三つのお題で物語はどこまで行ける?

冴月練

二年参りの約束

📘 三題噺のお題(第1弾)

壊れた懐中時計

忘れられた約束

地下鉄のホーム


解説(あえてヒント風に):

「壊れた懐中時計」は時間や記憶の象徴にも使えます。

「忘れられた約束」は人間関係の起点にも、物語の謎にもなります。

「地下鉄のホーム」は、日常と非日常の境界に置くと面白くなりそうです。


――――――――――――――――――


【本文】

 大晦日の夜、地下鉄のホームで電車を待っていた。二年参りに合わせ、今夜は終電が無い。それがオレにはありがたかった。

 彼女のことを思い出す。去年の今頃は彼女と電車に揺られ、二年参りに向かっていた。彼女は楽しそうに笑っていた。少しハイになっていたように思う。


 それから二週間後、大喧嘩した。

 いつもは明るく優しい性格なのに、喧嘩になると凶暴化する。手につく物を見境なく投げつけてくる。その中に、オレの懐中時計があった。祖父の遺品で大切にしていた。それは彼女も知っていた。

 懐中時計はオレに当たり、床に落ちた。壊れていた。


 オレが懐中時計を拾うのを、彼女はただ見ていた。呼吸は荒かったが、物を投げつけるのは止めた。

 彼女は部屋を飛び出した。それっきり、連絡は取れなくなった。


 そういえば去年彼女は、「来年もまた来ようね」と言って笑っていた。

 彼女の顔はおぼろげになり、声はもう思い出せない。


 地下鉄が去年彼女と二年参りをした駅に停車した。

 ホームを見ると、女性が座っていた。彼女だ。

 オレのことを見ている。表情は今にも泣きそうだ。

 オレは地下鉄を降り、彼女のもとへと歩いた。


 彼女は無言でオレのコートを掴み、声を殺して泣きだした。

 オレは彼女の横に座ると、彼女の肩を抱いた。

「ごめんなさい」

 彼女はそれだけ言うと、オレに抱きついた。


 彼女が泣き止んだら、今年も一緒に二年詣りに行こう。オレは思った。


――――――――――――――――――


【感想】

初挑戦としてはまあまあ。

主人公の「オレ」の設定をもう少し考えたほうが良かったと思う。

大晦日に何をしていたのかとか……。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る