06:ふたりのこれから「報道が繋いだ奇縁」
「凪さんの言う通りです。私たちは、交際することにしました」
混乱が収まらない会場で、今度は蓮が冷静に補足を始める。
まるで、凪という名の嵐が吹き荒れた後を、静かに整地するかのように。
「ですが、誤解のないように申し上げておきます。正直に言って、我々はまだ、お互いを恋人同士だとは思っていません。というか、思えません。何せ、昨日、この会見の打ち合わせのために、人生で初めて、プライベートで連絡先を交換したばかりですから」
この衝撃的な告白に、会場は再びどよめいた。
「昨日!?」という声が上がる。
「そうです、昨日です。ですから、これは非常に奇妙な関係のスタートになります。普通、人は恋に落ちてから交際を始めますが、我々は、交際を始めてから、これからお互いを知っていく。順番が、めちゃくちゃです」
蓮は、そこで初めて、凪の方を向いて柔らかな笑みを浮かべた。
「でも、不思議と悪い気はしていないんです。むしろ、少しワクワクしているくらいで。この未曾有の騒動がなければ、僕は月島凪さんというひとりの女性と、こうして深く向き合う機会は永遠になかったでしょう。そう考えると、ある意味、これはマスコミの皆さんが与えてくださった『縁』なのかもしれないな、と。非常にポジティブに捉えています」
その言葉に、凪も頷いた。
「そうですわね。わたくしが仕事を通じて存じ上げている神楽坂さんは、とても真面目で、ストイックで、誠実な方です。これからは、恋人として、もっと違う素敵な一面を見つけていけたら……と、心から思っております」
凪は、再び記者たちの方へと向き直り。
慈愛に満ちた聖母のような微笑みを浮かべた。
「ですので皆様、どうぞご安心ください。そして、これからもわたくしたちの『熱愛』を、どんどん報じてくださいませ。あなたたちが創作したこの物語を、わたくしたちが、最高のハッピーエンドに導いてみせますから。ねえ、神楽坂さん?」
「ああ、もちろんだよ、凪さん」
初めて、蓮は凪を下の名前で呼んだ。
そのやり取りは、まるで長年連れ添った恋人同士のように自然で、記者たちはもはや、何が真実で何が虚構なのか、完全に判断がつかなくなっていた。
-つづく-
※次話は、本日13時の更新です。
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