箱の中に隠されたものは

学生時代のことは、正直あまり思い出したくない

みんなが「懐かしいね」と語るようなキラキラとした思い出は

私には何一つない


思い出そうとすれば、いつも暗くて狭くて恐ろしい空間が

私の頭の中を支配する


それくらい

たくさんの嫌な思い出を抱えていた


学生時代の私の記憶

それらは汚くて、辛くて、悲しくて

悔しくて、見たくなくて

いつしか、暗い箱の中に押し込めていた


箱の中に隠した私は

そんなことすらも忘れて、日々を過ごしていた


ある時、不思議な箱があることに気づいた

箱の中を開けた時

そこに見えたのは辛い過去に隠れた

悲しい顔をした私だった


涙でぐしゃぐしゃになった私が

無表情に一人ぼっちで座っていた


私は見たくない過去と共に

その子のことも
閉じ込めてしまっていたらしい


『やっと気づいてくれたんだね』


泣いていたその子は微笑みながら

私の手を優しく握ってくれた


それからは不思議と、

汚かったはずの過去を思い出しても

辛くなることはなくなった

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SS小説集 なぎ @nagina34

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