企みのアフタヌーンティー

📘 三題噺のお題(第4弾)

冷めた紅茶

片方だけのイヤリング

「さようなら」の言い方


補足ヒント(ご参考まで):

冷めた紅茶:時の流れ、言いそびれた言葉、感情の冷却などの象徴に。

片方だけのイヤリング:失われたもの、片思い、別れの兆し、など。

「さようなら」の言い方:言葉にならない別れ、無言の別れ、手紙での別れなど、“言い方”に焦点を当てると一気に深みが出ます。


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【本文】

 約束の時間にだいぶ遅れて、彼がやってきた。

「遅い」

 私は簡潔な文句を言った。

「悪い、悪い。仕事の電話が長引いてさ」

 仕事と言えば、全部許されるとでも思っているのだろうか? あるいは、私が騙されるとでも? 電話の相手はあの女だろう。


 今日はいつもとはだいぶ印象の違う服を着ているのに、それに対する言及は無い。

 アクセサリーもずいぶん違うのに、それにも何も言わない。あなたがプレゼントしてくれた、私の大切だったイヤリングにも……。


 ヘラヘラ笑いながら、休みなくしゃべっている。前は、私を退屈させない話術にときめいていた。

 今は右から左に流れていく雑音。紅茶の味のほうが重要。

 私はポットの中の紅茶をカップに注いだ。


 彼のスマホから振動音が聞こえた。

「悪い、仕事だ」

 そう言うと、席を立って風除室へ移動して電話に出た。

 こちらから姿が丸見えだということに、頭が回らないのだろうか? そんな顔で話をする仕事相手なんていない。


 しばらくその顔を見ていた。

 紅茶がすっかり冷めてしまった。

 私は片側のイヤリングを外すと、店員に見えないように紅茶のカップに入れた。それを彼の席の前に置く。ここなら目に入るだろう。


 私は席を立つと、バッグを持って出口に向かう。

 風除室の彼が慌てている。会話が聞こえるのを恐れたのだろうか?


「さようなら」

 私は快活な声と笑顔で言うと、振り向くことなく駅へと向かった。


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【感想】

 お題をストーリーに活かしつつ、短くまとめられたのは良かったです。

 このストーリーは、昔聞いた曲の影響を強く受けています。

 シンガーソングライターで、平松愛理さんという方がいます。代表曲は、『部屋とYシャツと私』。彼女の曲の中に、この物語と同じようなものがあったと記憶していました。


 ずいぶん昔に聞いた曲なので、改めてネットで調べてみました。

 平松さんの曲名は『反逆のafternoon tea』でほぼパクリ。と言うか、歌詞の中に「企みのafternoon tea」という言葉が出てくるのでパクリ。

 ただ、ヒロインの性格、感情、男性との関係性はずいぶん違うので、その点は安心しました。

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