俺はノーマルだ。断じてレズでも無いしホモでも無い

「固ってぇーベット」


目が覚めると畳とは違う固さのベットの上で目が覚める。

起き上がり、周囲を見回る。


フローリングの床に白い壁、周りにはテーブルとイスと置かれた

普通の部屋に見えた


「俺よりいい部屋に住んでやがる」


思わず口に出す。自分の和式便所、薄暗い賃貸と比べると、

あまりに快適すぎる空間に、胸の奥が少しだけ沈む。

誰かの部屋に勝手に上がり込んでいるような、

罪悪感が波のように押し寄せる。


「て!、俺はナチに拉致られた後、いで」


首筋の鈍い痛みに眉をひそめつつ、思い出す。

ナチス擬きに捕まったこと。

慌てて起き上がろうとするが、体にまとわりつく違和感が、

動きを鈍らせる。


「あ、痴漢されてた、子じゃん」


「え、あ、なんで?」


ガチャリと部屋の扉が開くといつぞやのギャルが現れた。

ギャルも以外な人物との再会に驚いた顔をする。


「あーとりあえず、名のっとくは。

あーしは深山(みやま)エンリカ」


「あ、風見(かざみ)コウと言います。

今は風見星凪(かざみ。せいか)と名乗っています」


深山さんの自己紹介に、こちらも自己紹介をする


「もしかして、ここナチスのアレてきなアレですか?」


「あ~うん、だいたい、たぶん、あっている」


謎のギャルこと、深山エンリカさんは

気まずそうに、目をそらして肯定する。


「えーと俺この後ガス室、的なのだったりします」


「いやそれ言ったら、現場、バンでしょ」


人差し指をまっすぐ伸ばし銃に見立て

撃つふりをする。

寝起きのテンションとナチス?に捕まったことに

ヤケクソになって質問をする。


「あ、痴漢の時は助けてくれて、ありがとうございます。」


「どういたしまして、ちゃんと女性専用の方にのった?」


「さすがに、あんな目にあったら乗りますよ」


「‥…」


「……」


互いに無言になりしばらくの間、沈黙が続く。

聞きたいことはたくさんある。

ここはどこなのか、なんで深山さんはナチスの残党にいるのか

私はこれからどうなるのか、聞きたいとは山のようにあるが

いまだに口を開くことができなかった。


「あ、コレ着替え、あーしのお古だけど。」


「あ、えと、その、ありが....なにこれ?」


渡された紙袋の中には深山さんの古着が入っていたが

中身を開くとホットパンツとドクロのシャツにドクロパーカー

あまりにも個性的なスタイルに顔を引きつらせる。


「な、なんなんですかコレ」


「あー、うん。似合うのを選んだ的な?」


「い、いや、ドクロって」


「まー、細かいこと気にしなくてもいいじゃない

似合ってるし」


「に、似合って」


どういったわけかその言葉に反応してしまう私がいることに

困惑しながらもそのまま受け取ってしまう。


「あ~その着替える前に、シャワー浴びときな

あんた2日は寝てたから」


「へ?」


深山さんの言葉に無意識に自分の体を嗅ぎ、

自身の体臭がモワリと臭い、自身の汗臭さに

顔から火を噴き出すように一気に熱くなった。


「て!、なんで俺、普通にシャワー借りて

着替えているんだ!」


異性の部屋で、異性の服を着る。しかも、

自分は中身が男で外見は女。

頭では「ただ借りてるだけ」と理解しているのに、

一度気づいてしまえば心はどこかドキドキしてしまう。

自分の体に触れると、胸の感触や肌の柔らかさが意識に上り、

どう反応していいのか分からない。これは


「てか普通になんで下着も用意されて...まさか!」


見られた。その可能性を考えた瞬間、

鏡に映る俺の顔は目に見えて赤くなる。


「いやいや!、俺は同性愛じゃ..いや中身は男だからいいのか?」


あたふたとしながらも、

髪を拭きシャワー室から出たのだった。


「シャワー貸してくださり、あ、ありがとうござます」


「どうしたの急にかしこまちゃって?」


「な、なんでもない」


シャワーを浴び寝ぼけた、思考は鮮明になり

自身の置かれた、現状を考える。


美桜との話が正しければ、ナチスの連中は俺の体が目的のはず

なのに俺を拉致ったのか、理由は謎だ


「えーと、もしかしてここって、

深山さんのお家だったりします?」


「あー、だいたいそんなとこ、

あ、ちょっい動かないで」


「ちょわ⁉」


俺の質問にうやむやな答えを出す。

家かどうかをうやむやにする当たり、拠点一部なのだろうかと考える。

どうにかしてここ何処で向こうの目的を聞き出そう。


そんなことを考えてる深山さんがズイっと距離を詰める

深山さん顔は間近に来ることでふわりとバニラの香りが

鼻孔をくすぐり、ラメの入ったファンデーションが

照明に照らされ深山さんの容姿を引き立てる。


「あー、やっぱり眉いじってないのか…うん、どうかした?」


「ち、近い」


こちらの顔を覗き込もうとするのを反射的に逸らす。

視線を下に落とせば、

重力に従い垂れるTシャツの首元の隙間から

見える豊満なそれに視線が向く


「わーお、星ちゃんたら、おませさんで」


「ちちちち、ちが」


自身の体を抱き寄せ、胸を寄せて上げる

谷間の深さを強調する。


ボン!とい効果音が付きそうなくらいに

一気に顔が熱くなる。


「あのーそ、それで深山さん、

俺ってなんで拉致られたんですか」


「えーそれ拉致ったやつに聞いちゃう?」


「そうは、言われても何も話すこと無いですし」


「まあ、話すけど」


「話していいんですか、それ?」


「でも、気になるでしょ?」


「気になります」


深山は意味ありげに言うと、あっさりと答える


「ゆーて、あーしは下っ端だけど」


「あーしらは、アンタを拉致ってもっと偉いのに、

あんたの身柄を渡すてきな?」


ほんとに下っ端なのかあまり情報は無く、

彼女はあっさりと話が終わる。


「あのー深山さん、そういえばここ何処なんですか?」


「大阪」


「」


俺はその言葉を聞いて固まった。


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