前世でモテなかった俺はハーレムが当たり前の世界に転生した。そして病んだエルフ美少女がついてくる。

猫野 ジム

第1話 二人だけの世界を作りましょう

「一度でいいから結婚したかった」


 これは俺が最期に思ったこと。30年の人生の中で結婚どころか彼女すらできることなく、俺は人生を終えてしまった。


 もちろん努力はしたつもりだ。だけど相手がいることだから、どうしようもないことだってあるわけで。


 人生が終わったのは、上司からの理不尽なストレスが原因というありふれた理由。ひたすら真面目に仕事をしていただけなのに。


 体の不調というものは、どれだけ気をつけていても突然襲ってくるものだ。

 目の前で俺が倒れても、きっと「ここで倒れるんじゃねえよ、面倒だな」とでも思ってるんだろうな。


 そして俺は異世界転生した。なぜ俺なのかというと女神様いわく、「よく頑張りましたね」と。それはきっと仕事に対してのことだろう。


 俺みたいな境遇の人って他にもいるかもしれない。そういう人達が少しでも報われるといいな。


 年齢は22歳からのスタート。どうやらそれが若返らせる限界ということで、女神様は申し訳なさそうにしていた。

 だけど8歳も若返れば十分だ。やっぱり20代と30代とでは全く違う。俺は女神様に丁重にお礼を言った。


 それに加えて女神様からチート能力を授かり、それをどう使うかは俺次第とのこと。

 まあ、「冒険者オススメだよっ!」って言われてるようなもんかな。


 それで冒険者になったわけだけど、Sランクになりたいとか最強パーティーを作りたいといった理由じゃない。その理由とはズバリ婚活のため。


 俺は前世での経験から学習したんだ。『本気になるのが遅すぎた』と。

 20代半ばまでは、「俺に恋愛なんて向いてないからいいや。まだ若いし時間はあるから」なんて思ってた。


 ところが20代後半になると焦りが出始め、それは30歳に近づくにつれ次第に大きくなっていった。

 世間的にはまだ若いかもしれないが、経験が乏しくモテない男にとってはなかなか厳しく、後悔していた。

 なので今度こそ結婚するべく、22歳に戻った今から婚活をしようと決めたんだ。


 ただここは異世界で、いろんな種族が暮らしている。道ゆく人は人間以外にも獣人だったりドラゴンだったり、他にもたくさんの種族。


 正直「詰んだ……」と思ったけど冷静に考えてみると、多種族が共存している平和な世界。それにどの種族も見た目は人間と大差ないことに気が付いた。特に女の子。


 獣人といえども「天然の猫耳だ!」と思うくらいで、見えてる部分はほとんど人と同じ。メイド服がとても似合いそう。


 ドラゴンにしたって頭にちょっと角があるくらいで、見えてる部分はほとんど人と同じ。メイド服がとても似合いそう。


 あれだ、異世界ものでよくある『人化』ってやつだ。ドラゴンが人化したら実は美少女だったとか、ああいうの。


 他の種族だってそうだ。見た目はほとんど人間といってもいい。だったら人間以外に異種族と結婚するのもアリなのでは?


 そう決意したはいいものの、まずは生活環境を整えないといけない。

 女神様から当面の資金は貰ったけど、それを使い続けるだけならただのニート。働かないと生きていけないのは異世界でも同じ。


 


 というわけで冒険者ギルドに行き、冒険者登録を済ませた。ここでの俺の名は前世での下の名前、『カイト』だ。


 なんでもこの世界における冒険者というのは、それだけで結構いいステータスになるらしく、憧れの職業の一つとされているそうだ。

 それにパーティーを組んだり他のパーティーと協力したり、世界中を飛び回ったりするため、意外にも出会いが多いらしい。


 だからこれからがチート能力の出番というわけだけど、それだけじゃ解決できない問題もある。それは俺がこの世界について知らなすぎるということ。


 こればかりは自分の見聞を広げないといけない。なので冒険者ギルドに行ってパーティーを組んでくれる人を募集した。

 

 ところがこれがまた全然集まらない。俺の冒険者ランクはFで一番下だ。そんな奴がメンバーを募集したところで、希望する人なんて誰もいないってことか。




 それから一ヶ月後。俺は今エルフの美少女と二人で冒険者として活動している。

 あの時、なんとエルフ美少女が声をかけてきてくれたのだ。


 長い間冒険者として活動しているというエルフ美少女は、俺に冒険者としての基礎を教えてくれた。


 そしてこれが重要だけど、俺は冒険者になった目的を自分の婚活のためだと、最初からこの子に丁寧に説明している。


 だってこんな私的すぎる理由にいつまでも付き合ってもらうわけにはいかないから。

 それにも関わらず、エルフの美少女『アイリ』はついて来てくれている。


 ツヤのある金髪ロングに端正な顔立ち。そして少しだけ尖った耳。尖った部分が上に伸びてるんじゃなくて、横に伸びてる感じ。ファンタジー作品で目にするエルフのイメージそのまま。


 緑を基調としたドレスのような服にひざ上までの白いタイツで、透き通るような白い太ももを少し露出。武器は弓で、その姿や所作は神秘的とすら感じる美しさ。


 実は俺が結婚の相手候補として真っ先に思い浮かべたのはエルフだった。なんだか清楚で優しいイメージがあるから。そんな矢先にエルフ美少女が仲間になってくれた! 


 だけど「これで目的達成! 楽しい異世界生活の始まりだぜ!」……とはならなかった。それには理由があるわけで、いくら俺でも誰でもいいってわけじゃない。



 俺達は今、ギルドからの依頼を受けてとある森にいる。そこはモンスターがたくさん出るという、冒険者以外は近寄らないような森。


 案の定、大量のモンスターが襲って来たけど、俺とアイリの連携によって難なく全滅させることができた。


「アイリ、助かったよ。ありがとう。やっぱり弓の腕は確かだな。素直に凄いと思うよ」


「どういたしまして。もっと褒めてくれてもいいんですよ? 頭に手を乗せてくれるのもそそりますね。そういえばパーティーを組んでもう一ヶ月ですか。確かカイトは結婚相手を探すために冒険者をしているのですよね? でもまだ見つかっていない様子。それならもういい加減私に決めたらどうですか? きっと幸せにしてみせますから。なんなら今すぐにでも二人でこの森に住みますか? 私エルフなので森に詳しいですよ? とりあえず森にいるモンスターを全滅させるところから始めますね? 二人だけの世界を作りましょう」


「喋りすぎじゃない?」


 これがアイリを恋愛対象として見られない理由だ。だってこんなこと言っちゃう子とずっと暮らすなんて無理でしょ。



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