トラック2 カノさんの耳かき(悪戯あり)前編

時と場所 午前中/現実世界ではない和室の中


()内 ト書き

//SE SEの指示


「ふふふ、今のどうだった?」

(主人公、頷く)

「そっか。喜んでもらえると私も嬉しいな」

「でも、まだあるからね」

(起き上がった主人公、尋ねる。「まだあるんですか? 時間が……」)

「時間のことは気にしないでいいよ。ここは現実世界と違うんだし」

「外、見てごらんよ。まだまだ明るいでしょ?」

(主人公、外の景色を見て呟く。「……そうですね」)

「ここでは時間がゆっくり流れるんだ」

「一日が終わるまでには、まだ時間があるから」

(主人公、再び横になる。「じゃあ、そうします」)

「そうそう、君はゆっくり寝転がっていなよ」

(風鈴が鳴る)

//SE 風鈴の音、数回


「お待たせ~」

(カノ、耳かきを取って戻ってくる)

//SE 畳の上に座る音

(右方からカノの声)

「マッサージの次は耳かきだよ。カリカリ~って」

「君のお耳を早速……あっ、でもちょっと待って」

「……ねえ、ずっと我慢していたんだけどさ。出しちゃっても良い?」

(主人公、呆然と答える。「はっ? 何をですか?」)

(淡々と)「だからさ、私が隠してたものだよ」

(ため息をついて)「でも、そろそろ限界というかさあ……」

「正直、出しちゃった方が楽なんだよね~」

(何かを察した主人公、真赤になる「えっ、ちょっと。ダメですよ!?」)

「え~、いいでしょ? 減るもんじゃあるまいし」

「ちょっとだけ大きいけどびっくりしないでね? ふふふっ……」

(主人公、真っ赤になって手で顔を隠す)

「それじゃ出しちゃうね~。……えいっ」

(カノ、頭から狐の両耳が飛び出す)

//SE 狐の両耳が飛び出す、ポンッという軽い音


「ふ~、こっちの方が気楽だわ」

「人間に変身するのって意外と疲れるんだよね~」

(主人公、恐る恐るカノの顔を見て言う。「……え、耳? 狐の……?」)

「そうだよ~。人間の耳を出す代わりに本当の耳、隠してたの」

「でも私、変身苦手だからさ~。耳は何とか隠せたんだけど」

「尻尾の方は隠せなくて。さっきみたいに君にバレちゃった」

「1000年以上生きてても、苦手なものは克服できないね~」

「でも、可愛いでしょ。お姉さんの本当のお耳。へへへっ」

(主人公、力が抜ける。「……あっ、はい。なんだ、そういうことか……」)

「ん、そういうことって何~? どういうこと~?」

(にやにやしながら)「あ~、わかっちゃったぞ」

(揶揄うように、右耳に囁く)「少年ったら、変なこと考えてたな?」

(揶揄うように、右耳に囁く)「いけないんだ~、ぷんぷん」

(主人公、必死で否定する。「ち、違います! 変なことなんて考えてません!」)

「へ~、本当か~?」

「あんまり揶揄うのも可哀そうだし、そういうことにしておいてあげよう」

「今度こそ、耳かきにしようね」

「もちろん、私の膝枕なんだけど」

「左右のどっちか向いて、ごろーんってしてみて」

(主人公、再びカノの膝の上に、横向きに頭を載せる)

//SE 膝の上に頭を載せる音

「うんうん、大変よろしい」

「始めるけど、危ないから動かないでよ~。ガリってなっても知らないぞ~」

(カノ、耳かき開始)

(左右どちらからでも可)


//SE かき棒で耳かきをしている音

耳かきのみのパート1、数分


(台詞入りパート1)

(カノ、耳かきをしながら主人公と話している)

「……カリカリ、カリカリ」

「どう、少年。私の耳かきの腕前は」

(主人公、答える。「すごく、いいです」)

「そうかそうか、すごく良いか」

「褒められると、我ながら照れるな~」

「耳かきが上手な神様なんて最強だね。ふっふっふ……」

(台詞入りパート1、終わり)


//SE かき棒で耳かきをしている音

耳かきのみのパート2、数分


(台詞入りパート2)

(主人公、語る。「こんな時間にゴロゴロしてると、罪悪感あるなあ」)

「えー、こんな時間にゴロゴロしてると罪悪感あるって?」

(主人公、答える。「いつもは仕事してる時間ですからね」)

「なるほどねー。いつもはこの時間、働いてる時間なのか」

「毎日仕事をしている人間は、そういう風に考えるんだね」

(いたわるように)「大変だねえ、少年も」

「いつもここでダラダラしてる私は、君のこと尊敬しちゃうよ」

(耳元で甘く囁く)「よしよし、君は偉いぞ。少年」

(主人公、照れる)

「ふふふ、真っ赤になっちゃって……」

「可愛いから、もう少しカリカリしちゃおうかな~」

(台詞入りパート2、終わり)


//SE かき棒で耳かきをしている音

耳かきのみのパート3、数分


「うん、少年の片耳、大分綺麗になったぞ」

「……おっ?」

(主人公、うとうとしている)

(声をひそめて)「……おやおや、おねむの時間か~」

(声をひそめて)「ちょっと悪戯しちゃおっかな?」

(カノ、耳かきをしていた耳に向かって息を吹きかける)

//SE ゆっくりとした耳ふー、一回


(主人公、驚きと共に起きる。「うわっ!?」)

「ふふふっ、効いたか~」

「おはよう、少年」

(主人公、むっとする。「もう、やめてくださいよ……」)

「いやー、ごめんごめん」

「狐だからさー、人を驚かすの大好きなんだ~」

「もう片方の耳もカリカリするから、許して? ダメ?」

(主人公、渋々頷く。「しょうがないですね……」)

「よしよし、いいお返事だ」

「ということで、今度は反対の方向いてごろーんとしてごらん」

(主人公、寝返りを打つ)

//SE 寝返りを打つ音

「はい、よくできました」

「始めま~す。じっとしてるんだぞ~」

(カノ、反対の方の耳かき開始)

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