RAIDEN!!

さかばん

第1話 その日は突然訪れた、、、

この話は、、、

信じられないかもしれないが、この話は、、、

俺が、、、俺が、、、

神と、、、、、、

「えっちする話じゃあああああああああ!!!!」

「ちゃうわ!!」

「なんじゃ?しないのか?えっち、、、」

「ダメだこいつ、、、」

「なんじゃ!神に向かってこいつとはこいつとは!!誰に口聞いとんのじゃ!!!!」

「おめえにだよこのちんちくりん。」

「かっ、、、、、き、貴様ぁぁぁ!!ちんちくりんとは、、、わしをコケにしおって、、、、、、、」

ぼふん!!

「うっふーん、、、これならどうじゃ?このお・姉・さ・んすたいるならわしのこと、、、」

「ババくせぇ。」

「辛辣ゥゥゥ!!」

失礼。この、さっきからアホなことしかしていないこの自称進ならぬ自称神はライ。俺、神奈かんな 稲荷いなり16歳男子のお供、相棒兼ペット兼乳母(本人が勝手に言っているだけ)的存在だ。

そんな俺たち二人だが、この古びた神社、、、リフォームでもなんでもすりゃいいボロっちい神社、神奈神社かんなじんじゃの巫女と祀られている神の関係なのだ。

「全く、巫女なんだから巫女は巫女らしく神に従わんかい。」

「死んでもやだね。」

「そこまで?!」

ここでみなさん思ったことだろう。先程自分で「16歳男子」と言っていただろう、それなのになぜ

その理由は、、、

「この一族に女が少ないんじゃ、、、じゃから代わりに限りなく女に近い、、、といってもほぼ女な男に巫女を任せているのじゃ。」

ということだ。

さて、ここいらで前置きもいいかな。てことで、、、、、、

『本編スタート!!!!』




***




夏の日差しが肌をちりぢりと焼くころ。

「ふぅ、、、大体こんな感じかな、、、」

俺、神奈 稲荷は自宅兼神社の境内清掃を終えようとしていた。

「神に使える者として、しっかり境内は掃除しとかないと、、、」

俺はなんてったって巫女ですから!!と、いっても俺、男なんですが。

「なんで男が巫女をしねえといけねえんだ。だろ?!!」

と、文句をブツクサブタクサ言っても願いを叶えてくれないのが神さんの悪いところ。なんにもこの一族、神奈一族は女が少ないんだと。それのせいで男に巫女をやらせるという矛盾生じまくりの選択をしたのが俺のひいひいひいひいおじいちゃんのころだというから困ったもんだ。全く、自分の一族のY染色体に恨みを募らせるばかりだ。

どうせなら俺を女にしてくれ。と、それなら今までこんな文句を言うこともなくせっせこ真摯に神事に勤めることができるというのに。

自分の生まれ、環境、肉体、運命を一時、本気で呪い、神にジャラセンあるだけぶちまけて神さんに直談判してやろうかとも思った。

けど、やめた。うち、そんな金持ちじゃねえし、なんならジャラセンでも札束でもなんでも求めてる方だから、神さんにあげるくらいなら自分のポケットマネーにしたほうがよっぽど有意義だ。

「さてと、文句もひとしきり言ったし、戻るか。」

しゃがんだ体勢でゴミを集めていたばかりに年不相応に腰を叩きながら俺は家の中に戻る。

「掃除終わったぞぉぉぉ!!」

俺が玄関にて一人喜びの雄叫びをあげていると、奥からドタドタ何やら誰かが走ってくるような足音が聞こえてくる。

「おにいちゃん、おつかれ!!」

「おう!疲れたぞ?高麗音〜!!」

この男の子の名前は神奈かんな 高麗音こまね。5さい。俺の弟で16の俺とは11歳も歳の離れた、現在可愛い盛りの天使ちゃんだ。いつも掃除やら高校とかで疲れた俺の心をめいっぱい癒してくれるそんなやつなんだ。

下手な犬猫よりも可愛くて俺はペットを飼う気なんざ到底ない。むしろ金が余計かかって生活は苦しくなるばかり。ただでさえ貧乏なのにこれ以上は流石に破産する。

「やめてよにいちゃん〜!!」

あまりの可愛さに彼のほっぺをつねつねしていると、高麗音は嫌がる。

しかし、それは口だけ。顔には破顔の笑みを浮かべながら俺の手につねられ続けている。

ふう、癒された〜、、、、、、

あらかた満足した俺は高麗音のほっぺをつねるのをやめ、自室へと戻っていった。


「ふう。今日も疲れた。」

俺は自室に着くなり、着ていた巫女服を脱ぎ、しっかりとハンガーにかける。

こうして見ていると本当に女用の巫女服。服なんだから当然だと思うが、こんな服を着ているのを友達や彼女に見られでもしてみろ。恥ずかしくて一生の黒歴史だよ。まあ俺に彼女なんていないけど。

「はぁ、、、ただでさえ辛い巫女の仕事なのに、格好のせいで余計に疲れる、、、、、、気苦労が耐えねえよ。」

こうなったら一回、本気で訴えてみっか。

神様とやらによ。

そう一念発起した俺、神奈 稲荷。そう決めたら即行動。俺は部屋から出、やや急ぎ足で階段を駆け下り、階下へと、拝殿へと向かった。


高校男子の脚力を舐めてもらっては困る。自室からここ拝殿まで約50m、6秒行かないレベルで到着。

「よし、、、、、、」

俺は着替えたズボンのポッケからいつの間に持ってきていた財布を取りだし、ジャラセンを探す。

「あった、、、!」

俺は財布からなけなしの十円玉を取りだし、握りしめ、賽銭箱に叩きつけるように入れた。

ガラガラガラガラ、、、、、、

二礼二拍手一礼。これはうちのマナーだ。

ある程度、所作を終えた俺は息を吸い込み、こう神に言い放った。

「巫女服恥ずかしいんだけど!!!?男に着させやがって!一生モンの黒歴史になったらどうするんだ?!馬鹿野郎!!!!」

言ってやったぜ。神の祟りがどうのこうの関係ねえ。言うこと言えたんだ悔いはないさ。

その声は数秒の内、空に残り続けた。

空に渦を作りながらやがて気流に飲まれ消えた。

その後、風がひゅうと、俺の頬を通り抜ける。

その風に俺の頬はうすら切り傷をつける。

拝殿両脇の杉の木の葉が風に吹かれ、鳴る。ざぁーざぁーと。

感じたこともないスピリチュアル的感情がこの光景を契機に堰を切ったように溢れ出してきた。

神というのは本当にいる。そう確信できた。納得できた。神の権威を。

「なんじゃ、騒がしいのう。」

吹いた風に紛れ、こんな声が微かに聞こえたんだ。語尾がジジババ臭え、古臭え、だがしかしその言葉の端々には確かな威圧感が感じられた。

「だ、誰だ!?」

誰しも予想外の領域から声が聞こえてきたらこのような反応をするだろう。

「おいおい、、叩き起こしといてそれはないじゃろ?」

「だから誰なんだよ?あんたは、、、、、、」

そう聞いてやるとため息をつく音が聞こえる。

いや、自然の気の向くままに吹いた風の音だったのかもしれない。

「わしがお前に巫女服を着せた鹿じゃよ。」

「、、、、、、なんだと?」

どうやらこの謎の声曰く、自身が俺にあの忌々しい巫女服を着せた張本人とのこと。

「て、てめえ、、、よくも、、、、、、」

「まあこのまま話すのもなんじゃから、、、」

俺の言葉を強引に押し切って謎の声が言葉を紡ぐ。

「うわっ、、、」

その次の刹那、、、

俺の視界を閃光が襲う。

閃光の次にとんでもない、俺の鼓膜を破らんほどの轟音が鳴り響く。

さらには、なにやらどこから来ているのか、焦げ臭い匂いも立ち込めてきた。

それら全てが収まったころ、、、

俺の目の前にはとても見目麗しい妖艶な女性が。

見た人100人に聞いたら100人が「美しい」と答えるような美女。

格好も江戸時代の花魁に近いスタイルの和装。これを好まない者は男色好きの肝がド太い将軍くらいだろうか。それでも軽々落としそうなほどの傾国の美を目の前の美女は孕んでいた。

「どうじゃ?驚いたか?」

「あ、、、あっ、、、」

「ふふふ、わしの美貌に声も出んか?」

「いや、、、すごく、寒そう、、、特に胸あたりが、冬とかどうしているんだろう、、、」

「あっ、、そう。」

正直、俺は美貌とかどうでも良かった。とにかくあの巫女服の魔の手から脱せるのなら、どうだってよかった。だから、俺は目の前の美女を見ても冷静でいられたのだろう。

どうやらそれは俺のムスコのほうも同じなようで。至って平静だった。1mmも動じていない。

「むぅ、お主なかなか肝が太いのぅ、、、なら、、、」

その言葉の後、またしても閃光が迸る。

「これならどうじゃ?」

すると、次に俺の前に現れたのは、、、齢数十はいっているであろう、年老いた老女。

「どうも、、、」

しかし、俺の反応は依然変わらずじまい。

「むぅ、、、」

またしても迸る閃光に俺は飽き飽きしていた。

てか、なんでこんな三文茶番を繰り広げているのか。

そうして、収まったころ。

「これならどうじゃ?」

俺の目の前にいた老女はたちまち若返り、俺よりも6歳は下であろう幼い少女に変貌を遂げた。

「、、、、、、ッッッ。」

「あっ!!ぴくついた!!お主、こういう趣味じゃったのか、、、、、、道理でお姉さんきゃらとかおばあちゃんになびかないわけじゃ、、、、、、」

く、悔しいが目の前の少女は俺と俺のムスコのタイプ、どストライクだった。つい、ムスコも一瞬、たじろぐように身じろいだ。

「なら、この姿で鼻⭐︎塩⭐︎塩。わしはここ、神奈神社の祭神。降雷之大神ふるいかずちのおおかみ。雷獣の神じゃ。」

「へぇ〜、、、」

「どうじゃ?これなら驚くじゃろうて、、、っておい!!鼻くそほじりながら聞くんじゃない!!」

「へぇ〜、、、」

「耳くそも!!」

「ふぅん、、、」

「目くそも!!」

「じゃあなんならいいの?」

「そもそもなんもほじるな!!」

「そもそも拝殿から出てきてる時点で神確定でしょ。そうじゃないならばっちし不法侵入で即刻お縄で豚箱行きだよ。」

「ぐぬぬ、、、わしを嘲謔ちょうぎゃくしおって、、、、、、」

「いや事実を述べたまでで、、、」

「わしは正論で殴ってくるやつが大っ嫌いなんじゃ!!こうなったらお主を祟って、、、、、、って、、、」

俺の手にはいつのまにか巫女服。そして、もう片方にはマッチ、、、

「お主何する気じゃ!?」

神の言うことなぞ無視無視。俺は巫女服を地面に叩きつけて無言のまま、火をつけたマッチをその上に落とした。

途端、火のつく巫女服。

「ああああああああああああああ!!!!!何するんじゃ!?お主!!」

途端、巫女服に近寄り火を消し始める神。

それを横目に俺は言葉を紡ぐ。

「早く答えろ。俺に何故を着させる?三行以内に答えろ。」

「今、そんな暇ないんじゃ!!ああ、、、燃える燃える、、、、、、」

いいから答えろ。消しながらでも答えろ。燃やすぞ?

「ひいいい!!答える答える!!!!」

彼女の美しい髪の上にマッチとどこから持ってきたのか、ライターオイルをちらつかせてやると、ビビったのか次第に言葉を紡ぎ始める。

「この一族は代々女が少なくて、

最近になって女が生まれなくなったから

仕方なく限り女に似ているお前に着させたのじゃ!!」

「、、、」

「どうじゃ?これで、、、、、、」

俺は燃える巫女服にライターオイルをぶちまけた。

途端、火の手は強くなり、巫女服を完全に灰と化させた。

「なんで!!なんでじゃ!!なんでなのじゃ!!?」

「俺、言ったよな?三行以内って。四行にしてどうすんの?」

俺はたとえ神でも仏でも閻魔だろうと、俺の道を邪魔する者は死んでもらってもいいと思ってる。罰あたり?知るか。俺の感情どうこうをよくわからんスピリチュアルが支配するのがとにかく気に食わないのだ。

「さて、、、寝るか。疲れたし、、、、、、」

「、、、、、、」

俺は灰となった巫女服と、祭神を置いて一人自室に戻った。

あいつは、俺が女に似ているから巫女服を着せたというが、人を見る目というものをよく鍛えたほうがいい。俺は、、、

巫女になる資格なんてない。外道なんだから。

俺の背から伸びる意味深長な影が悪魔のように笑う。


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