資料09|インタビュー 自治会館

日時:2025年8月1日 13:30

場所:███県██市 深久良みくら自治会館

対象:加藤かとう雅子まさこ西川にしかわ淳子じゅんこ(周辺住民)


加藤雅子:

 あら、この間の学生さん! 久しぶりねえ。元気だったかしら? 外は暑かったでしょう。こっちに来なさいな。麦茶ならあるけど飲むかしら。どうぞどうぞ。遠慮しちゃだめよ。


 ……ああ、あのほこらの話? どう? 何かわかった? ……へえ、やっぱりフミって人のための祠だったのねえ。


 え? ええ、ちゃーんと覚えてるわよ。私はもうおばあちゃんだけど、でも記憶はけっこうしっかりしてるんだから。ええとね、あれは西川さんだったはずよ。祠の近くに住んでて、一番最初に気づいたって言ってたはず。ああ、今日西川さんいるわよ。西川さーん! ちょっとこっち来てくれる?



西川淳子:

 はいはい、どうしたんですか? こちらの方は? あら、そうなの、偉いわねえ。ええ、西川淳子よ。よろしくね。


 ……ええ、そうですよ。私、あの祠の傍に住んでいてね、あの日祠の戸が外れかけててあれまあと思って。それでまず神社の人にお声がけしたのよ。そうしたらたまたまその後奥田おくださんに会って、直した方が良いわねって話したのよ。


 え? ううん、違うわ。朝じゃないわよ。夜よ。私、夜にレオ……ああ、ええと、当時買っていた犬の名前なんだけど、その子のお散歩をするのが日課でね、そのときに見つけたのよ。だから夜よ。それに、そうよ。あのとき、朝になったらもう警察がいっぱい来ててねえ……あれは驚いたわねえ……。


 ああ、そうなのよ。あの逮捕された人ねえ。レオはあんまり吠えない子だったんだけど、それでもちょっとでもレオの声がすると怒鳴ってきて、嫌な人だったわ。でも、まさか人殺し、しかも子供を殺すなんてねえ……。


 あら、そうなの? じゃあおかしいわねえ。そんな小さな子が夜中に出歩いているのも変だけど、その子が壊したんじゃないと思うのよ。だって、レオの散歩のときにはもう壊れてたんだもの。でも、なおさらその子が不憫ねえ……だって、やってもいないことで怒鳴られた挙句、殺されちゃったんでしょう。理不尽だわ。



加藤雅子:

 酷い話ねえ。にしても、確かにそんな小さな子がどうして夜中に出歩いてたのかしらねえ。親御さんはどうしてたのかしらねえ。


 ……ああ、しんみりしちゃったわねえ。あなたもこの暑い中、毎日大変ねえ。こんなおばあちゃんばっかりのところに来て話を聞くだなんて。学生さんだったわよね。お勉強頑張ってね。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る