サキュバス × オッサン②

「ねぇ……まだ、ちゅーしてたいの。もっと、もっと……いっぱい、ちゅーしたい……♡」


 耳元で囁く声が甘すぎて、背筋がぞわぞわした。


 濡れた服がぴったりと張りつき、その柔らかな身体を押し当てたまま、サキュバスは俺の唇にしゃぶりつくように口づけた。


「ん、んちゅ……ちゅ、ぅ……んん……♡」


 舌が、ゆっくり絡みついてくる。

 焦らすように、這うように、口の中をねっとりと味わうように……ちゅ、ちゅっ、ちゅぷ……ねっとりと濡れた音が、狭い玄関に反響する。



「はぁ……オジサンのキス、気持ちいい……トロトロになる……」


 吐息まじりに囁きながら、また唇を塞いでくる。


 腕を首に回されて、離してくれない。

 太ももを絡ませ、胸を押しつけ、腰をくねらせながら、彼女は甘えた声で囁く。



「まだ、だめ……もっと、ちゅーしたいの……♡ 唇がふやけるまで、キスしたいの……♡♡」



 ――もう、わけがわからない。


 玄関の冷たい壁に背中を預け、ふにゃふにゃに蕩けた体で、俺はただただ、彼女のキスに溺れていた。


「ちゅ……れろ、んっ、ふ……好き、だいすき、ちゅーだいすき……オジサンの口、だいすき……♡」



 何度目かわからない口づけ。

 唇はもう熱を持ちすぎて、ひりひりしてるのに、まだ、舌が這う。


 唇の隙間をぬるぬると舐められ、上唇と下唇の間をちゅっ、ちゅっ、と吸われて、ちゅぷっ、んちゅっ、ぴちゃぴちゃと、艶めかしい音だけが響く。


「はぁ……♡ もう、とろけちゃう……唇、ふやふやになっちゃったね……♡」



 にこ、と笑ったサキュバスの唇も、赤く、艶やかに腫れていた。


 それでも、まだ足りないと言わんばかりに、彼女はまた俺にキスを落とす。


「ねぇ……朝まで、キスだけでいい?♡」


「俺の体力が持てば、な……」


 

 ──冴えないオッサンの人生に、キスだけで全部奪い尽くすサキュバスがやってきた。

 それはもう、極上の……地獄だった。


「ふふ……ほら、また……」


 とろけた瞳で覗き込むサキュバスが、俺の唇に、ちゅ、と甘い音を落とす。

 小さなキス。それだけなのに体の奥がビクッと震えた。


「オジサン、息……荒くなってる。かわいいね♡」


 玄関で押し倒されたまま、何十回もキスだけ。

 服はまだ、ちゃんと着ている。

 けれど、身体はもう火照って限界が近かった。


「な、なんで……こんな、キスだけなのに……っ」


「だって、アタシ……キス、上手だから♡」


 にゅるん……再び唇が押しつけられ、舌がゆっくりと這ってくる。

 上顎をくすぐるように、ねっとりと……ちゅぷ、れろ、んちゅ……音が生々しく響く。


「や、やば……っ、舌……そ、こ、ん……ふっ」


 ぴちゃ、ちゅ、ぬちゅ……


 唾液が糸を引くたび、下半身がじんじんと疼いて、ズボンの中はもう、熱と脈動が止まらない。


「ねぇ……下、こんなに硬くなってるのに……アタシ、キスしかしてないのに……♡」


 悪戯っぽく笑って、サキュバスが耳元に唇を寄せる。


「キスだけで、イキそうなんだ……♡オジサン、やらしぃ♡」


「っ、ち、が……く……ッ」


 羞恥と興奮が混ざって、頭が真っ白になる。


「もう、限界……?」


「う……ッ……」


「じゃあ……止めてあげない♡」


 ちゅ、ちゅっ、ちゅぷ……舌が、また舌を求める。息も、声も、震えが止まらない。


 全身の力が抜けて、腰が浮いてしまう。

 キスだけで、ここまで追い詰められるなんて……。



「オジサン……イっちゃう?♡ キスだけで……♡」



 唇がふやけて、舌が痺れて、理性がもはや溶けてしまったころ――彼女は、ふふっ、と満足そうに唇を舐めて笑った。



「……じゃあ、今度は……本番、する?」


 その瞬間、俺の中で何かがプツンと切れた。


 


 ──そしてその夜、

 キスだけで絶頂寸前まで追い詰められたオッサンは、

“人間の限界”を、何度も更新させられることになる。

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