第3話 父と息子

 次の日のこと。


「い゙やーーー!!!!なによこれーーー!!!!」


慶三は剛の叫び声で起きた。


「本当に恐竜じゃない?!どういうこと?!」


剛は口元を手で抑え、驚愕の表情で畳にへたり込んでいた。


「おお、剛帰ったんか……」 


慶三は、ゆっくり起き上がりながらそう言うと、大きな欠伸をする。


「あー眠いわ……赤ちゃん達はどないや?」


寝ぼけ眼な父親を見て、少し落ち着いた剛は、固唾を飲みながら、ゆっくりと恐竜達に近づく。


「あ、赤ちゃんって……水飲んどるけど……これどうしたん?」

「一ヶ月前くらいか?空から落ちてきた卵を世話して、昨日孵したんや、どうや?可愛いやろ?」

「いや……可愛いけど……そういうことやないやろ」


慶三はピタピタと恐竜たちの頭を撫でて、笑顔を見せる。それを見た剛も、恐る恐る触れてみると、恐竜たちは思いのほか人懐っこく、手に頭を擦り付けてきた。


「お、もう昼ごはんの時間やな、冷凍のチャーハンくらいしかないんやが、それでええか?」

「おぅ……」


剛は、断ろうと思ったが、父の明るい顔を見て何故か受け入れてしまった。

 

 父がいる台所の音を聞きながら、産まれたての恐竜たちを眺めると、なんだか悪くないような気分になっていく。


剛は小さな溜息をついたあと、ゆっくり撫でながら、恐竜達に話しかけた。


「…………ええ、おとんやろ?お前らも良かったな……」


その言葉は、ゲイである事をカミングアウトした時に、あっけらかんと受け入れてくれた時の父を思い出して、言った言葉でもあった。


キッチンから、その父の声がした。

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