第13話 彼の温かい腕の中で
花火が終わり、私たちは、帰り道をゆっくりと歩いていた。
夜空にはまだ花火の残像が揺れ、静かな夜道に虫の声が響いている。
隣を歩く優斗くんの存在が、私には何よりも心地よかった。
この感謝の気持ちを、今、伝えたい。
彼が私にくれたもの全てに、心からのありがとうを。
優斗くんと出会ってから、私の世界は大きく変わった。
中学時代に負った心の傷は、彼の優しさで癒され、再び流された噂に絶望した時も、彼は私を信じ、支えてくれた。
グループワークも、勉強も、そして今日の夏祭りデートも。全てが、彼のおかげで、私にとってかけがえのない経験になった。
私の瞳が、彼をまっすぐに見つめる。
感謝の気持ち、好きという気持ちが溢れ出てくる。
もう我慢できない。
「私、秋原くんと出会って、本当に変わることができました。グループワークも、勉強も、そして、こうして一緒に服を選んだり、お祭りに行ったり……。全部、秋原くんのおかげです。本当に、ありがとう」
優斗くんは、私の言葉を真剣に聞いてくれた。そして、ゆっくりと、私の手を取り、そっと握りしめた。
彼の大きな手が、私の小さな手の中にすっぽりと収まる。その温かさが、私の心をさらに高鳴らせた。
「秋原、くん……?」
彼の真剣な眼差しに、私の心臓は激しく脈打っていた。
優斗くんは、震える声で、しかし、はっきりと告げた。
「橘さんのことが……好きだ」
その言葉が、静かな夜道に吸い込まれていく。
私の頭の中は、真っ白になった。
まさか、優斗くんが、私に……?
心臓が、激しく、激しく脈打つ。
喜びと、信じられないという気持ちが、同時に押し寄せる。
中学時代からずっと、誰にも理解されない孤独の中で生きてきた。
高校に入ってからも、再び噂に怯え、心を閉ざしていた私に、光を灯してくれたのは、他でもない優斗くんだった。
優斗くんが私を信じてくれた時、私の世界は色を取り戻した。
優斗くんと過ごす日々は、私の心を温かく満たし、失われたと思っていた「好き」という感情を、もう一度教えてくれた。
この溢れるほどの「好き」という気持ちは、もう抑えきれない。
私の目から、一筋の涙がこぼれ落ちた。
「……私も……」
か細い声で、私は呟いた。
「秋原くん…ううん、優斗くんのことが……好き」
その言葉を口にした瞬間、私の心は、まるで夜空に打ち上がった大輪の花火のように、鮮やかに弾けた。
喜びと、安堵と、そして、確かな幸福感が、私の全身を駆け巡る。胸がいっぱいで、呼吸が苦しいほどだった。
優斗くんは、繋いだ手をさらに強く握りしめ、私をそっと引き寄せてくれた。私の小さな体が、彼の胸にすっぽりと収まる。
彼の温かい腕の中で、私は安堵と幸福感に包まれた。
「千栞……」
「優斗くん……」
初めて、彼が私の名前を呼んでくれた。その響きが、私の心に深く染み渡る。
私たちは、そのまましばらく、互いを抱きしめ合った。夜空には、まだ花火の残像が揺れている。
この夏祭り、この夜が、私たち二人の新しい始まりの場所になった。優斗くんというかけがえのない存在と出会い、私の人生は最高の物語へと変わったのだ。
私たちは、この日から、恋人同士になった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます