隣のひと。

久米橋花純@旧れんげ

サッカーが好きなの!

私、飯田いいだ志帆しほ。どこにでもいるいたって平凡な高校生。でも、ひとつだけ趣味がある。それはね、サッカー観戦。よく一人でスタジアムにお邪魔したりしてるの。



「今日はどうしよっかな……。」

今日もサッカー観戦に行きたいところなんだけど、友達にカラオケ誘われちゃったんだよね。

「志帆! カラオケどうすんの!? 行くの? 行かないの?」

どっちなんだいっ、って問題なんだけど。

「ん? あぁ、愛華あいか。今どーしよーか迷ってたとこり」

「また、サッカー? ホント好きだねぇ。」

そんな呆れ気味に言わなくたっていいじゃない。

「そんなに好きなら、サッカー部のマネにでもなれば?」

「そんなことしたら、放課後サッカー見に行けなくなるじゃん!」

「サッカー部で見れるでしょうが。」

「いや、プロのお目当てが見れないんじゃ意味ないの。」

「ま、いいけど。今日のカラオケどうするのよ。」

いいけど、って失礼な。でもなぁ、今日なんか行きたい気分なんだよなぁ、サッカー見に。

「今日はサッカーに行きまーす。」

「えぇ。またぁ? ま、今度ね。…………彼氏なんて一生できなそう。」

ん? 聞き捨てならないセリフが聞こえたなぁ?

「愛華サーン。聞こえてますよー。」

「あれ、聞こえてた?」

「ったく。で、何でそう思うの?」

失礼なんだから。私を何だと思ってるのよ。

「サッカーに恋してそう。男子よりそっちに目が行くでしょ? あと、もし付き合ってもデートがサッカー観戦になって、男子のほうに呆れられそうだから。」

うっ……。図星過ぎて何も言えねぇ。

「しょうがないじゃん。暇さえあればサッカー見てたいくらいだもん。

………………彼氏にするなら、サッカー好きがいいなぁ。」

「まあ、そうじゃないとすぐ別れそうだし。」

キーンコーンカーンコーン

昼休み、終わっちゃったぁ。ま、どうせ愛華と席となりだし、何も変わんないんだけど。


「おい、起きろ。六限終わったぞ。」

はっ。家庭科って眠くなるから、寝ちゃうんだよなぁ。調理実習以外寝てるから、私。……え? ちょ、ちょ、え? 待って。私、五限の記憶もないんだけど、もしかして、二限分寝てた? そんなわけないか。私、優等生だもんな。

「あんた、二限分寝てたけど、寝不足なの?」

あちゃ~、現実を突きつけられてしまった。

「しょうがないじゃん。サッカーに夢中だったんだもん。」

「へぇ。で、もう放課後ですけど。」

「え、早く言ってよ。サッカーだー!」

「行ってらっしゃ……。」

なんか、愛華が言ってるけど、聞こえない。……ま、いいか!





ガチャッ

「たっだいま~!」

おかえりー、なんて帰ってくるわけもなく。だって、親、夜遅くまで仕事してるんだもん。お金が自由に使えるから、別に何も思わないけど。

「今日はァ、中村選手のユニにぃ……、あっ、この短パンで、ポニーテールすればいいんじゃね?」

うわー。鏡で見ると、運動できるサッカー女子にしか見えない。いや、まあ、サッカーできるんだけどね。

「わっ、時間ヤバい。試合始まっちゃうよー。行ってきまーす。」




はぁ、ギリギリついたぜ。にしても、今日もいい席とったなぁ。

ピーッ

試合開始のホイッスルが鳴る。中村選手どこかなぁ。……あ、いた。今日も輝いてますねぇ。


「ちょっとすみません。通していただけますか。」

そんな声が聞こえた気がした。結構遠くだったから、私ではないだろうと思って、試合に集中していた。


ドサッ。重そうな荷物を置く音。すぐ近くで聞こえ、びっくり。それで、うしろを振り向いたら……。

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