23話 花冠の檻
夜の東京、雨がしとしとと降り続ける中、ユリはひとり静かな公園に立っていた。
冷たい雨粒が頬を伝い、胸の中でざわめく力が抑えきれずに膨れ上がっている。
「やめて……お願い……」
彼女の体から薄い青白い炎のような光が漏れ始めた。だがそれは美しいものではなく、暴走する災害の前兆のようだった。
その時、遠くの闇の中からシルエットが一人現れた。スイレンだ。
「ユリ、焦るな。お前の力はまだ制御できない。だけど逃げちゃだめだ」
ユリは震えながら振り返り、涙ぐんだ目で言った。
「怖いの……私、壊れてしまいそうで」
スイレンは穏やかに微笑んだが、その目は焦りに満ちていた。
「私も家族を失った。未来が見えても防げなかった。だから、お前には逃げてほしくない」
すると背後から、ローズの激しい足音が響いた。
「さあ、終わりにしようぜ。お前が覚醒する前に」
シャクヤク、ロベリア、マリー、キキョウが次々と現れ、それぞれの怒りや悲しみ、孤独を帯びたオーラを放つ。
「あなたたち……」ユリは恐怖と決意が入り混じった表情で立ち向かう。
暴走する力が彼女の体を包み込み、黒い百合の花びらが幽かに舞い始めた。
「私、負けない。絶対に」
その言葉と共に、ユリの体は眩い白に染まり、かつてない力の奔流が解き放たれた――。
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