待っている人がいる
真っ暗だった。誰の顔も見えず、誰の声も聞こえない。真っ暗闇の中で一人、いつも辺りをキョロキョロしていた。
見渡したところで、見えるものは何もない。問いかけても、答えてくれる人は誰もいない。
それが私の日常だった。
そのような中では、どれほど時間が経過していたのか、計測する術はない。わかることは、喉の渇きと空腹による時間の経過だけだ。
そういえば昔、何かの本で読んだことがある。洞窟の中で暮らす人の話を。彼は何者にも出会わず、ただ生きるためだけに毎日を過ごしていた。
彼は孤独であっても、世界は暗闇ではなかった。私とは違う。
私の世界は暗く虚しく、寂しい世界だ。生きることも気怠く、必死にはなれない。
ただそんなある日、私は一つの声を聞いた気がする。聞いた瞬間の衝撃が大きくて、今ではそれがなんという声だったのかは思い出せない。
けれど、不思議なものでそこから私の世界に光がさした。明るくなった手元で、私は自然に浮かび上がる心のうちを無我夢中で書き記した。
「できた」
そこで私はようやく思い出した。自分が書くために生きていたこと。書くために生まれてきたことを。
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