第3部:智と武の集結、中原を制覇せよ
第25話:中原攻略、白馬王朝の胎動
中原での大勝利の余韻が残る公孫瓚の陣営に、劉備、諸葛亮、鳳統、関羽、張飛の五人が加わったことは、瞬く間に将兵たちの間に広まり、大きな活気をもたらした。彼らは、劉備の「仁」と、関羽・張飛の「武」、そして諸葛亮・鳳統の「智」が、趙雲の元に集結したことに、新たな時代の到来を予感していた。疲弊しきっていた兵士たちの顔にも、再び希望の光が宿り始めていた。
(この時を、どれほど待ち望んだことか……)
諸葛亮は、広げられた中原の地図を前に、静かに目を閉じた。彼の心には、未来の天下統一の道筋が、鮮明に描かれている。それは、まだ誰も知らない、歴史の必然性を内包した一つの絵図だった。趙雲という、未来の知識を持つ異質な存在。そして、劉備という民を愛する「仁」の象徴。この二つの力が結びついた今、彼は自身の持つ「智」を最大限に発揮できると確信していた。鳳統もまた、その隣で不敵な笑みを浮かべている。彼の瞳は、諸葛亮とは異なる視点から、この新たな時代の到来を、まるで最高の悪戯を仕掛けるかのように楽しんでいるかのようだった。
趙雲は、軍議で練られた戦略の第一歩として、中原の小規模な諸侯たちを統合する作戦を命じた。しかし、それは決して武力による一方的な制圧ではない。趙雲の策は、徹底した「情報戦」と「民心掌握」を軸に据えていた。
「我らが目指すは、無益な血を流さぬ天下統一です。民を脅かす賊を討ち、困窮する民を救う。そして、その『仁』をもって、各地の諸侯に降伏を促すのです」
趙雲の言葉は、まるで熱い炎のように、劉備の胸の奥深くに燻っていた理想の炎を、再び燃え上がらせた。彼が長年追い求めてきた「仁」の道が、趙雲の「合理性」によって、現実的な戦略として具現化されているのだ。劉備は、その光景に深く感銘を受け、自らの進むべき道が、ついにこの地で見つかったことを確信した。
「子龍殿……貴殿の考えは、まさに我が理想そのもの。この劉備、全身全霊をもって、その先導を務めましょう」
劉備の言葉と、その背後にある深い「仁」の心が、白馬王朝の士気を、さらなる高みへと引き上げていく。関羽と張飛は、劉備の言葉を受けて、静かに頷いた。彼らの「武」は、民を救うという「仁」と、無駄を排する「智」に導かれることで、真の力を発揮し始めていた。その目には、もはや趙雲への「違和感」はなく、深い「信頼」が宿っていた。
作戦は、複数の部隊に分かれて実行された。趙雲は本軍を率いて中原の中心へと進軍し、諸葛亮と鳳統がそれぞれ別の部隊を指揮して、情報戦と交渉戦を展開する。関羽と張飛は、それぞれの持ち場である戦場で、武の象徴として圧倒的な存在感を発揮し、諸侯たちに降伏か抗戦かの選択を迫った。
(我らの進軍速度は、曹操殿が疲弊しきっている今、脅威でしかない。小競り合いに時間をかけている暇はない。一気に駆け抜ける!)
諸葛亮の部隊は、噂と計略を駆使して、各地の諸侯の間に不和の種を蒔いた。彼らの「智」は、物理的な力を用いることなく、城一つ、軍勢一つを無力化していく。諸葛亮は、諸侯たちの持つ「権力欲」や「保身」という感情の隙間を巧妙に突き、相手を自滅へと追い込んでいった。彼の部隊が近づくたびに、諸侯たちの陣営からは、内輪揉めや裏切りの噂が流れ始めた。そして、趙雲軍が到着する頃には、既に内部から崩壊しかけている城がほとんどだった。
一方、鳳統の部隊は、より直接的な交渉と、時には金銭や物資を惜しみなく与えることで、諸侯たちを懐柔していった。
「戦うか、我らに降るか。戦えば、失うものは数知れない。しかし、我らに降れば、お主らの領地は安泰だ。我らは、民の安寧を第一に考えておる。それが、公孫瓚殿の、いや、我らの総帥、趙子龍殿の御心よ」
鳳統の言葉は、諸侯たちの心に刺さった。彼らは、趙雲軍の圧倒的な武力だけでなく、その背後にある「仁」と「智」に触れ、抵抗することの無意味さを悟ったのだ。
その結果、中原の小諸侯たちは、抵抗する間もなく、次々と白馬王朝の傘下へと加わっていく。まるでドミノ倒しのように、広大な中原の土地が、趙雲たちの支配下に入っていった。その勢いは、誰にも止められそうになかった。
しかし、この圧倒的な進軍の裏で、趙雲は常に冷静だった。
(これで、中原の地固めは順調に進む。だが、曹操はまだ生きている。そして、江東の孫権も、西涼の馬騰も、黙ってはいないだろう。本当の戦いは、これからだ)
数週間後、中原の主要な拠点の一つを制圧した趙雲は、諸葛亮と鳳統と共に、次なる戦略を練っていた。陣幕の中には、制圧したばかりの城の、まだ真新しい木材の匂いが漂っている。
「諸葛亮殿、鳳統殿。この勢いのまま、次なる一手は?」
趙雲の問いに、諸葛亮が扇を静かに開いた。その扇の動きは、まるで風を読み、未来の運命を操っているかのようだった。
「次は、袁術の残党、そして江東の孫権との関係をどうするか、です。袁術の残党は、いまや烏合の衆。しかし、彼らが他の勢力と結託すれば厄介です。一方、孫権殿は、兄の孫策を助けた貴殿に、深い「貸し」を感じているはず。そこを突くのが最善かと」
鳳統がそれに続く。「孫権は、兄の孫策を助けた貴殿に恩を感じているはず。そこを突くのが最善かと。孫権が、我らの新たな勢力図に加われば、曹操もおいそれと手出しはできまい。そして、西涼の馬騰も……」
趙雲の脳裏に、かつて孫堅を助けた際の、孫策の顔が蘇った。あの時、趙雲が仕掛けた「貸し」が、今、確かな「必然性」となって、天下統一の道を開こうとしていた。そして、その必然性は、諸葛亮と鳳統という二人の天才軍師によって、さらに強固なものとなろうとしていた。
中原の平定は、まだ始まったばかり。しかし、白馬王朝は、既に次の戦場へと視線を向けていた。嵐のように駆け抜ける白馬義従の影は、やがて南方の空にも届き、新たな物語の幕を開けようとしていた。
この中原の地を統一することは、彼らの天下統一への、そしてこの乱世を終わらせるための、避けられない第一歩だった。
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