ニ 都市伝説の彼女
そんな、運命の勘違いから始まった片思いを勝手に拗らせていた僕は、ある日、思わず彼女の話を大学の友人達にポロっとしてしまいました。
ちなみにそのグループで電車通学なのは僕一人でしたし、彼女と出会うのはいつも独りの時だったので、この時点で彼女のことは誰も知りません。
「──ってわけでさあ、乗るたびに会うのになぜか顔が見えないんだよね。これも運命的な恋の試練ってやつなのかなあ?」
閑散とした大学の学食の片隅、友人四人とテーブルを囲みながら、今思うとなんとも恥ずかしい、正常化バイアスかかりまくりな勘違い発言をする僕でしたが、なんだか友人達の反応が少し変です。
笑うでも、
「…………え?」
「……おい、それって都市伝説でいわれてる〝後姿の女〟なんじゃ……」
謎の反応に、怪訝な顔をして友人達の方をキョロキョロ見回していると、その内の一人が奇妙なことを口にしました。
「後姿の女?」
「知らないの? この大学の生徒の間じゃけっこう有名な話だよ?」
聞き慣れない単語に小首を傾げて聞き返すと、今度は女友達が呆れたような口ぶりでその疑問に答えてくれます。
「〝後姿の女〟ってのはね、あんたの使ってる路線に出るってウワサの女の幽霊でね──」
女友達の話してくれたことを要約すると、それは次のような都市伝説でした。
その電車の中に現れるという女の霊は、まさに僕がよく出くわす
しかも、その見た目は長い黒髪に白いワンピースの後姿美人……やはり
そして、その女の霊を頻繁に目撃するようになるのは取り憑かれている証拠であり、しばらくは後姿しか見せないものの、その後もなお出会うことが続いていると、やがて、ついには振り返るその時がやってくるらしいのです。
でも、たとえ振り返ったとしても、けして女の顔を見てはいけません……その顔を見てしまった者は、命を奪われるといわれているのです!
女友達の語ってくれたその都市伝説に、僕は言葉を失い、急に背筋が冷たくなるのを感じました。
黒髪に白ワンピース……常に後姿しか見せない……それは、明らかに
「……で、でもさ、もしかしたら、僕の言ってるその女性を同じように見たって人の話が、いつの間にか尾鰭がついて幽霊のウワサに変化したなんてことも……」
それでも、僕は彼女が幽霊などとは認めたくなく、無理くり違う可能性を捻り出して、なんとかそれを否定しようとします。
「まあ、確かに〝幽霊見たり枯れ尾花〟なんて言ったりもするしな。都市伝説なんて、蓋を開けてみたらそんなもんなんかもしれないけど……」
しかし、苦し紛れに生み出したその仮説は意外と理にかなったものだったらしく、友人の中にはそう言って、僕の主張の方へ傾く者もいます。
「いや、ぜったいその女の霊だって。振り返ってもぜったい顔見ちゃだめだよ? てか、お祓い行った方がいいんじゃない?」
「しかし、ほんとにウワサ通りの幽霊だったら逆におもしろいな。むしろ、ぜひ顔を拝ませてもらって、ほんとに命奪われるのか検証してみなくっちゃ」
また、本気で心配してくれる者もいる一方、都市伝説を信じてはいないのか? 僕の生命などおかまいなしに、冗談混じりにそんなブラックジョークを口にする者もいたりします。
「あ、ああ。言われなくてもそうするよ。彼女の顔はぜひとも見てみたいからね」
そうした友人達に、この時はそんな強がりを言う僕でしたが、内心はけして穏やかなものではありませんでした。
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