第34話


第34話「修学旅行でドキドキの夜行バス」


──期末テストも終わり、次は待ちに待った修学旅行──


朝、集合場所に揃ったメンバーの中で、俺と夏希は隣同士の席を確保していた。手には旅行ガイドと、先日ふたりで作った「夜行バスお菓子リスト」が握られている。


「はるくん、夜行バスのお菓子チェックしよう?」

「おう、ポッキーとチョコは忘れずにね」


夏希は背伸びをして、バッグからキャンディポーチを取り出す。その中には、ふたりの名前を書いた手作りお菓子タグがついていた。



──夜行バス車内──


ランプがやわらかく照らす薄暗い中、俺たちは小さなテーブルでお菓子交換会を始める。


「まずはこれ、はるくんへのお菓子だよ」

半分ずつに割られたクッキーには「友情」と書かれたタグ。


「ありがとう……友情お菓子か」

俺は嬉しそうに頷くと、続けて夏希からビターチョコを受け取った。


「次はこれ、ちょっとビターで大人味」

「お、おとな味……?」


夏希の照れ笑いに、俺はすぐに意味を察して顔を赤らめた。



深夜、車窓に流れる街灯を見ながら、俺はぽつりとつぶやく。

「夜行バスって、なんか特別だな」


夏希は隣でうつむき、小さく頷いた。

「普段言えないこと、言えそうな気がする……」


俺は勇気を出して彼女の手をそっと握る。


「……夏希」

「ん?」

「楽しいだけじゃなくて、もっと君に感謝したいことがあるんだ」


夏希は驚いたように顔を上げ、俺を見つめる。


「いつも、俺を笑顔にしてくれてありがとう」



一瞬の沈黙のあと、夏希の頬がほんのり紅く染まった。

「はるくん……」


しかしそのとき、車内アナウンスが響き、消灯時間が近いことを告げる。


「もう寝なきゃ……」


俺と夏希は照れくさくて何も言えず、肩を寄せ合ったまま目を閉じる。


──夜行バスの揺れに包まれながら、ふたりはもっと深い絆を育んでいく。


──つづく。

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