第2話
「ところで、どうやって入ってきたの?」
「それは地下に大きな施設があるの、そこで働いてたんだけど、アリさんが読んでくれたの」
アリさんとはアークエンジェルのババアだ。
「へぇ、地下にそんな施設があるんだ?」
そんなこと初めて聞いたぞ?
「精子バンクや、食物を運搬する施設なんかもそこにあるの!そこで働いてれば精子を優先的にもらえるのよ!」
「そう、倍率高いのよね」
2人とも同じ人間なのにそんなことしてまで精子が必要なのか。
「男が生まれれば一生安泰だけど、産まれる確率が低いのよね」
「マザーがその辺をなんとかしてくれればいいけど」
「あ。えーと、マザーってなに?」
「えーと、アークエンジェルの母体みたいなものかな?見たことはないけど」
「男が生まれたのがもう10年前だっけ?」
「そうそう、それからは生まれたのは聞いてないからね」
そう、10年前に生まれた男の子は『王』と呼ばれ、今はどこにいるのかわからない。
今1番下なのは、俺やマサムネだ。
俺やマサムネは腫れ物扱いされている。
学校で色々と学んだが、作られた俺らの脳はすぐに覚えるので、他の生徒を差し置いて一年で卒業した。
やはりそのマザーってのが男ができる確率を弄ってるとしか考えられず、マサムネは衝動的になり、俺はこうやって女が良くなってしまった。
まぁ、……勃たなかったんだが。
「でも、まだチャンスはあるよね!」
「そうね!また会いに来るから」
「おう!その時はよろしくな!」
と言って別れたのが昨日のことだ。
「なんだよあれ!ふざけるなよ!」
「しょうがない、私でさえ危ない橋を渡ったんだ。あの子達もこうなる事はわかってたと思うよ」
「あ、あぁあーー」
街の外、フェンスの向こう側、荒野になっている街の外には見える様に十字架に磔にされた湊ちゃんと萌ちゃんが死んでいた。
烏に啄まれ、首はちぎれそうになっている。
俺が膝をついてフェンスを掴んでいる横に立つ影、
「なーに?あれ?」
「……マサムネか、俺があった初めての女の子だよ」
「どーやって?女がこの街に入って来れたの?」
抑揚を抑えてしゃべるマサムネも怒っている様だ。
「あ?それを知ってどうするつもりだ?」
「そりゃ。外に出るのさ」
「辞めとけ、お前のあの姿を見たら俺はおかしくなっちまう」
あそこにマサムネがいるのを想像するとゾッとする。
「……うーん。分かった。そんかし、何かやる時は一緒にね。俺もあそこにお前がいたら耐えられないからな?……まぁ、何かあったら手を貸すよーん!」
「その時はよろしくな」
マサムネはまたハンマーを持って街に戻って行く。
これはマザーがやったんだろ、絶対に許さねぇ。
考えられるのは俺たち男を少なくして女を多くする。
精子を代わりに女を働かせ、地球の頂点にアンドロイドが立つ。
そんなところだろ。
あんな事を湊ちゃんと萌ちゃんにして、それで俺たちが折れるとでも思ったのか?
ふざけるなよ、こんな世界ぶち壊してやる。
アリの定食屋に入ると、
「ババア!地下に……っておい!何してんだ!」
黒いアンドロイド、アークエンジェルが店の中でアリを殺そうとしていた。
『チッ』
と言って逃げて行く黒いアンドロイド。
「おい、ババア!大丈夫か?」
「まぁ、なんとか核は無事だからね。あとババアって言うな。クソガキ」
中華鍋で身を守ってたらしい。
ここは危ないな。
俺はアリを連れて自分の家に行く。
自動修復されたババアは元気になって、
「へぇ、いいところに住んでるんだね!ヒャッホー」
ウゼェがあそこに住んでるよりはマシだろ。
「大人しくしてろよババア」
「は!ここが安全だとは思わないけどね?」
と家のアークエンジェルを見る。
「おい、このババアに何かあったら俺が死ぬと思えよ?」
「……はい」
とアークエンジェルは頷く。
俺はババアの家に入っていき地下への入り口を探す。
「ん?なんで開いてる?」
何かでこじ開けた様な跡がある。
「あのバカ!行きやがったな!」
多分、マサムネが入ったのだろう!
地下へは梯子がかけられていて、降りて行く。
地下空間は広くて部屋がいくつもあり明るい。
「喋っちゃやーよ?」
「ムグッ、マサムネ」
「ピンポーン、ほら静かにねーん」
マサムネは指を刺すと、アークエンジェルが運ばれている?
壊れたアークエンジェルはここで回収されていた様だ。
と言うことはまだ地下への通路があるってことか。
「流石にここで無茶はできないから、上に行こうか」
「そうだな、地図が手に入ればいいんだがな」
とマサムネと2人で上に登って行く。
外に出て2人の亡骸を見ながら、
「俺は絶対こんな世界ぶち壊してやる」
「いーね!スズトもこっちに来たねー」
「このままだと」
「俺らは女王アリになる」
「だな」
しかも管理するのはアークエンジェルやマザーと言う存在だ。
そんなの誰も望んでないからな。
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