ヤンデレ短編集

ミナトノソラ

⑴わからず屋な男に私以外ありえないとわからせる幼馴染の話

 私には幼馴染の男の子、俵悠斗がいる。彼とは小さい頃、幼稚園の頃からの幼馴染で高校生になるまで常にずっと一緒に過ごしてきた。


 そのおかげでお互いのことを1番に理解していると思う。

 少なくとも私は悠斗の事を完璧に理解していると言って間違いないわ。


 でも誰でもいいというわけじゃない。たとえ小さい頃から一緒にいても、興味が無い相手だったら理解しようとは思わないでしょ?


 そう、私は悠斗のことが好き。それはもう大好き。愛してるという言葉でも表現しきれないほど愛している。


 だって当たり前じゃない。小さい頃から一緒にいて、困っている時にはすぐに助けてくれて…毎日のようにかっこいい雄の姿を見せられれば嫌でも好きになる。


「はぁ、好き…」


 問題がひとつある。悠斗はとてつもない鈍感な男の子なのだ。

 いくら私が彼に好き好きアピールをしても彼は気づかない。


 多分彼以外は私が彼のことを好き、ということを知っているんじゃないかしら。


 自分で言うのははばかれるけれど私はモテた。小学生の頃くらいから今まで数え切れないほどの男の子に告白されてきた。


 もちろん全てを断ったけど、ある時は本当は付き合っていないけど誰かと付き合ったと悠斗に嘘をついたこともあるけど、彼は何も気にしていないように祝福してくれた。


 意味がわからなかった。幼馴染の常に隣にいた女の子に突然彼氏が出来たら普通祝福する?


 別に祝福、という行動自体は彼の優しさの証明だからいいんだけど少しくらい嫉妬してくれても良くない?


 もし逆の立場で悠斗に彼氏が出来た、なんて報告されてしまった時には脳破壊間違いなしだ。

 脳破壊を終えたら次はその女を殺しに行くでしょうね。

 だって私の悠斗を奪ったのだから仕方ないわ。


「今日こそ…」


 私は最近悠斗に毎日告白をしている。もう高校三年生だよ?


 高校生活最後の1年なのにまだ付き合ってないとかおかしいでしょ。

 そもそも私の予定では小学生で付き合って高校卒業したらすぐに入籍するつもりだったのに歯車が噛み合わなすぎよ。


 いよいよ高三になってしまったじゃない。流石に私から行動しないと…時間はあっという間に過ぎてしまうから。


 ちなみに結果は全てはぐらかされている。拒否されているわけでも受け入れられている訳でもない。


 まあ拒否なんてされても意味ないけど。何度だって悠斗が受け入れるまで告白するけれど。


 悠斗が私以外の女と結ばれるなんてありえないから。もしそんなことがあれば無理やりにでも寝取る。

 だって仕方ないじゃん。私を裏切る悠斗が悪いじゃんそれは。





 登校時間になったので私は普段通り家を出る。

 あ、普段通りってのはいつもの決まった時間っていう意味じゃなくて悠斗の位置情報を見て、彼が家を出た瞬間に出るという意味ね。


 私たちの家は歩いて数分のところにあるから少し早歩きをしたらすぐに追いつけるの。


 あ、悠斗の背中が見えてきた。

 今日も凛々しくてかっこいいな!


「おはよ悠斗!」


「ん、あぁおはよう莉子」


「おはよう、今日も元気な悠斗の莉子だよ!」


 私の挨拶は決まってこれ。朝から周りにも悠斗にも私はあなたの物だとアピールする。


 彼を好きだと自覚した日から毎日欠かさず行っている一日のルーティンのひとつ。


「今日の朝ごはんは何食べたの?」


 まずはなんでもない日常の会話をする。彼の朝食は曜日ごとに決まっているから全て知っているのだけどそんなのはどうでもいい。


「えっと、スクランブルエッグとご飯と味噌汁かな」


「そうなんだ!悠斗のお母さまの作るご飯は美味しいもんね!」


 悠斗のお母さま、つまり私の将来のお義母さんは料理がとてもお上手。そして生まれた時から悠斗を育ててくれている私の中で神様のような存在。


 もちろん彼の料理の好みも全て把握してくれているので週に一回ほど料理を習っている。

 あらゆる面において悠斗が私に溺れてくれるようにしないとだからね。


「ねぇ、悠斗」


「何?」


「好きだよ!」


 告白のタイミングは日毎に変えている。だって毎日同じタイミングでやったら面白みの欠片もないし、慣れられてしまったらダメでしょ?


「っ!!」


 ほら、それに私が好きだと告白したらこんなに顔を赤くして照れるんだよ?

 こんなの見せられたら可愛すぎて卒倒ものだよ。やばい、鼻血出ちゃうよ!


「で、返事は?」


 どうせ今日も曖昧にされちゃうんだろうけど…。


「ごめん莉子。それについて大事な話があるんだ」


「え…?!」


 大事な話ってもしかしてようやく付き合ってくれるの?ここまで頑張った甲斐があった…よ?


 悠斗は何やら悲しそうな表情を浮かべて私の肩を掴むとこう言った。


「俺、彼女が出来たんだ」


「は…???」






「は…???」


 いや、今悠斗なんて言ったの?

 私の気の所為じゃなければ彼女が出来た、って言ったような気がするのだけど。


 え、冗談でしょ?悠斗に彼女?


 私じゃない女が悠斗にできたって言うこと?悠斗の隣を私じゃないゴミが並んで歩くということ?


「だから明日から一緒に登校出来ないんだ。それと告白もやめて欲しい。嬉しいんだけど彼女が出来たからさ」


 彼女に誤解を産んじゃうから、と照れたように笑う悠斗。

 普段なら可愛くて仕方ないんだろうけど、今は無理。今すぐにその笑顔を剥いでやりたい。

 悠斗の笑顔を奪った女をこの手でどうにかしてやりたい。


 ………許せるわけないでしょ?


「へ、へぇ、ちなみに誰なの?」


「ごめん、それは言えないんだ。秘密にしておいて欲しいって言われてるから」


「ちっ」


「え?」


「ううん、ごめん。私ちょっと急がないとだから今日は先に行くね。また


 私は悠斗を置いて慌てて学校へと向かった。






「誰…誰…誰…だれだれだれだれだれだれだれだれだれだれだれだれだれだれだれだれだれだれだれだれだれだれだれだれだれだれだれだれだれだれ」


 悠斗に女の影なんて無かった。少なくともこの学校の女じゃない?

 いや、それか私の知らないところで繋がっていた?


 1体どうやって?分からない分からない。


「とりあえずどうにかしないと…」


 まさか危惧していたことが本当に起こるなんて思っていなかった。なんだかんだ悠斗は照れているだけでもうすぐ付き合えると思っていた。


「…やるしかない?」


 出来ればこの手は取りたくなかったけどあの様子じゃ正攻法で別れてくれるとは思えない。


 今まで悠斗に女の影が生えようとすれば未然に防げていたのにどうしてこんなことになったの?


 願わくば結ばれてお互いが求め合って初めてを迎えたかったけど仕方ないよね。

 先に裏切ったのは貴方の方なんだから。



 放課後、最後だから、と言って悠斗を騙して我が家へと連れてきていた。

 これも実は彼の家でやりたかったけれど、無理やりやるのであれば私の部屋の方が色々と都合がいいから。


「莉子の部屋もこれで最後だな」


「ううん」


「え、最後だろ?俺は彼女が出来たんだからもう他の女子と遊ぶことは出来ないし」


「最後じゃないよ?」


「ちょっ!」


 私は部屋の中心で立ち尽くしている悠斗を無理やりベッドの上に押し倒した。

 そして直ぐに上着を脱がす。


「何してるんだ莉子。ふざけるにも限度があるぞ」


「ふざけてない…」


「え?」


「ふざけてるのは悠斗の方でしょ!何勝手に女作ってんの?私の方がずっと昔から好きだったのになんでぽっと出のゴミに悠斗を奪われなければいけないの?」


「莉子…?」


 悠斗は私の頭を撫でようとしてきたけど、私はその手を振り払った。


「あなたは私のだから」


「莉子…やめるんだ」


「やめない。身も心も私のものにしてやる」


 それから私は我を忘れて悠斗を食した。





「はぁはぁはぁ…」


「気持ちよかったね悠斗♡」


 私の目の前には行き疲れて呼吸が追いつかない悠斗の姿。

 私に貪り食われて腰が動かない様子だ。もちろん私もガクガクして立てそうにない。


 だけどこのまま終わらない。彼のスマホを手に取って渡す。


「ね?」


「…」


「分かるでしょ?」


「…」


 彼は黙ってメールアプリを開くと彼女らしき女とのトーク画面を開いた。

そして少し考える素振りをした後、静かにゆっくりと文を打ち始める。


『ごめん、別れよう』


「うん、よく出来ました♡」

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ヤンデレ短編集 ミナトノソラ @kaerubo3452

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