第7話 僕、無限ごちそう・神マシンと戦う!

 あ〜、今週はほんとに疲れたよ。

 日記を書いてる今も、ぼくは犬用ベッドの中に丸まってる。

 震えてるのは……ぼくの小さな心と、小さな足よ。

 あ、言い忘れてた。どうも、クリです〜🐶


 さてさて、話は一週間前の夜にさかのぼるんだ。

 あの夜、ママが突然ぼくを連れて夜中の散歩に行ったの。

 秋の冷え込みって、台風より急にやってくるんだね。

 ママは夏の半袖のままで、「きゃっほ〜!」って感じでぼくと走り回ってた。

 そりゃあぼくもテンション上がるよ!


 でもね、その夜のうちにママは発熱。

 ――人間って、「無茶しなきゃ死なない」って言うけど、ほんとその通りだと思う。

 みんなも共に肝に銘じようね。


 発熱だけならまだしも、偏頭痛と喘息までセットでやってきた。

 もう冬先取りって感じ。


 ぼく、もう2歳。つまりこの家で迎える3回目の冬なんだ。

 冬ってどういう季節か、知ってる?

 そう――ママがずっと体調を崩す季節。

 だからぼくは、最強の看病犬に変身!


 今年は少し早めにお仕事開始だ。


 去年みたいに、自分のベッドをママのベッドに引っぱっていって、

 ママの寝顔を見ながら寝ようとしたんだけど……

 すでにくまのぬいぐるみとスティッチに取られてたんだ。

 これ、全然大げさじゃないよ。


 ママが寝込んでると、パパが出かける前に

「ママが寂しくないように」って、2匹の巨大ぬいぐるみをママの横に置くの。

 ――結果、ベッド半分が占領。


 ぼくのスペース? どこにもありませんけど!?


 だから今年は新しい看病スタイルにしたんだ。

 ぼくのベッド=ママの足と、くまさんのおしりの間。

 ママの太ももを抱いて寝るのが、いまこの家でいちばん賢い生き方なんだと思う!


 そうやって2日ほど看病してたら、ママの熱がようやく下がった。

 でも……新たな戦いの幕が開いた。


 ――人間って、「無茶しなきゃ死なない」X2。


 ちょっと元気になると、ママはすぐに動き出す。

 小説の更新、動画の編集、そして……

 ABCだかDEだか、本人もよくわかってない謎の作業。

 まあ、小さいことばかりだからいいんだけどね。

 ぼくはいつもどおり足もとで寝てるだけ。


 ……のはずだった。

 その夜、深夜1時。

 ママ:「これ買っちゃおっかな〜」


 翌朝。

 届いた。

 ……え、早くない? ネットショッピングってこんなに速かったっけ?

 ぼくが8時間寝てるあいだに届くなんて!


 最初ぼくはそれが何かわからなかった。

 とりあえず乗ってみたら、おやつがもらえた!


 なんだこれ最高!

 減量中のぼくにとって、これは神の恵み!

「乗るだけでおやつ」だなんて、ぼくこのマシン大好き!

 よし、名づけよう――その名も「無限ごちそう・神マシン」!


 ……数分後。

 マシンがしゃべった。

「まもなく運動を開始します。準備はいいですか?」


 なにこれ!?ママみたいにしゃべった!?

 びっくりしたけど、まあしゃべるだけなら平気だ。

 ぼくは堂々と立っていた。


 1分後。


 動いた。

 ……ぎゃああああああ!

 こわいこわいこわい逃げろぉぉぉぉぉぉ!!

 そのとき。

「クリ〜、クリリ〜〜」

 ママが風邪で鼻声になりながら、マシンの横に座ってる。

 手には――おいしそうなごはん。


 食べたい……でも、こわい……


 その隙にパパがぼくを抱き上げ、ドンッと上に置いた。

 次の瞬間、ぼくはベルトと一緒に転がり落ちた。


 あれ? 今ぼく、確かに上がってたよね?

 ……やっぱりこわい!!


 そこから30分のにらみ合いが始まった。

「クリ〜、クリリ〜〜、アップ〜〜」


 ぼくのよだれは床にぽたぽた。

 鼻の奥はニュージーランド産ムール貝の香りでいっぱい。

 でも、一口も食べられない。


 そして、ぼくとママの「口論」が始まった。

 知ってる? 口論ってやつ。

 ぼくが「ワンワン!」って言うと、ママも「ワンワン!」って返してくるの。


 ……ねぇ、それ何語? 犬でも理解不能なんですけど!?


 そんな「汪語バトル」を30分続けてたら、ついにパパが動いた。


 パパの手には――煮たての牛レバー。


 ぼく:「それ! それは命より大事なやつ!」

 パパ:「クリ、これ食べたかったら上に乗るんだぞ〜」


 ……ぼくは悟った。

 これは試練だ。

 ぼくは壁に体を寄せ、右足をそっと前に出した。

 ベルトの上にのせて、少しずつ前へ。


「全身乗らなきゃダメだよ〜」

 と、観客のママ。


 パパは牛レバーをママに手渡し、

 自分はぼくの背後に回って――再び、ぼくを上に持ち上げた。


 落ちないように、ぼくは必死に前へ前へ。

 ママの方へ向かって歩き続けた。

 歩けば歩くほど、牛レバーがもらえる。


 なんだこれ、最高のシステムじゃん!

 見た目は「無限運動マシン」っぽいけど、牛レバーさえあれば――「無限ごちそう・神マシン」だ!

 ちょっと怖いけど、ぼく幸せ!


 そのとき、ママが言った。

「ねぇ、この子ダイエット中だよね? 走りながら食べるのってどうなの?」


 パパ:「……じゃあ、一回止めて。夜ごはんのドッグフードでやろうか。」


 は?? ごはんのために努力??

 ぼくの中で「拒否」の嵐が吹いたけど、結局また乗った。


「わあ! 本当に走ってる! 一日で覚えたよ!」

 ママが大興奮して叫んでる。


 でもぼくが気になるのは――ママの手の動きが遅い。

 もっと早く、ドッグフードください!


 夜になって、ママはまたやらかした。

 冷たい床に座りっぱなしで、ぼくが走る姿を見て興奮してたら……

 またくしゃみ、また発熱。


 ……だから言ったのに。「無茶しなきゃ死なない」X3だよ!


 でも安心してね。

 いまこの日記を書いてる時点で、ママはもう元気。

 今日も新しい一日が始まってる。


 というわけで、ぼくはまた「運動犬」から「看病犬」にモード切り替え。

 このスキに寝とかないと、夜になったらまた運動犬タイムなんだ!


 神さま、お願い。

 もうそんなに雨降らせないで。

 晴れたらまた、ママと草の上を走りたいんだ!


 じゃあ今日はこのへんで〜!

「無限ごちそう・神マシン」で歩いてるぼくの動画、ママが絶賛編集中~

 完成したら「栗は、長生きしたい!」チャンネルで公開予定だよ🐶

 今日はその前に、ちょこっとだけ動く写真をお見せするね〜

 https://kakuyomu.jp/users/kuripumpkin/news/822139838148143689


 みんなも風邪ひかないように!

 あったかくしてね🐾🍵

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