第15話
第15話「芸能人、スクリーンの華やぎ」
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大学文化祭の上映会当日。映像棟のホールには、普段の学生とは一線を画す特別な装飾が施されていた。赤いカーテン、大理石風の舞台床、そして舞台横には「Guest Appearance 朝比奈すみれ」の立て看板。
「すみれ先輩、本番5分前です!」
制作チームのリーダーが駆け寄ると、すーちゃんは細いウエストをすっと伸ばし、プロ顔負けの仕草で笑顔を向けた。
(さすが元国民的ヒロイン――立ち振る舞いひとつで空気を華やかにする)
そんな風に思わず息を呑む一ノ瀬。
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◆華やぎの瞬間
暗闇の中、スポットライトがスクリーン前の壇上にすーちゃんを浮かび上がらせる。
「みなさん、本日はご来場ありがとうございます。これから私たちの短編映像『隠し場所の世界』をお届けします――」
マイクに添えた手の動き、声のトーン、間の取り方。すべてが洗練されていて、会場の生徒たちから思わず拍手が起こる。
(ただの学生じゃない、スターのオーラが放たれている)
遥も心底誇らしげに頷いた。
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◆上映と歓声
映像が始まると、ホールは静寂に包まれた。だがラストのエンディングメッセージが映し出される瞬間、会場は大きな歓声と拍手に包まれた。
上映後、すーちゃんは客席に駆け降り、観客の間を回りながら直接「ありがとうございます!」と頭を下げる。
「先輩! 本当に感動しました!」
「お疲れさまです、生で観られて幸せです!」
後輩たちは携帯を向けながら声援を送り、先生方も胸を熱くして拍手している。
(これが“ファンサービス”か――ファンの心を掴むのが本当に上手い)
一ノ瀬は息を飲んだ。
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◆メディア取材スポット
上映会後、すーちゃんは校内に設置されたインタビューコーナーで、報道局の学生リポーターから質問を受ける。
「先輩、大学での挑戦を今後どこに活かしたいですか?」
すーちゃんはカメラを見つめ、一瞬間を置いて答えた。
「演技だけでなく、映像の裏側にある人の想いを伝えられるクリエイターになりたいです。はると二人で作った作品は、これからも私の原点です」
的確な言葉選びと、視線の強さ。まさにプロフェッショナルだ。
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◆二重生活のハイライト
その夜、二人は大学の屋上で星を見上げながら語り合った。
「すーちゃん、さっきのファンサービス、本当にキラキラしてたよ」
「芸能人としての“型”があるから、自然と体が動いちゃうの。はるがそばにいるから安心してできたけどね」
一ノ瀬は微笑んでお守りをそっと差し出す。
「君の“スター”と“素”の両方を、俺はずっと見ていたい」
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◆新たな招待状
翌朝、すーちゃんのロッカーにひとつの封筒が届いていた。封筒には上品な筆記体で「Cinema Lumière 映画祭運営事務局」と記されている。
「…映画祭の正式招待状?」
夢のような文字列に二人は見つめ合った。大学文化祭に続き、今度は本格的な映画祭舞台だ。
「うん。本格的な商業映画祭で、作品を上映していただけるみたい」
すーちゃんの瞳が大きく輝いた。
「はる…また一緒に、ステージに立とう?」
「もちろんだ。君の輝きは、まだまだこれからだよ」
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