ハーフハーフ

「はぁ⁉大阪なんで、なんで?」


「とりま、ファミレスで飯食ってテンション上げてかない」


「おいこら、誘拐犯」


なぜ俺が大阪にいるのかを理解できず困惑をしていると

深山さんが外食を提案してきた。

逃げるリスクとか考えないの?


「え、なに星凪ちゃんKY空気が読めない?」


「貴方、誘拐犯、俺、逃げるよ?

逃がしたら深山さん、上司に怒られるでしょ」


誘拐犯である深山さん、は唐突にファミレスに行くことを提案する

誘拐犯にあるまじき、行動に驚きツコッミを入れてしまう。


「やだー、意外と星凪ちゃん優しい!おっぱい揉む?」


「ブフォー!」


「うわ、汚なぁー!」


またも突拍子の無い発言に口に含んだお茶を盛大に噴き出す。


こいつバカなのか外側は紛れも無い美少女だが、

こっちは中身はオッサン手前だぞ、


貞操感バグってんのかこの女、最高かよ!。

この体じゃなければだけど。


「ゲホ!ゴホ!、お前何も知らんの、てか聞いてないの!」


「星ちゃん、虚仮が剥がれてんじゃん、そっちが素?」


「素だけど!、それより俺の中身知らないの⁉」


「え!、星ちゃんまだ隠しごとあんの?

マジもんの秘密が多い女的な?、してその正体は⁉」


俺の中身がオッサンなのをしらないのか、

彼女はテンションが上がり俺が何者かと、問いかける。


「ぉ...で」


「声、小っちゃい」


「いやだから...その」


「オッパイ揉むぞ」


「オレ、男!で、オッサン!」


言った言ってしまった。

ここから先、俺は彼女からゴミを見る目が注がれることを

覚悟した後、無意識に強く閉じた目を開ける。


「え、知ってるけど?」


「マジ?」


「マジ、てかうちも元男だし」


「いや常識て....今なんて?」


「いやだから、あーし男だし」


その言葉を聞いて、俺の思考はブチりと音を立て途切れる


えまって、俺って今まで女に、

ドキドキしてたと見せかけて、俺はウホッ、いい男してた?

え、あの容姿で男?


名前もハーフで下もハーフ?なの?


「おーい、星ちゃん?」


つまりこいつは男?、しかし上はどっからどう見ても女

だけど下には、ブツが付いてる。

つまり豊胸?、おカマ?、ニューハーフ?

いやそんなことより、なんでナチス?っぽいのが俺を拉致った?。

いやそもそも、MP40を持ってるからナチスが 早計なのか?


「星ちゃーん、たこ焼き買ってくるから、留守番よろしくねー」


てかなぜにヨーロッパ行かないの?

陸続きじゃん、入国難易度的にそっちの方が簡単じゃない?

なんで日本?


「えい!」


「イデデ!、ちょッバカ!、

ガワは乙女の乳首になんちゅうことを!」


このイカレトランジェンダーギャルは俺の乳首を

つまみやがった、突然の刺激に驚き、摘まんでる手を叩く。


「ずっと固まってたから、たこ焼き買ってきたよ」


「なあ、お前はち●●残っているのか?」


「おい、ガワは乙女」


そうだ俺は体を取り戻すために来たんだ、

今まで手がかりゼロだったのが、

手がかりの方から、来てくれたのだから

むしろ渡り船と言えるじゃないか。


「あ、ごめん、今俺、ち●●探してて」


「男をち●●呼びは控えめに言ってもヤバいわよ」


「あ、いや他人ち●●じゃなくて、俺のち●●を探してる」


「乳首摘まんで、頭おかしくなっちゃった?」


「違うんだ、俺はち...体を探しているんだ」


冷めきった、たこ焼きを箸でつつき、再起動した頭で

なんとか話を進める。


「あーすまん、それがなんであーしのち●●の有無に

関係あるわけ?」


「え、おカマじゃ」


「いや普通に身体は女だから。」


いわく、ある日、バイト中に飲み物を飲んだら

女になっていたそうだ。


「変な女子高生いませんでしたか、

特徴としてはパイ乙デカいぐらいですけど」


「あー、特徴が少なすぎてわからん」


深山はさっぱりわからんと言った感じで

首を横に振る。


「つーか、星ちゃんはどうして、女にチェンジしたわけ」


「あー、それが...まって、

そもそもなんで俺が男だって知っているんですか?」


そこで俺は口を開いて固まる

思えば俺がカミングアウトした時点で知ってるって

普通、ただ拉致して、引き渡しをするだけの奴に、

そんな詳細を下っ端に教える必要はあるのか?。


途端に彼女がどこか得体の知れない、何かに思えた。


「あー、なんか偉い人が喋ってたから」


「喋ってた?」


「なんか、対象の男が女になったとか、

んで、アンタのカミングアウトで分かったって感じ」


なんとも無さげに答える深山さんにどこか

違和感を拭うことはできなかった。

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