ツン 100% デレ 0%

「へぇ〜、○○ちゃんって料理うまいんだ。意外」


そう言った俺の一言に、向かいの席の彼女がピクッとまぶただけ動かしたのを俺は見逃さなかった。


「なに、それ。褒めたつもり?」


「いや、事実じゃん? お弁当すごかったし」


「ふ〜ん……そう。そっかぁ」


ぱたん、と彼女は教科書を閉じてスッと立ち上がる。


「ねえ、なにか用事でもあった? 私、もう帰るから」


「えっ、まだ授業終わって……」


「関係ないでしょ?」


冷たく切り捨てられた声。

でもその耳がほんのり赤いのは、怒ってる証拠。


俺は追いかけるべきか迷って――けどその背中に向かって、思わず言ってしまった。


「なあ、もしかして……焼きもち妬いてる?」


その瞬間、彼女の足が止まる。


ピタリ、と完璧に。


「はああああっ??????」


振り返った彼女は頬を真っ赤にして、拳をぷるぷる震わせていた。


「ばっ、バカじゃないの? 誰が? 誰があんたなんかに焼きもちなんて……っ‼︎」


って……ひどくない?」


「うるさいっ! 近寄らないでっ!」


そう叫んで、教室を飛び出していったツン子。


でもたぶん……

あれは図星だったんだと思う。




「ねえ、あんたってさ――」


昼休み。俺がのんびりパンをかじってると、向かいに座ってきたツン子がとびきり冷たい声で言った。


「女子と話すの、好きなんだ?」


「……えっ?」


「さっき○○ちゃんと楽しそうに笑ってたよね。『○○ちゃんって料理うまいんだ〜』って、ニヤニヤしながら。」


「……あれ、聞いてたの?」


「うん。耳腐るかと思った。あと、キモかった」


ぐさっ。


「ちょ、ちょっと待って! キモいって……」


「だって実際キモいじゃん? どうして私じゃなくてあの子褒めるの?」


「それは……たまたま話の流れで……」


「ふーん? へぇ〜? じゃあ、あんたの中では、私はたまたま話題にも出ない存在ってこと?」


「いや、そうじゃなくて……」


「うわ、無理。なにその苦しい言い訳。見てるこっちが恥ずかしいんだけど?」


ぼろっぼろに切り捨てられて、俺は言葉が出なかった。


なのにツン子は、テーブルに肘をついてこっちを見下ろすように言う。


「で? キミのことが一番だよ〜って、私に媚びたいわけ?」


「えっ……」


「無理。絶対許さない。でも……あとでLINEしといて。夜にちゃんと話、聞いてあげるから」


「……え?」


「なに、『え?』って。そういうとこ、ほんとバカ」


言いたいこと全部言って、そっぽ向いて立ち去るその背中。


その歩き方ひとつとってもら、なんか……ずるいよな。


俺はツンツンしながら歩くツン子の背中を見ながら、諦めるように目を細めた。


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