第26話
⸻
第26話「守るって決めたから」
⸻
「……元マネージャー?」
遥の声は、思った以上に低く響いた。
すみれは視線を外し、屋上のフェンス越しに夜景を見つめたまま続けた。
「高校のとき、まだ事務所に入ったばかりで……右も左もわからなくて。唯一頼れる大人が、その人だった」
「なのに、なんで――」
「ある日から、変わったの。急に、仕事以外でも連絡してきたり、会うたびに……写真を撮るようになった」
すみれの声は震えていた。
その震えが寒さからではないことを、遥はすぐにわかった。
「やめてほしいって言った?」
「言ったよ。でも、『これは君を守るためだ』って……」
「守る? どういう意味だよ」
「わからない。ただ、撮られてるときの目が……怖かった」
遥は黙り込んだ。
怒りとも焦りともつかない感情が胸を満たしていく。
「もう二度と、あんなのに近づけない」
気づけば、そう口にしていた。
すみれが振り返る。
「……そんなの、簡単に言わないで」
「簡単になんか言ってない」
遥は一歩近づき、すみれとの距離を縮めた。
「俺は……あのときからずっと、お前を守りたいって思ってた」
すみれの瞳が揺れた。
屋上のライトに照らされて、その瞳の奥まで見えるほど近い距離。
「だから、もう黙って抱え込むな」
「……うん」
その瞬間、屋上の非常扉の向こうから――また、足音がした。
⸻
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます