栗は、世界をもっと見たい!

第1話 ぼく、富士山を登ってきた!

 今日のぼくは、もう先週まで小説を書いていたぼくとは違う。(ドヤ顔)

 今日のぼくは――「富士山を登ってきた犬」なのだ!

(パパ「登った?」

 ママ「登ったよ!クリも私も、富士山にちゃんと登ってきたんだから!」

 パパ(おそるおそる)「登った……?」

 ママ&クリ「登った!」)


 えーと、登山シーズンも終わったので、パパの車で富士山五合目まで行ってきました〜


 実は行く前に、何度もネットで確認したんです。

「五合目の神社にはワンちゃんも来てるらしいよ!」って。

 でも当日行ってみたら――

 その日いた犬は、ぼく一匹。

 しかも本殿はワンコNG。


 だからぼくは本殿の前で、パパが御守りを買うのを静かに待っていました。


 そのときのぼくは紫のセーター姿で、ちょっとしたアイドル気分。

 すると優しいおじさんたちが次々に声をかけてきて、

「かわいいね!」

「触ってもいい?」

 気づけば、なでたい人や写真を撮りたい人の小さな列ができていました。

 ぼく……これはもうアイドルでしょ?(ドヤ顔×2)


 でも、そんな華やかに見える富士山旅行にも、ちゃんと【現実】があって……  

 その現実というのが、まあ、骨身にしみる「寒さ」だったんです。


●寒さその1:宿

 泊まったのは、ワンコに優しいという「W resort」だったのですが……

(にっこり)

 どこがリゾートなのか、ぼくにはまったく分かりませんでした!


 ドッグランは小さいし、犬用温泉はないし、

 パパとママが部屋を出るときは、ぼくは狭いケージに入れられるし。

 最初は「ぼく だけ が行動制限されるんだ……」と思っていたのですが――

 あとで気づきました。

 パパとママも、実はどこにも行けなかった。


 というのも、この宿の「外出OK」という言葉、

 実際には「館内移動ならOK」という意味だったんです。

 人間だけで外へ出るには、ぼくをフロントに預ける必要があって、

 しかもその預かりが1時間1100円で強制ケージイン。


 ……え、人間も「外出課金制」なの?


 もちろんパパとママは、ぼくを置いてご飯を買いに行くこともできず、

 レストランは注文自体NG。

 結果――

 ぼくらの晩ごはんは、安定のコンビニ。

 宿泊代4万円のうち、たぶん3万円は「富士山の景色代」でした。(笑)


●寒さその2:山中湖の草!!

 朝5時すぎ、4時間しか寝ていないぼくを、ママが元気いっぱい連れ出し、日の出を見に行きました。

 撮影スポットに着くと、富士山は雲で半分隠れていて……

 それでもママはあきらめず、

「もっと見える場所があるはず!」

 と言って、ぼくらはひたすら歩きました。


 歩いて、歩いて、歩いて……


 湖の端っこまで来て、ようやくママは写真を撮り始めました。


 その間ぼくは湖畔の草むらをくんくんしていたのですが――

 1時間前に開けたばかりの新品セーターが、草の実まみれに。

 しっぽ、耳、脚の毛……全部びっしり。

 見るだけで背中がゾワッとするレベルでした。


 その後、ママに何十本も毛を抜かれ、

 ぼくは一瞬、魂が抜けました。


 でも、ふと東の空が明るくなると、

 朝日に照らされた富士山は、ゆっくりと色を変えていきました。


 最初は薄いオレンジ。

 それが少しずつ桃色を帯びて、

 やがて、冷たい空気に溶けていくような淡い紫に。


 山肌が光に染められていくたびに、

「富士山って、生きてるんだ……」

 そんなふうに思ってしまうほど、息をのむように美しかった。


 まるで富士山が、朝ごとにちがうドレスに着替えて、

 ぼくらに「おはよう」と挨拶しているみたいで、

 ぼくはしばらく動くことも忘れて見入ってしまいました。


●寒さその3:白鳥

 紫のセーターに着替えて、わくわくしながら白鳥ボート乗り場へ。

 ですが、そこにいた白鳥たちは、みんなが思う「優雅」とは真逆で……

 めちゃくちゃ気が強い!!


 岸に立っているだけで「グワッ!」と怒られ、

 並んでいるときにはこっそりお尻をつつかれ、

 ぼくはびっくりして後ずさり。


 情熱的なぼくと、冷たく睨んでくる白鳥。

 どう考えても相性が悪い。


 しかも白鳥ボートはワンコOKだけど、犬は「外のデッキ」。

 風が直撃。

 ママ:「景色きれいだよ〜!」

 ぼく:「いや、寒い寒い寒い!!」


 ……そして案の定、富士山旅行のあとママは発熱でダウン。

 その間、ぼくはずっとそばで寝てあげました。


 だって、富士山って本当に大変なんだもん!


 それでもぼくは、もっと世界を見たいと思いました。

 紅葉を踏む音と、銀杏イチョウの葉を踏む音はぜんぜん違うし、

 朝日に染まる富士山と、雲に隠れた富士山はまったく別の顔をしている。


 赤く染まる稜線、

 雲の切れ間から射す光、

 静かな湖面に映る逆さ富士――

 どれも息をのむほどきれいで、胸がぎゅっとなる風景ばかり。


 だから、ぼくはこの物語を二つの章に分けることにしました。

 ひとつは「栗は、毎日を大事にしたい!」

 ――パパとママ、猫のお兄ちゃんたちとの日常。

 もうひとつは「栗は、世界をもっと見たい!」

 ――ぼくが見た景色、泊まった宿、出会った世界。


 ぼくはもっといろんな場所を見てみたい。

 世界と、もっと仲よくなりたいんだ。


 富士山の写真はここにあるよ〜

 https://kakuyomu.jp/users/kuripumpkin/news/822139840075165884

 それから、ぼくの写真はこっち!

 https://kakuyomu.jp/users/kuripumpkin/news/822139840081278212

 ……そして、ぼくをいじめた「あの白鳥」もバッチリ写っています。(笑)

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