#16 晴れのち犬
チワワかな? いや、スピッツだよ。あの形はポメラニアンだって。ある日、空に現れた子犬の雲は、ごく緩慢に、しかしまるで生きているかのように自由に駆け回った。初めはみんな大歓迎。眺めているだけでも愛らしく、インスタにあげれば大人気、テレビでも特集されるほど。市まち主催で名付けのコンクールまで開かれ、正式に名前まで決まった。いつまでも居てほしい。そんな町じゅうの願いを聞いているみたいに、子犬の雲は同じ空から離れない。が、だんだん雲行きが怪しくなってきたのは何か月か経った頃。なんかデカくなってね? 他の雲を食べていることは既に知られていたものの、こんなに育つとは誰も思っていなかった。空にポツンと浮いていた子犬は、いまやどんよりと町一帯に覆いかぶさる超大型に。犬の下では洗濯物は乾かないし、町は夜みたく暗くなる。さらに、走れば風に、ヨダレとおしっこは雨に。もともと
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