クラスで一番の優等生だったはずなのに

第32話

　一月。冬休みが明け、俺たちの高校生活は、再び日常へと戻った。だが、俺の心の中は、冬休み前とは全く違うものになっていた。この冬休みで、俺は華蓮、美咲、萌、若葉、そして雫という五人のヒロインと、それぞれ特別な関係を築いた。彼女たちの純粋な愛、情熱、孤独、強がり、そして内面世界。俺は、彼女たちのありのままの姿を、すべて受け入れた。

　教室には、受験本番が間近に迫る、張り詰めた空気が漂っている。そんな中、俺は、それぞれのヒロインたちと、会話する機会を探していた。

　まず、俺は華蓮の隣に座った。華蓮は、俺の顔を見ると、嬉しそうに微笑む。その笑顔は、いつもの屈託のない笑顔とは違う、どこか甘く、そして色っぽいものだった。

「陽介、明けましておめでとう。冬休み、すごく楽しかったね」

　華蓮の声が、俺の耳元で囁かれる。その言葉は、俺と華蓮の秘密の関係を、思い出させてくれた。

「ああ。楽しかったよ、華蓮」

　俺がそう答えると、華蓮は、俺の腕に、そっと自分の腕を絡ませた。その仕草が、俺たちの関係が、幼馴染という枠を超えたことを物語っていた。

　次に、俺は美咲の隣に座った。美咲は、俺の顔を見ると、いつもと変わらない完璧な笑顔で、俺に微笑みかける。だが、その瞳の奥には、どこか挑戦的な光が宿っているように見えた。

「日高くん。明けましておめでとう。……冬休み、華蓮さんと、楽しかったみたいね」

　美咲の言葉に、俺は一瞬、息をのんだ。美咲は、俺と華蓮の間に何があったのか、知っているのだろうか。

「……どうして、そう思うんだ？」

　俺がそう尋ねると、美咲は、フッと冷たく微笑んだ。

「そう。ならいいわ。……でも、日高くん。私と華蓮さんを、同じように愛してね」

　美咲の言葉に、俺は何も言えなくなった。美咲は、俺に背を向け、参考書を広げた。

　その日の放課後。俺は、萌、若葉、雫と、それぞれ会話する機会を得た。

　萌は、俺に会うと、明るい笑顔で俺に駆け寄ってきた。

「陽介くん、明けましておめでとう！ 冬休み、すごく楽しかったね！ また、一緒に映画見に行こうね！」

　萌の声は、弾んでいる。俺は、萌の孤独な内面を、俺が満たしてあげることができたのだと、感じた。

　若葉は、俺に会うと、少し照れたように、俺に背を向けた。

「……日高くん。明けましておめでとう。……あの、冬休み、ありがとう」

　若葉の声は、弱々しい。いつもクールで、誰とも馴れ合わない彼女が、こんなにも弱っている姿を、俺は初めて見た。俺は、若葉の強がりな外面の下に隠された、甘えたいという願望を、俺が満たしてあげることができたのだと、感じた。

　雫は、俺に会うと、少し戸惑ったように、俺に微笑みかけた。

「あの……日高くん。明けましておめでとうございます。……あの、冬休み、ありがとうございました」

　雫の声は、震えている。いつも内気で、あまり人と話さない彼女が、こんなにも俺に話しかけてくれる姿に、俺は胸が熱くなった。俺は、雫の内面世界を、俺が広げてあげることができたのだと、感じた。

　五人のヒロインたちとのそれぞれの会話は、俺の決意が、彼女たちを幸せにすることにつながっていることを、俺に再認識させてくれた。

　だが、同時に、俺は、五人のヒロインたちを、どう幸せにしていけばいいのか、という、新たな葛藤を抱えていた。

　受験本番が間近に迫る中、俺の「後悔のない青春」は、今、静かに、新たな局面を迎えていた。