トラック3 カノさんのふわふわ梵天(特製)前編

時と場所 午前中/現実世界ではない和室の中


()内 ト書き

//SE SEの指示


「はい、耳かき終了~」

(カノ、伸びをしている)

「耳かきって、梵天っていうふわふわで仕上げをするんだよね」

「というわけで、仕上げ……」

「……あれ、嘘」

(カノ、耳かき棒の先を見つめる)

(視線の先には、梵天のついていない耳かき棒)

(主人公、呆然としている。「梵天、ついてないですね……」)

「……ごめん、また私のうっかりが出ちゃったみたい」

「うーん、ないものはしょうがない」

「だから、こうしよう……よいしょっと」

(カノ、自分の尻尾の毛を何本かむしり始める)

//SE 尻尾の毛をむしる音

(主人公、驚く。「な、何をしてるんですか!?」)


「この通り、尻尾の毛をむしってるんだよ」

「その、梵天の代わりになるかな~って」

(主人公、心配そうに見つめている。「い、痛くないんですか?」)

「別に~。痛くはないよ」

「私って結構、痛みには鈍感なんだよね~」

「今抜いたのを、こうして……っと」

(カノ、抜いた毛の束を手で転がし、まるめている)

//SE ふわふわの毛をいじる音

「うん、できた。即席梵天~」

「ほら見て~、かなーり梵天っぽくなったでしょ?」

(主人公、再び呆然としている。「そ、そうですね……」)

「というわけで、普通の梵天じゃないけど」

「これで、少年のお耳をふわふわしちゃいま~す」

(カノ、主人公の片方の耳の梵天開始)


//SE 丸めた毛束で梵天をしている音

梵天のみのパート1、数分


(台詞入りパート1)

(カノ、梵天をしながら、主人公と話している)

「どうかな、少年。私特製尻尾の梵天の感触は?」

「ふわふわか~?」

(主人公、頷く。「そ、そうですね。想像以上にふわふわです……」)

「ふふふ、想像以上にふわふわか~」

「私の尻尾にこんな使い道があったとはね」

「我ながら驚きだよ」

(主人公、尋ねる。「引き出しを、使えば良かったじゃないですか?」)

「ん? 引き出しを使って、新しく耳かき棒を出せば良かったじゃないかって?」

「まあ、それでもいいんだけど……」

「あれ、使いすぎると疲れるんだよね~」

「神通力っていう、不思議な力を結構消費するの」

「だから、また使うのはちょっと面倒でさ」

「だったら、特製梵天作っちゃった方が楽ってわけだよ」

(主人公、小声で言う。「はあ、ずぼらだなあ……」)

「ん? 少年、今酷いこと言わなかった~?」

「なんか、『ずぼら』って単語が聞こえた気がするんだけど?」

(主人公、誤魔化す。「い、言ってませんよ、そんなこと……!」)

「そうかー。私の聞き間違いか~」

(にやにやしながら)「そうだよねー。優しい少年がそんなこと言うわけないよね~」

(台詞入りパート1、終わり)


//SE 丸めた毛束で梵天をしている音

梵天のみのパート2、数分


(台詞入りパート2)

(カノ、梵天をしながら、主人公の耳元に囁く)

(耳元で囁く)「ふわ、ふわっ。ふわ、ふわ~」

(主人公、どぎまぎしている。「そ、それ、なんですか……」)

「ん~、ふわふわってやつ?」

「ちょっと言ってみたくなったんだもん」

「あれ、どうしたの? カノさんに囁かれてドキドキしちゃった~?」

(再度、囁く)「ふわ、ふわ~」

(主人公、真っ赤になる)

「あはは、真っ赤になっちゃってもう~」

「本当に可愛いよね、少年は」

(主人公、言い返す。「や、やめてください、もう……」)

「は~い、少年の反応もっと見たいけどやめま~す」

(台詞入りパート2、終了)

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