第18話:無効



「最上さんと神風さんの車に乗れば良かったんじゃないですか?」

 バイクを運転するイッセイは、自分の後ろに乗っているリリに話しかけた。



「良いのよ!!話しがあったから!」

「話?俺にですか?」

「そうよっ!!」



 マスクをつけて走行しているが、一応会話は出来る。もちろん、大きい声を出すことにはなるが。



「何か気になることが?」

「あのデカブツよ!結局、あれ本当に機械なの?!全部機械なの?!」

「うーん・・・機械といえば機械です。でも・・・ちょっとリリさんにコレを言うのは知っていたとしても気が進まないんですけど・・・」

「構わないわ」

「・・・操縦席にいた人間が取り込まれた形跡があるって話しです。つまり、『機械』って人間を取り込む事が難しいじゃないですか?だから、なにかしら機械以外の部分が取り付けられているのは確かなんだろうなっていう憶測です」

「本当気持ち悪い話しね!」

「・・・だから言いたく無かったのに」




 イッセイの考えは、操縦席にいた人間が、何かしらの方法なのかなんなのかで機械が動くための【燃料】にされたと言うこと。キキは言った「取り込まれた形跡がある」と。しかし、機械の文明の度合いも桁外れに違いそうだし、そもそもこちらには魔法もない。あのデカブツが今後何をしでかすか見当がつかないのである。

 もし、あの操縦席自体に仕掛けがあって、生身の人間を取り込む・・と言うより最早”食べる”ような事であったとしたらーーーそう、考えを巡らせながら話していたら




「わからない素材もあったって言うし、機械が直に人間を取り込んだって言うよりかは、、機械が取り込んだ可能性だって考えられるわけね。ほら、燃料だって言うなら液体にされたとか」


 突然リリが言った。


「・・・そうかっ!!!」

「何よっ?!」

「その可能性が高いです!もちろん断言はできませんが!!」

 イッセイが突然大きな声を出したため、後ろにいるリリがビクッと驚き、イッセイの服をより強く掴んだ。驚いて体制を崩してバイクから落とされたら溜まったもんじゃないからである。



「そうか!”取り込まれた形跡”って言うのに囚われてた・・・!あくまで”取り込んだ”だけであって、人間の状態から機械が取り込めるわけがないんだ!ギリギリ魔法が効く範囲内か、もしくはそういう魔法をプログラムされてあったかだ!!それで人間が、機械に取り込まれたんだ!」

「・・・なんか嬉しそうで良かったわ」

 とても楽しそうに、分析を始めたイッセイにリリが少し呆れた声のトーンで言った。発明家の一部が騒ぎ始めてしまったとリリは諦めた。



「流石、異世界での生活を経験をしてるリリさんは発想が違いますね!この世界のことを大体網羅したら、今度は俺にあちらの世界の事を教えて下さいねっ!!楽しみにしてますから!」

「・・・えっ?!えぇ・・・良いけど」


 今まであまりイッセイにこのような歓迎をされた事の無かったリリは照れた。後ろで顔が見えなくて良かったと心底思った。



「って事は・・・未知の素材が使われてはいるだろうけれど、やはり機械は機械って事よね?」

「その方向で考えてはいます。・・・それが聞きたかった事ですか?」

「えぇ、だってあの見た目で”機械ではない”って言われたら気味が悪いもの!」

「俺は何か尋問でもされるのかと思ってました」

「される心当たりがある人間が言うセリフね。何をしでかしたのよ」



 そんな呑気な会話をしている時だった。




「あれ?何か道が走りづらい・・・?リリさん、しっかり捕まって!!」


 そもそも重機や公用車以外が”外”を走ることは少ない。道は対して舗装されていないから走りづらいのは当然なのだが、それでもハンドルが妙に安定しないことにイッセイは疑問を感じた。


「・・・?ねぇ、イッセイ?何かおかしくない?」

 リリも何か違和感に気づく。そして、端末が鳴った。おじいちゃんだ。



『おい!!イッセイ!!地震じゃ!!地震が起きとる!!』



 グラッーーーグラッーーー・・・・・ぐわんっ



「一旦停車する!!・・・地震・・?!しかも大きいっ!!」

「コレが地震なの?!こんなに揺れるの?!地震って?!」

「いえ!こんなに大きいのは久々で・・・まずいっ!!!じいちゃん!!キキ!!ココ!!デカブツから離れてっ!!!」




『なんで?』

『揺れてるだけデス!』

『ぺぇぇええ?離れろったってそんーーー』


 その瞬間、





 キュィィイイイーーーーーーーーー・・・・



 ・・・・ヴンッーーーー!!




 デカブツの目が赤く光りだした。







『何じゃとぉぉおおーーーーー!!!!!』


 そしてそのあと目の色が緑色に変わった。

 イッセイはすぐに小型の磁場妨害機に手をかけた。


『イッセイ!動き出したわよっ?!』

『突然デス!!』

「今魔法を使えるようにする!!さっきと同じ魔法を使えるか?!」

『わからないけどやってみる!!』



 発生させる磁場の種類をすぐに変えられるように簡易設定をしたものの、やはり瞬時には行かない。あのまま暴れたら危険だ。工場まであと数分だったが動いてしまったものは仕方ない。



「ここで魔法切れっ?!」

 リリがイッセイの服を握りしめながら言った。

「魔法切れといえばそうですが・・・地震の影響で磁場が乱れたんです!!一瞬の隙が出来てしまったんです・・・!!」

「何よそれーーーーー?!そんな一瞬で相手の遠隔魔法が効いちゃうわけ?!」

「キキっ!!!魔法が使えるはずだ!!試してみてくれ!!」


『オッケー!!!』


 拘束バンドがデカブツについているとは言え、本調子になれば一瞬で千切られてしまうかもしれない。おじいちゃんは変わらずぴょんきちでデカブツを抑え、キキとココが飛び降りるようにしてデカブツから距離をとり向き合った。





『ーーーfix!!(固定)・・・



 ・・・止ま』





 バチンッッーーーーーー!!!!!





『ウソっっ?!?!』




 キキの魔法が跳ね返された。



『もうさっきの魔法を学習されちゃったみたいなんですけど!!イッセイどうしよう?!魔法で攻撃するにしても跳ね返されたらみんながとばっちり受けるかもしれない!!』



 デカブツはぴょんきちの抑えに逆らい動こうとしている。ガガガ・・・ーーーっと工事現場で聞くような重く鉄鋼がぶつかったり擦れたりする音だ。もうデカブツは遠隔操作ではなく自動運転のようなものに切り替わっている。磁場妨害機を使わなければ魔法で遠隔操作を・・・磁場妨害機を使わなければ個体の内部のプログラムによる自動運転をするようにでもなっているのだろう。イッセイはそう考えた。では、遠隔操作と個体の自動運転ではどちらがマシなのだろうか。



「とりあえず距離取ることが一番だんべっ!!」

 そう言って、いつの間にかぴょんきちから降りてイッセイのバイクの一番後ろに乗ってきたおじいちゃん。


「ちょっ!!三人乗りなんて狭いでしょ?!」

「この事態でそんなこと言ってられるかいっ!」

「じゃぁおじいちゃんが運転してその後ろがイッセイ!イッセイの後ろが私!!」

「ワシはぴょんきちの操縦があるんじゃ!!イッセイ!下がって距離を取れ!!」

「・・・了解、キキ、ココ、気をつけてっ・・!」


『オッケー!』

『頑張るデスゥッ!!』



 一旦デカブツから距離をとり、来た道を戻るとすぐに後方をつけていた最上達もやってきた。



「動き出したのか・・・!」

 最上が窓から顔を出して前方を見た。

「パパ!さっきの地震の影響らしいわ!」

「地震が・・・?」

「えぇええぇいっ!!理由は今はどうでも良い!!とりあえずこの状態をどう収めるかじゃ!」


 前方で動こうとしている音が聞こえ、神風も心配になり案を出す。

「先ほどと同じ手はもう使えないのですか?!」

「使えん!学習されたみたいで娘の魔法は弾かれたわいっ!!」

「何か他に良い手立ては・・・」

「とりあえずもっと距離取るぞ!そうせんと娘も魔法を使いずらい!」



 キキとココを除く一行は、さらに来た道を戻る。



「じいちゃん!デカブツとぴょんきちの力の差は?!やっぱりぴょんきちの力で工場まで運ぶのは厳しい?!」

「力くらべっちゅーか、拘束が今の所出来とるから、後は重くなきゃぴょんきちでも運べそうなんじゃが、結局なんの魔法が使えるのかわからんからなぁ?!それにかけた魔法は学習するんじゃろっ?!二度目はない一発勝負とあっちゃなぁ?!」


 攻撃魔法ではない『時間を止める』と言う魔法も、もう学習されて対処されてしまう以上、例えデカブツのコアの時間を止めようがもう効かないのである。

 



「・・・あれ?じいちゃん今”重くなきゃ”って言った?」

「言った。だって軽きゃ何とでもなるだんべ?力士だって軽きゃイッセイだってぶん投げられるだろい?」

「魔法で軽くすれば良いんだ!!キキッ!!」


『聞こえたわ!!軽くしてやるんだからぁーーーーー!!』

「娘!軽くし過ぎるなよ!!重量感知出来ないくらいになったらそれはそれで面倒じゃから!」


『注文多い!!』


 そして数秒して、キキからの応答。


『イッセイ!!多分魔法効いてる!今のうちよ!!!』




 優勢に持ち込めそうな、復活の兆しを感じた。



「よし!こっからは大詰めじゃぁ!一層きを引き締めてくぞぃ!!ワシとイッセイはデカブツの近くに行くかんなっ!」

 仕切り直しとおじいちゃんが声をかけて、次いでイッセイもリリに話しかけた。

「リリさん、最上さんの車に乗り換えてください」

 



「嫌よ!!私も近くに行くわ!」



 しかし返ってきた言葉は話しの進みを妨げる回答だった。

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