第10話 生まれて初めての彼女
サイゼリアでつきあうことを決めたからこの日をサイゼリア記念日と呼称しよう。
そういうことで僕と理央はつきあうことになった。
僕に生まれて初めての彼女ができたのだ。
全身が高揚感に包まれている気がする。
とはいえ、初めての彼女が中学時代に僕に酷い事をしたグループの一人だとは夢にも思わなかった。
これが運命のいたずらということか。
サイゼリアで食事を終えた僕は帰宅した。
駅の改札口で手を振る理央の姿が脳裏に焼き付いてはなれない。
綺麗で可愛い彼女を手に入れてしまった。
いやいやこれは次のステップアップにつなげるための踏み台だ。
中学時代のことを忘れてはいけない。
僕の大事なスケッチブックを破り捨てたのは理央のグループなのだから。
理央を使って女子に慣れて、もっと僕にふさわしい相手を見つけるのだ。
あっでも今まで彼女がいなかったのに見つかるのか。
理央を利用して女性経験をつめたとして、本当にそれ以上の女性が見つかるのだろうか?
まあそれはこの際、一度棚上げしよう。
とりあえず僕に彼女なるものが出来たのだ。これは喜ばしいことだ。
妹の
あいつはいつも僕に彼女がいないことをからかっていたからな。
自宅マンションに戻り、熱いシャワーを浴びる。
明日は早朝からの現場なので早く寝ないといけない。
だけど僕は寝つけなかった。
思ったよりも彼女という存在が出来たことに興奮しているようだ。
つきあうということは理央にキスや胸を触ったりお尻を触ったりしても赦されるということだ。
理央は客観的にみても近畿で一番の美人だ。
スレンダーだが、胸もお尻もぷりっとした良い肉が詰まっている。胸はソフトボールぐらいでお尻はハンドボーぐらいか。
その理央の体を彼氏という立場なら、たいがいのことをしても許されるのだ。
そんなことを考えていたら、興奮してあまり眠れなかった。
「先輩、寝不足ですか?」
僕が現場で欠伸をしていると白石澪が顔をのぞき込んできた。
そういえばこいつ来月のシフト変更を申し出ていたな。何処かに遊びにいくのか。
「夜中までアニメ見ていたからな」
僕は話をはぐらかす。
彼女が出来て、それにうれしくて興奮して眠れなかったなどとは言いにくい。
「本当ですか。またエッチな漫画でも見ていたんじゃないですか」
ジト目を白石澪は僕に向ける。
その言葉にどきりとしてしまう。
昨晩、あまりにも眠れないのでセラの薄い本のお世話になった。ずばり言い当てられてしまったというわけだ。
僕が答えに悩んでいると白石澪はにやにやとした笑みを向ける。
「そういや、白石シフト変えるんだな」
僕は話題を変えた。
白石澪がシフトの変更を希望するのは珍しいことであった。
「ああっそれですね。私、八月発売の雑誌に出ることになったんですよ」
白石澪は自慢気に巨乳をはる。
こう見ると本当にでかい。推定だがGいやHカップはあるんじゃないか。
「セクシーなやつか」
僕は言いながらビキニ姿の白石澪を想像してしまう。
「違いますよ。タウン誌です。レストランで食べてるところを撮ってもらうんです」
ふふんっと白石澪は鼻を膨らませる。
白石澪はタヌキっぽくで可愛いから、そう言うモデルみたいなことに選ばれてもおかしくはないか。巨乳だし。
無駄話をきり上げて、僕たちは仕事にもどる。
午後二時過ぎに仕事を終え、僕たちは現場から会社にもどる。
途中、テイクアウトのお便屋さんでお昼を調達して僕たち事務所で遅い昼食をとることにした。
僕が好物のチキン南蛮弁当を食べていると白石澪が向かいに座る。
白石澪の胸はテーブルの上に乗っていた。これが乳休めというやつか。
くだらないことを僕が考えていると白石澪は手を合わせて、いただきますという。
出汁の香りがする親子丼を食べだした。
一口スプーンですくい、ぱくりと食べる。
初めて気がついたけど白石澪の食べる姿は綺麗だ。ちゃんと「いただきます」をいうのも好感が持てる。
会社に入ったときは、ただただ一人でご飯をかきこんでいた。黙々と食べる姿は食事を楽しんでいると言うより、単純に必要な栄養をとっている姿に見えた。
あのときと比べたら雲泥の差だ。
今の白石澪を見てたら、雑誌にスカウトされるのも良くわかる。
僕が白石澪の食べている姿に見とれていると視線が合う。
「どうしました?」
小首をかしげる姿に思わず可愛いと思ってしまう。
「いや、白石って綺麗に食べるなって」
僕は素直な感想をもらす。
僕の言葉を聞いて、白石澪は頰を染める。
「そ、そうてすか……」
食べている姿をみられるのが恥ずかしかったのかな。悪いことをした。
それにしても白石澪のことを可愛いだなんて思うのは初めてかもしれない。
そこで僕の脳内に妄想が浮かぶ。
例えばだけど理央と付き合いレベルアップした僕は白石澪とつきあうのはどうだろうか。
白石澪は二十歳と若いし、好き嫌いなく物を食べる姿は好感が持てる。それに巨乳だし。
白石澪は少なくとも僕のことを嫌いではないと思う。嫌いだったらこうして向かいあってお弁当は食べないだろう。
それに何回も白石澪から食事に誘われている。まあ行くのは牛丼屋さんかラーメン屋さんかだけど。
でも嫌いな人間とは食事に行かないだろう。
そう妄想していたらサイゼリアで美味しそうにイタリアプリンを食べている理央の顔が浮かぶ。
妄想の中で妄想が重なる。
どうしてか分からないが理央と食事を食べているときの方が楽しい。
けっして白石澪が嫌いではない。
でも楽しいと感じるのは理央だった。
「そう言えば先輩、現場で私がセクシーな雑誌に出るのかって言ってましたよね」
白石澪の声に現実に戻される。
そう言えばそんなことも言ったな。
再び、白石澪のビキニ姿が頭をよぎる。
想像力豊かなのはイラストレーター志望者としてはいいことだが、今は困る。
「プールに一緒に行ってくれたら見せて上げますよ。私の水着姿」
白石澪は小声で僕に囁く。
それは魅力的な提案であった。
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