おやくそく

ねくしあ@新作準備中

まもってよ

「ちっ、なんでこんなの見ないといけないんだ」


 そう言って、先日妹から渡されたDVDをプレーヤーの中に挿入する。

 俺は嫌々だというのに、それを嘲笑うかのようにすんなりとプレーヤーはディスクを受け入れた。せっかくの休みだというのに——そう思うと、苛立ちが湧いてきて仕方ない。


 少しして、メインメニューが出てきた。変な動物と気持ちの悪いUIがカラフル——悪く言えばサイケデリックに彩られている。子どもでも気味悪がりそうなレベルだ。大人の俺じゃ、その嫌悪感は何倍にも増幅されてしまう。


「はぁ……再生、っと」


 気分が沈み込むように、決定ボタンを押し込んだ。

 ピコン♪と軽快な音がなり、画面は暗転する。


 ——よいこのみんなへ。このアニメをみるときは、部屋へやあかるくしてはなれて見てね。


 そんな、テンプレ的な、「おやくそく」が黒背景に表示されていた。


「残念ながら俺は悪い大人だ。子どもじゃねぇよ」


 酒臭い真っ暗な部屋と、小さい机の上に置いたテレビ。俺の左手には安酒。まるで「よいこ」の対極だ。


「ははっ、我ながら何たる皮肉だ。ははっ、ふはははっ!」


 酒のせいか、面白くてしょうがない。


 そうしてひとしきり笑ったあと、急に熱が冷めてきた。その感覚がまた気持ち悪い。

 そう思っていた時、画面の文字が変化していることに気がついた。


 ——やくそく、やぶったね。また、お兄ちゃんはいけないことをした。


「——おいおい、なんだこりゃ。酒飲みすぎたかなぁ……それともイタズラか? あいつにこんなこと出来るわけねぇしなぁ」


 出来損ないの、年の離れた妹。だから適当に扱ってきた。俺はもう実家を出てるから、別にどうでもいいと思っていた。まさか、こんな風になるとは驚きだ。


「そういやあいつ、今いくつだっけ?」


 ——お兄ちゃんのうそつき。やくそくなんかまもってくれない。さい低。大きらい。


「ほぉ~怖い怖い。嫌ってくれて良かったわ。もう面倒事が起きずに済む——」


 ——だから、死҈̀̇͒͐́̓͋̈́̅̔͑͊̈͛͑̾͝ん̶͌̇̀͋͒̌̏͐͌̌̐̒̐̅̚͞で҉̉̈́̂̉̄̃̈͛͛͋͛͛͑̈̕̚。


「は?」


 画面がメインメニューに戻ると、テレビを押し広げ、カラフルな動物たちがテレビの中から出てきた。


 兎、熊、猫、犬。


 いずれも二足歩行するぬいぐるみのような形態。しかし、その目は明らかに虚ろで、俺をじっと見つめている。


『あそぶやくそくをやぶった』


 うさぎか、くまか、ねこか、いぬか——誰かがそう言って、俺を思い切り殴った。


「かはっ——!?」

『おもちゃを買うやくそくをやぶった』

「うぐっ……!」


 一発目で肺をやられ、二発目に腹をやられた。

 文句を叫びたいが、激痛がそれを阻む。


『ゆうえん地に連れて行くやくそくをやぶった』


 今度は背中。脊椎にヒビが入ったような音がした。ぬいぐるみ共を睨みつけたくても、その影響か思うように背を伸ばせない。


『ごはんを食べに行くやくそくをやぶった』


 ぐちゃり。ぐちゃ、ぐちゃぐちゃ。





















 ——よいこのみんなへ。やくそくはやぶっていないかな? よいこなら、ここでおしまい。わるいこなら、




お̶̲̘̎̓̐̈͗͢͞し̸̨̳̤̗̟҇̂̑お҈̧͔̩҇̒̀̏̒͛ͅき̸̧̟̙̿̒̾̕、

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