G07「ナンバープレートが赤い」R02

待ちに待ったその時が来たっす!

ちとちゃんは、本日6組目のお客様。

少しドキドキするけど、いつも通りやるっす!


ちとちゃんは、デニムのフレアワンピに黒のチャンキーヒールサンダル、今日も清楚。

ちょっとそわそわしながら入ってくるのも、ぽくてポイント高いっす!


「あのー、こんにちわ……。」


「いらっしゃいませ。お足元の悪い中、ご来店いただきありがとうございます。本日は1名様でいらっしゃいますね?」


お辞儀お辞儀。


「ま、まよちゃん?」


「はい! 真宵ですよ、お客様。席にご案内いたします。」


「え? え⁉」


「傘はそちらの傘立てをご利用くださいませ。」


「あ、はい、ありがとうございます。」


ちょうどお客さんがはけて、一番奥の窓際が開いてるっす。


「こちらの窓際のお席でよろしいですか?」


「は、はい、よろしいです!」


椅子を引いてっと。


「どうぞお掛けくださいませ。」


はい、ニッコリっす。


「し、失礼します。」


エプロンを整えて少ししゃがんで……。


「お手荷物をお入れいただくカゴをご用意しております。よろしければ、どうぞお使いくださいませ。」


「か、かわいい……」


ちとちゃんってば下向いたまま、指先でメニューの端をいじってるっす。

予想以上にイイ反応するっすね!


「おほめいただきありがとうございます。こちらがメニューでございます。」


「ご注文がお決まりになりましたら、お手数ですがお呼びくださいませ。先に水をお持ちいたしますが、ごゆっくりお選びください。では、失礼いたします。」


ちとちゃんからお呼びの声がかかるまで、真宵はカウンターで待つっす。


でも、ちとちゃんはメニューで顔を隠しながら、こっちをチラチラ見てるっす。

何をオーダーするか迷ってるかな?

小さく手を挙げて「すいません」って呟いたっす。


真宵、プロだから全然問題ないっすよ。

ちとちゃんの席まで行って、笑顔で会釈と。


「お待たせいたしました。お料理で何かお迷いでしょうか?」


「はい、ちょっと……」


何とか声を出してる感じっす。

たまに、こういうお客さんもいるっすね。


「当店はイタリアンとフレンチの両方をご用意しておりますが、どちらかお好みはございますか?」


「イタリアン、だと思います……。」


「承知しました。本日は軽めのお料理と、しっかりお腹を満たすお料理のどちらをお考えでしょうか?」


「か、軽めで。」


「しっかりお召し上がりいただけるコース料理もございますが、ご紹介させていただきましょうか?」


「そんなには……。」


「しっかりお召し上がりいただけるコース料理がオススメですが、ご紹介させていただきましょうか?」


ちとちゃんは一瞬息を吸い込んで、小さくうなずいて言ったっす。


「……しっかりでお願いします。」


声はか細いけど、目はちゃんとこっちを見てたっす。

プロなので、ホンネを引き出すっすよ!


「ありがとうございます。それでは本日は、前菜からデザートまで楽しんでいただける、しっかりめのフルコースをご案内させていただきます。」


「コースは全6品構成となっておりまして、以下のような内容でございます。」


えっと、まず前菜っすね。


「まずは生ハムとモッツァレラ、それに旬のフルーツを添えた前菜です。色も香りも楽しめますよ。」


で、スープっす。ポルチーニっすかね。


「スープはトマトバジルかポルチーニ茸のコンソメから。おすすめはポルチーニです。」


「えっと、ポ、ポルチーニ?でお願いします。」


ちとちゃんは少し首を傾げたけど、目が期待で輝いてるっす。


「承知いたしました。」


パスタっと。悩みそうっすね。トリュフがオススメっすけど。


「パスタは、『魚介の旨味を閉じ込めたペスカトーレ・ロッソ』、または『トリュフ香るカルボナーラ・ビアンカ』よりお選びいただけます。いかがされますか?」


「トリュフ好きです!」


「承知いたしました。どちらも美味しいですが、トリュフはよりご満足いただけると思います。」


「そうですよね! 美味しいと思います。」


「はい、もちろんです。」


笑顔をサービスするっす。

で、メイン。魚と肉で完璧な布陣っすよ。


「メインは2品ご用意しておりまして、1品目は『真鯛の香草パン粉焼き アクアパッツァ仕立て』、2品目は『国産牛フィレ肉のタリアータ バルサミコソース』でございます。」


ちとちゃん、デザートは迷っちゃうっすね。


「デザートは自家製ティラミス、または季節のフルーツタルトからお選びいただけますが、本日は両方お楽しみいただきます。」


「え、いいんですか⁉」


「もちろんでございます、お客様!」


ここで、さらにニコッっす。

はーい、ドリンク。たぶんカプチーノっす。


「最後に、エスプレッソ、カプチーノ、または紅茶をお選びいただけます。」


「カプチーノをお願いします。」


「承知いたしました。」


「それではご注文を確認いたします。前菜、『ポルチーニ茸のコンソメ仕立て』、『トリュフ香るカルボナーラ・ビアンカ』、『国産牛フィレ肉のタリアータ バルサミコソース』、デザートに自家製ティラミスと季節のフルートタルト、最後にお飲み物にカプチーノをお出しします。以上でよろしいでしょうか?」


「は、はい!」


「かしこまりました。それでは、お料理を順にご用意させていただきます。ごゆっくりお楽しみくださいませ。」


繰り返しになるんすけど、真宵、ホールの天才っす。

本当はもう1つ聞くんだけど、飛ばしたっす。

『以上の内容で、お一人様いくらとなっております。いかがなさいますか?』

ちとちゃん、気付いてないっす。

今も背筋をピンとして座ってて、ちょっと緊張してるのがカウンター脇からでも分かるっす。


でも、パパが「真宵の友だちからは、お代はもらえないな」って笑ってたっす。


真宵も、尊すぎておごりたいぐらいっす。

このコースなら、絶対にちとちゃんは喜んでくれるっす!

じゃ、注文をキッチンに通すっすよ。


「1番テーブル、オーダーいただきました! イタリアンコースお1人様で、『ポルチーニ』、『トリュフ・カルボナーラ・ビアンカ』です!」

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