でもそれはもっと(五)

 夕暮時。ふと正気に戻り、部屋をながめると、ゴミが散乱していた。きれい好きなぼくには我慢できないはずの光景だったが、ちっとも気にならなかった。その感覚がふしぎといえばふしぎであった。しかし、そんな疑問は水槽を見ると消えてしまい、カニを相手に晩酌をつづけた。

 すると、カニが悲しいことを口にした。

「残念なお知らせよ。私、もう死ぬわ。寿命が近いの」

 その言葉にぼくが慌てて「本当かい?」とたずねると「本当よ。カニの寿命はけっこう短い」とカニは言った。

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