貿易で無ければ経済活動を維持出来なくしてしまった日本経済は凍結され、食糧自給を諦め他国からの輸入に頼りきっていた政策の失敗が表面化した


 深く考えもせず隣国の浸透戦略にまんまと乗せられ、身分照会すらせず受け入れ続けた移民は、日本人を騙し、殺し、生きる為に暴動と略奪を繰り返し、遂には治安組織警察だけで対処不可能となり、一部自衛隊が治安出動している


 輸出入が止まって僅か一週間でこれだ

 何しろガソリンが無いから、現場へ食糧の配給すら出来ない


 実際、東雲と佐伯も、この現場へ来る以前に大阪に在った人民解放軍の秘密支部を強襲して来たばかりだが、残念な事に既に数千万人もの人民解放軍工作員が日本に潜伏して居て、特戦群だけてばとても全てに対処出来なかった


 何しろ機に乗じて日本征服を企む大陸系組織は、人民解放軍以外にも北半島処か南半島の工作員まで動員されている

 特に半島系工作員は既に政府機関や公務員、何なら自衛隊内部にまで浸透している


 日本経済の凍結に伴い、産業も商取引きも停止してしまい、銀行まで止まっては、労働者の立場でしかない殆どの国民は生きる術を持たない


 ヤトが空を止めた事で、結果的には自動車の運行も不可能となった


「そうなる事は分かってた、人間は自動車の排ガスが地球温暖化に一番影響が強いと主張してるけど、それはウソだよ」


「どう言う事だ?」

 学者の研究データを元に、温暖化ガス排出規制の国際的取り決めまでされている為に、環境に配慮したEVへの転換を政府主導で推進さえしてる


「そうする事で、解決不可能な問題から眼を逸らし、尚且つ頭打ちに為りかけている自動車産業全体に新たな需要を生み出す事が叶うからだと思います …… 」


「それは …… 科学者が嘘を付いてるって事か?」

「科学者だけで無く、各国政府もグルと為って、全人類を騙しているのです」


 再生可能エネルギーの強引な導入や、EV推進の強化も全ては「誰か」の利権の為だとでも言うのか


「化石燃料を使用するクルマからハイブリッド車、EVに乗り換え推進の為に何千億もの補助金をバラ撒いておいて、今度は政策実行の為の税金が足らないと言い出す政府を、信じられますか?」


「いや、そう言う問題なのか?」

「何でもかんでも政治のせいにするのは、少し違うんじゃ無いですか?」


 流石に話しが飛躍している感じは否めない


「じゃあ、人間が付いてる嘘で、一番肝心な事を教えるね … 」

 レトルトポウチのカレーを飲み干したヤトは、一息付くと己の正当性の証明を続ける


「温暖化ガスに依る大気汚染で、最も悪質なのは自動車よりも航空機なんだよ」


 一般的な学説では自動車の排ガスが15%

 航空機の排ガスは3%程度の筈だ


「それこそが人間の営み経済と産業を守る為の嘘、飛行機雲ってどうして出来るか知ってる?」


「翼の揚力に依り、気圧差で水蒸気が雲に為るんだろ?」

「先輩、博識っすね!」

「小学校で習うだろ …… 」


「高高度の低気温では、水蒸気も排ガスも凍り付いて雲に為る … そして、問題なのは、その飛行機雲は消えないって事」


「???いや、消えて無くなるだろ?」


「消えた様に見えるくらい希釈されただけ、汚染物質である微粒子は空を覆い尽くす」

「2001年にアメリカ同時多発テロ事件が起きた時、3日間の全面飛行禁止を行った結果、地上の気温差が1℃以上有ったの、分かる?たったの3日間よ?」


「そりゃ …… 」

「マジっすか?」


「低空なら、水蒸気はいつか雨と為り地上へ戻るけど、高高度に漂う汚染物質は地上へ戻らず、地上からの輻射熱を成層圏より下に封じ込める」


「第二次世界大戦後、急速に発展したジェット旅客機に依り、それまでより遥かに高空を汚染する様に為ったのよ」


「あ、そう言えば …… アメさん米軍のB2ステルス戦略爆撃機って、飛行機雲で見付からない様に排ガスに猛毒の化学物質混ぜて飛ぶとか」


「佐伯、お前たまに変な知識持ってるな?」

「えへへ …… 」

「褒めて無えよ」


「近年では、天体観測の望遠鏡を衛星軌道に打ち上げるのも、目には見えない高高度の大気汚染が原因なの」


 既に地上からでは正確な観測が不可能なほど深刻らしい

 だが、それらの情報はこれまで学会や政府機関の主張して来た事と正反対である


 

 

 

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る