CHAPTER META:(null)

End If:「既定路線(Default)」

トーカはレイヤの切り札である四人の英雄を前に、なす術もなかった。

ARBITERの磁場に捕らえられ、DARK KNIGHTの一刀に引き裂かれる。


「……トーカちゃんなら、こんなどうしようもないボクでも、受け入れてくれると思ったんだけどな」

敗れた少女を見下ろし、レイヤはぽつりとつぶやいた。


ARBITERがトーカの亡骸を回収し、RAIN MAKERの艦内へと戻る。


「みんな、ご苦労さま」

前衛の二体を労うように言葉をかける。


「さてと……」

作業台の前に立ち、エプロンをつけると、ゴスロリ服の袖を捲った。


光輪が輝き、スキル《死体修復エンバーミング》が発動する。

壊れた肉体は、まるで時間を巻き戻すように再生していく。


だが戻るのは形だけ。

血の気を失った肌は蝋人形めいて、瞳はどこまでも虚ろだった。

レイヤは化粧道具を取り出し、丁寧に頬へ色を差す。

唇に朱を塗り、まぶたに影を落とす。


「表情がなくても……なるべく、生きていた時のイメージを再現したいからね」

普段のおどけた顔は消え、そこにあるのは真剣な眼差しだった。


修復が終わると、トーカの背から霊子変換炉を外し、RAIN MAKERの動力炉へと接続する。

艦全体に低い唸りが走り、途切れることのない電力供給が始まった。


「今のトーカちゃんにはもう必要ないからね。

……こっちで有効活用させてもらうよ」


死体操作ネクロマンシーのスキルを念じると、トーカの身体がびくりと反応し、ぎこちなく起き上がる。

レイヤはその肩を抱き寄せ、嬉しそうに頬を寄せた。


「これで、ずーっと一緒だよ。」


嬉しそうにくるくると回ると、玉座に腰を下ろす。


「音楽かけてよ。いつものやつ」


館内にドヴォルザーク《新世界より》第四楽章が鳴り響く。


――深紅のカーペットが玉座へと延びる。

その先に腰掛けるのは、ゴスロリ服の小柄な少女。


主人公トーカも、そのライバルドミナも終わっちゃったね。

残すはラスボス攻略かな?」


かつて英雄と呼ばれた者たちを“駒”として従え、少女はゆるやかに微笑む。


「さあ……ゲームを始めよう」

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