第2話 悪鬼羅刹があらわれた!!

「やれやれ、、、とんだ暴れん坊じゃな。神聖な巫女服を燃やしてしまうとは、、、、、、まっ、」

わしは懐から服を取り出す。

「代わりならいくらでもあるんじゃがな。あんなガキに神を手玉に取れるくらい、世の中甘くないんじゃよ。」

わしは彼奴きゃつの考えの甘さを嘲謔ちょうぎゃくする。

「まあそこが彼奴の可愛いところでもあるんじゃが、、、」

舌を使ってわざとらしく口周りを舐めずる。

「どうせ近々思い知ることじゃて、そう焦るでないわい。」

神の賜り物を粗末にしたのじゃ。それ相応の罰があたるじゃろう。

「ふぁぁ、、、全く、、せっかく三月みつきほどグッスリ寝ていたと言うのに、、、、、、さて二度寝と洒落込むとするかのう。」

わしは大きく口を開け、元いた本殿の方へと戻っていった。


神奈神社。此の社の上空にてなにやら怪訝な影が走る。

その影は突如、その場の雲に絡みつき、やがて黒より黎い雲へと姿形を変え、渦を巻き始める。




***




「うーん、、、、、、」

______おにいちゃん!!

「高麗音〜、、、、、、」

______おにいちゃんやめて〜!

「えへえへ高麗音は可愛いなぁ、、、、、、」

______おにいちゃん、、、

「高麗音、、、、、、」

______助けておにいちゃん!!

「高麗音、、、、、、」

______やめて、、、おにいちゃん。

「高麗音、、、、、、」

______おにい、、ちゃ、、、、、、

「高麗音、、、!!」

______18<05:572<・:〒:20¥1〆2:2・々15〒=1→51々5:2・%1〒15〆¥4・22^|2・2+・25<→+→¥〒・2^→3〆|11255¥・<1・$々21々・55÷5…1×1÷+2々18¥・^1々→+・112・241^〒→=1^→1+→+1¥58→<・2<28¥・¥51・・

「高麗音ェェーーーーーーーー!!!!!!!!、、、はぁ、、はぁ、、、夢か、、、?」

まさか高麗音の悪夢を見るとは、、、、、、ちくしょう。まさか、、弟の悪夢を見るなんて、、、兄貴失格だ、、!!

ほっぺをつねって本当に現実か確かめてみる。

「痛、、、現実か、、、よかった。」

高麗音の死。あれが現実だったら、、、、、、

大好きな弟の死。それが現実だったら?想像しただけで動悸と吐き気が止まらない。

俺はふと現在の時刻が気になり、時計の文字盤を見やる。

現在、午前2時。

「ったく、、、なんでこんな時間に起きなきゃ、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、」

丑三つ時という不吉な時間帯に起きてしまい、気分は最悪。もう一回寝て気分をリフレッシュしてやりたい気分だ。

「、、、、、、水でも飲みに行こうか。」

こんな気分で再度寝れるわけもなく、俺は喉が渇いたと、何かと理由をつけてあの悪夢を忘れようとした。

そうと決まればいざ行動。俺は水を飲むため、階段を降りて階下へと向かった。

深夜ということもあり、みんな寝ているせいで気味が悪いほどに物静かだった。

気持ちが悪いので騒いで誤魔化したかったが、寝ているのを邪魔するのも悪いと思い、やめた。

そうこうしているうちに目的地のキッチンに到着した。

俺はコップを食器棚から取り出して、その中に水を入れる。

そして、いざ飲もうとした時、唇が水に触れた時、ほんの、ほんの一瞬、唇が痺れる感覚に襲われた。

「がっ、、、!!」

痛い。静電気でも食らったような痛みだ。

「、、、、、、?」

あれは一体、、、?

俺は試しにコップの中に入った水に人差し指の先をつける。

ビリッッ、、、、、!

「痛っ、、、、、!!」

やはり間違いない。この痛みは静電気だ。

こんな状況もあってか俺はコップの中の水を全てシンクに捨てる。

その時、勢いよく叩きつけすぎたか、水滴のいくらかが俺の顔にかかる。

瞬間、またまた走る痺れる痛み。

「ッッ!!」

一体なんなのだ?この痛みは、、、、、

こんな時間帯であることも相まってか、俺はそそくさと自室へと戻った。


「なんなんだ?さっきから、、、、、、」

俺は決していた部屋の明かりをつける。

部屋が明るくなる。

その時、俺の足元に映る影。それが心なしか、俺をほくそ笑むように見えた。こんな状況に戸惑う俺の姿を嘲っているように見えた。

「なんだ?この影、、、、、」

気になった俺は触れもしない影に触れようとした。

その刹那、影から何者かの手が伸びたではないか!!

気味悪くなった俺は即座にその手を振り払い、外へとかけだした。

もう騒がしいとかどうでもいい俺は少しでもあの影から離れたかった。

しかし、相手は自身の影。どんなに走っても離れられるわけはなかった。

とうとう、俺は家の外へ飛び出し、気づけば拝殿近くまで来ていた。

「くそっ、、、くそっ、、、、、、」

どんだけ走っても走ってもあの影はそんな俺の努力を嘲笑しながら追いかけてくる。

「ダメだ、、、、、、もう!!」

その瞬間、拝殿近くまで来た瞬間。どこからか、おふだのようなものが飛んできた。

それを影は手を伸ばしてキャッチ。そのまま前方に投げ返す。

「やはりダメか、、、巫女でないと、、、、、、」

「そ、その声は、、、、、、!!昼間の、、、、、、!!えぇと、、、」

「降雷之大神。面倒じゃから、ライでよい。」

俺の目の前には昼間見たあの神が。

「どうじゃ?これでわかったじゃろ?神を嘲謔する罪深さ、巫女服を燃やした愚かさが。」

「一体全体どういうこと?」

「何もお前が女っぽいってだけであれを着せたわけじゃない。あれは邪なる存在。例えるならそこの影のような奴、悪鬼あっきからの攻撃を防ぐ戦闘服のようなものじゃったんじゃ。」

「んなご都合主義的な巫女服あんのかよ!?」

「ああ、ある。」

ライはキッパリと言い切った。

「お前の父も着ていたからのう。それはもう可愛くて可愛くて、、、」

「嘘だろ、、、?」

実の父の意外な一面を知りたくもないのに無理やり教えられ、俺は父を信じられなくなった。

「まあ、そんなことより、お主の背後にいる奴を先に始末せんとな。」

そう言うと、ライは両腕をクロスさせる。そして、静かに気合いの乗った声を吐き出す。

瞬間、体高が低くなっていく。いや、正確には横に伸びていっているんだ。

静かな夜空に雷が迸る。

静寂が徐々に轟音に支配されていく。

「ハァッッッッッッッッ!!!!!!!」

ライの気合いの雄叫びに雷が呼応し、ライに稲妻が迸る。

「ライ!!」

大地を抉る稲妻に、周辺から焦げたような異臭。焼けたことによる白煙も上がっている。

やがて白煙も晴れてきた時、そこには、、、

まるで雷を帯びているように青白い毛並みに二又に分かれた尻尾。鋭利な牙に、犬のように逆立つ耳。夜闇に吠える姿はまさに、、、

「犬、、、、、、」

「犬ではない!!雷獣じゃ!!!!!」

轟く咆哮が、俺を襲う。

「ぐっ、、、、、、」

「ほう、どうやらこの程度では離れてくれんらしい、、、稲荷。気合いをいれるんじゃよ?」

「え?」

ウォォォォォォォォォォォォン!!!!!!!

瞬間、先ほどとはまるで全てが違う咆哮が俺を襲う。その風圧で吹っ飛びそうなほどの威力。

だが、それが功を奏したのか、俺の影をその威力に屈し、やがて俺の影から離れ、家の方へ向かっていった。

「す、すげえ、、、」

「うむ。どうやら奴は逃げていったようじゃの。さてと、寝るとするか、、、」

ライの奴はいつのまに戻っていたのか、昼間と同じようなケモ耳を生やした幼女の姿になっていた。

こんなちんちくりんが先ほどの雷獣というのか?やはり神は理解できない。

「ちょっと待ってくれ。」

「、、、、、、」

俺の呼び止めに拝殿に戻ろうとしていたライの奴は何を言うでもなく、ただ無言で立ち止まった。

「力を貸してくれないか、、、?」

「、、、、、、それが神に頼む態度か?」

「、、、梅おにぎり、、、十個っでどうだ?」

「、、、、、、、、、貸してやる。」

へへっ、、、存外神もちょろいもんだぜ。

「今、俺の影に潜んでいた、、、悪鬼だっけか?そいつが家の中に入っていった。」

「ああ。そうじゃな。」

「親父や母さんならまだ大丈夫かもしれない、、、だが、高麗音は、、、俺の弟はまだ5さいだ。俺みたいに影に潜むだけじゃなくて、、、、その、、殺されでもしたら、、、、、、」

「、、、、、、お主のロリコン具合は、弟によるものなんじゃな。」

「とにかく!高麗音が危ない!!今すぐにでもいくぞ!!」

「やれやれ、、、梅むすびのために頑張るとするかの、、、」

俺はかくして、ライを梅おにぎりで買収。強力な仲間、今の所ある程度信頼できるパートナーにした。

しかし梅おにぎり十個で神を仲間にできるとは、、、本当にえびで鯛を釣ることができるのだな。

俺とライは俺の弟、高麗音を救うため、深夜2時、丑三つ時の我が家に討ち入った。




「すぅ、、、すぅ、、、、、、」

______高麗音、、、、、、

「ん?おにいちゃん?」

______高麗音、、、高麗音、、、

「おにいちゃん?どうしたの、、、、、、っっ!!!!!」

きゃあああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!!




俺とライは深夜の我が家へと入っていった。

まさか我が家が化け物のアジトと化すとは、、、人生16年。何が起こるかわからないものだな。「人間万事塞翁が馬」とはこのことか。

きゃあああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!!

『!?』

「何事じゃ!!?」

「こ、高麗音、、、、、高麗音の声だ!!」

「ま、待て!!」

俺はライの声も聞かず、ただ高麗音の元へと走っていった。


「こまね!!!!、、、?!」

「うっ、、、、、おに、ちゃ、、、、、、、、、、、、、」

俺は自慢の脚力に自身を任せ、音を置き去りにせんスピードで高麗音の絶叫が聞こえてきた場所、高麗音の部屋へと飛んでいった。

すふと、そこには、、、、、、

「こまね!!」

「あ、あっあっ、、、、、、」

高麗音はいた。確かにいた。

しかし、電流の十字架で壁に磔にされていた。

電流特有の電光で見えてしまった。高麗音が白目を剥き、痙攣しているのか体を大きく振るわせ、足元を見やれば尿だろうか、失禁までしている。

その光景に呆然と立ち尽くしていれば、ライが遅れて部屋に。

「こ、これは、、、、、、」

そのライの声と同時、高麗音の頬から血が吹き出た。

その血が俺と十字架の間にぽとりと落ちた。

ああ、むにむにもちもちの高麗音の頬、、、いつもつねっていた高麗音の頬、、、、、、

許せない、、、、、、、、、、、、、、、、、、

「ライ、、、」

「な、なんじゃ?」

「巫女服寄越せ。」

「巫女服はお主が、、、」

「いいから、梅おにぎり二十個に増やしてやるからさっさと寄越せ。」

そうライに言ってやれば、彼女は静かに懐から丁寧に折り畳まれた巫女服を取り出し、俺に渡す。

「サンキュー。」

「一応武器も、、、」

「いらねえ。あの悪鬼は俺の手で殺す。」

あいつは俺の逆鱗に触れた。悪鬼羅刹だろうが、たとえ神仏閻魔だろうが、親子供だろうと、、、

俺の宝物を壊す奴は、、、

許さない。全員、皆殺しだ。

俺は折り畳まれた巫女服を雑に広げ、そのまま落とし被せるように、着た。

「これで、ようやく決心がついたよ。」

男だから巫女服なんか恥ずかしい。そんなくだらねえ羞恥心はどこへやら。俺は今、目の前の高麗音を守る守護者であり、怪物を殺す、、、


だ、、、

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