第18話 私は妻じゃなくて、“お母さん”だった。──10年間、成長ゼロの夫と暮らして

イヤイヤ期、大人になっても終わらない人

子育てをしていると、ふと思うことがある。


──あの人、たぶんアダルトチルドレンだったんだな、と。


イヤイヤ期、反抗期、こじらせ期。そのすべてを“大人になっても持ち越し”していた人だった。


毎日、赤ちゃんの世話をし、仕事もして、へとへとになって玄関に立つ私。


それでも「おかえり」と明るく言えば、返ってくるのは、


「お前の声、ムカつく」「その喋り方、気に入らない」


……開口一番、それ?


赤ちゃんを抱いて、別の部屋に逃げた。家の中で、だけど。


反抗期、終わらない説

反抗期って普通、小学生くらいで一回来て、中高生で第二ラウンド、みたいなものでしょ。


でもモラ夫は、ずっとイヤイヤ期だった。


しかも私のことを、どうやら“お母さん”だと思ってた節がある。


機嫌がいいと、赤ちゃん言葉で甘えてきて、私が引きつった顔をすると、


「ほんとは俺のこと可愛いって思ってんだろ!」と逆ギレ。


……いやいや、ただの恐怖です。顔に出てただけです。


私は、母じゃない

私は、あなたの母親じゃないし、保育士でもないし、精神科医でもない。


でも当時は、「愛情を注げばいつか落ち着くかも」と思っていた。


笑顔で接し、なだめて、支え続けた。まるで育て直し。


でも彼は、甘えれば甘えるほど図に乗った。成長は、ゼロ。


思えば私は10年間ずっと「お母さん役」を演じていたのかもしれない。


でもそれは、私にとって“夫”ではなかったし、娘にとっても“父親”ではなかった。


モラ夫の内側にあったもの

彼が育った家庭は、厳格で清潔で、いわば“理想的な家庭”だった。元義母は立派な人だった。今でも頭が上がらない。


けれど、どれだけ家庭が整っていても、「心の土壌」がうまく育たないこともある。


愛情不足だったのか、感情を押し殺して育ったのか、あるいは──もともと何かが、欠けていたのかもしれない。


または、先天的な欠落。そういう可能性もあると思う。


人は誰しも、育ちだけじゃ測れない。


でも、それで人を壊していい理由にはならない

──そう思うと、少し気の毒な人だったのかもしれない。


けれど、私や娘を壊していい理由には、絶対にならない。


それは、どんな生い立ちを持っていようと関係ない。


「愛してあげれば伝わる」というのは、子育ての話であって、大人には通じないこともある。


私は、母親じゃない。そして彼も、父親にはなれなかった。


それだけの話。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る