しゃべれない彼女は今日も私に触れてくる。
しずく
第1話
誤字があったので訂正しました!
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黒崎が今日も私に触れてくる。
手を触って握ってきたり、そこから前腕、二の腕、脇と沿うように撫でて胸を揉んでくる。
私は目をつむって、声が出ないようにせいいっぱいに我慢する。
揉んでても楽しくないような胸を触り続けて何がいいのかわからない。
「触りすぎ……」
私が小さくつぶやくと、彼女は目を細めて小さくニコリと笑い、別の場所を触り始める。
体の波に沿って、ゆっくりと両手で触られる。
学校の制服のスカートを避けるように彼女は中に手を入れていく。そのまま下着を脱がそうとしてきたので私は右足で黒崎の肩を蹴ってやった。
「そこまでしていいとは言ってない」
結構思いっきり蹴ったつもりなのに黒崎は体幹が良いのか倒れることはなく、フリフリと両手を振って無実を主張した。
「……なにもしてないなんて主張通らないからな」
お互い真顔で数秒間じっと顔を見つめあう。黒崎は折れたのか、私に舌をべぇと出した後、ベッドから立ち上がって部屋から出て行ってしまった。
でもあれは黒崎が悪い。体を触っていいって言ったのは私だけど下着を脱がせてもいいとは言ってない。
私は黒崎に乱された服を直す。
黒崎は私と同じ学校に通う女の子だ。友達は居るみたいだけど基本的に一人でいるみたいでよく教室からいなくなるのを見るくらいでほかには何も知らない。
関わりをもつようになったのもつい最近のことで、住んでいるマンションが同じだったから。彼女は四階で私は六階に住んでいる。
なぜ今までお互いの存在を認識していなかったのかというと学校が別だったからというとても単純で簡単な話だ。
「ひゃっ!」
びっくりした。急に冷たいものが頬に触れて変な声が出てしまった。
両手に表面が結露したペットボトルを持ってにやにやしてる黒崎がそこにはいた。
「そういうのやめてって前にも言った」
黒崎はおもむろにスマホを取り出して指を動かして何かしはじめる。
ピコピコと私のスマホから通知音が聞こえて来て、スマホの画面を除くとメッセージアプリの個人チャットの黒崎から「今の声可愛かった」とメッセージ来ていた。
「……うっさい!」
黒崎は学校が終わった放課後に私の家にやってくる。私の両親はいつも遅くまで仕事でいないのでそれまで私と過ごして帰っていく。時間だと二から三時間くらいだと思う。
黒崎がしゃべれないのは生まれつきらしいということ以外知らないけど、表情豊かだし、メッセージアプリのメッセージもめちゃくちゃ早いのでコミュニケーションに困るようなこともなかった。
「なに、さっきから」
隣に座ってきたと思ったら脇腹を触られてくすぐったい。
黒崎はジェスチャーで私にベッドから少し離れるか後ろを向いてほしいみたい……メッセ送ればいいのにと思っていたら―――ちょうどメッセージが来てたらしい。私はスマホのロック画面に表示された通知の内容を少しだけ見る。
そしてしょうがないなと言わんばかりに体を動かした。
「はい、それで何するの?」
黒崎の手が首から肩へ。
腕を撫でて、脇腹を這っていく。
太ももにたどり着いた手は、寝ている猫のおなかをゆっくりと撫でているような優しさがあるけれど、どこかいやらしく伸びてくるのを感じられる。
んぅ。と小さく甘い声が出るのを頑張って抑える。
これ以上触られると変な感じになりそうだと思う。
「変なとこさわんないで」
私の言葉を聞いた黒崎は手をゆっくりと通った道を帰っていくように上に上がっていく。
と思ったのだけれど、おなかで落ち着いたのか私のおなかにぎゅっと抱き着いてきた。
私は黒崎に上半身の体重を預けると「はあ」と小さく息を吐いた。
何がしたいのかわからない。
彼女は私が好きだと思う。
私というよりも、私の体が好き。
手つきがなんというか、おじさんみたいでいやらしい。
おじさんに触られたことないから、わからないけど何となくそう思う。
私の体を触ってくるのは別に構わない。友達とするボディタッチも似たようなものだから。
それでもいやらしい手つきで撫でてくるのだけはちょっと嫌だ。なんかキモイし、変な感じになる。
黒崎が私のおなかをペシペシと軽くたたいてくる。
「……なに」
黒崎が指さした方に目をやると黒崎のスマホがあった。無地のケースに収まったシンプルなスマホ。誰もが持っているような普通のスマホも黒崎からしたら立派な伝令役だ。
「取ってほしいの?」
と私が言うと小さくうなずいた。
「離れてくれないと届かないよ」
黒崎が抱き着いているので体をのばしてもこれ以上は動けない。
テーブルの上に置かれたスマホには若干にも指が触れることはない。
『じゃあ、いいや』と言わんばかりに私に抱き着く腕の力が強くなり私はスマホを取るのをあきらめて腕を下した。
私は黒崎が何をしたいのか知らない。
黒崎はなぜいつもこうして私に触れてくるのかわからない。
学校では私に近づこうともしないのに、放課後私の家に来ると離れることをしらないのかといわんばかりにずっとそばにいる。
悪いとは思わない自分がいるけど。
でも少しだけ落ち着かないと思う自分もいる。
黒崎の私より高い体温にすこしだけウトウトし始めた時に黒崎のスマホのアラームが鳴り響き、目が覚めた。
スマホに表示される時刻は十九時を回っていてこの時刻は黒崎が自分の家に帰る時間を証明していた。
黒崎はアラームを聞いてすぐに私に抱き着いていた手を離すと、立ち上がってスマホを手に取りアラームを止める。
黒色の長くしなやかな髪を耳にかけてスマホを触る黒崎の姿は間違いなく同級生で一、二を争うレベルの美人だと思う。
化粧をしてないのにあの透き通った肌とすらっとしたスタイルはきっとしゃべれない彼女に神が贈ったプレゼントか何かだと思う。
いやらしい手つきは嫌だけどあのプロポーションはちょっとうらやましいなと感じてしまう。
黒崎はスマホをスカートのポケットの中に入れると、上着とカバンを手に取って私にばいばいと手を振った。
玄関まで彼女を送ろうと後ろをついていくと、彼女は靴を履いた後にドアを開けることなく、私の方に振り返った。
「また明日」
どうせ明日も学校で会うのだからあいさつなんてこのくらいで十分だろう。
でも黒崎は満足しなかったのかカバンと上着を置いて私の体を引っ張り寄せた。
動かないとどちらかが前に倒れることになるので私が負けて黒崎に近づく。
黒崎がたっている場所と私がたっているフローリングが敷いている場所は若干高さが違うけど、黒崎はそれを感じさせない身長を持っているので段差があっても黒崎の方が頭が高い。
黒崎は私にやさしく抱き着くと、首元に軽くちゅっと唇を触れさせた。
離れると上着とカバンを再び持ち上げて今度こそ彼女は私の家から出て行った。
「まじで、何がしたいんだ。」
私は先ほど口づけされた首の部分を右手で触りながら頭を悩ませた。
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