ゴミスキルだと追放された俺、実は最強スキル【無限模倣(インフィニット・コピー)】で世界最強の剣士に成り上がり、俺を捨てた騎士団と元婚約者、そして世界を根こそぎいただく

境界セン

第1話

「スキル【ゴミ】だと? ……は、ははっ、冗談だろ?」


乾いた笑いが、荘厳な謁見の間に虚しく響いた。

大理石の床に反射する自分の間抜けな顔が、やけに鮮明に見える。


「……静粛にしろ、見習い騎士レオン・アークライト」


玉座に座る白銀騎士団長アルフォンスが、冷徹な声で俺を黙らせる。

その鷹のような鋭い目が、獲物を値踏みするかのように俺を射抜いていた。


「団長、何かの間違いでは? こいつは、あの聖剣『アストライア』に選ばれた男ですよ?」


親友であるはずのカイン・アシュフォードが、信じられないというように声を上げる。

そうだ、カイン。言ってやれ。何かの間違いだって。


「鑑定盤に間違いはない。聖剣に選ばれたことと、授かるスキルの等級は別問題だ。そして、こやつに与えられたスキルは――【ゴミ】。最低最悪、前代未聞のハズレスキルだ」


周囲から、くすくすと嘲笑が漏れ始める。

貴族出身の騎士たちが、扇で口元を隠しながら囁き合っているのが見えた。


「平民出が聖剣に選ばれたなどと、やはりまぐれだったのよ」

「シルフィールド公爵家のアリア様も、とんだ男に捕まったものだわ」

「これで婚約も破棄でしょうね、お可哀想に」


やめろ。聞きたくない。


俺は助けを求めるように、隣に立つ婚約者、アリア・フォン・シルフィールドに視線を向けた。

銀色の髪、アメジストのような瞳。俺がずっと焦がれてきた、世界で一番美しい人。


「アリア……」


俺の名を呼ぶ、か細い声。

だが、その瞳にはいつもの優しい光はなく、代わりに得体の知れない冷たい光が宿っていた。


「レオン……ごめんなさい」

「え……?」

「あなたのような……スキル【ゴミ】の男と、シルフィールド家の私が婚約を続けるわけにはいかないわ。家の……いえ、私の名に傷がつくもの」


扇で顔を半分隠し、彼女はそう言った。

まるで汚物でも見るかのような、その眼差し。


「……何を、言ってるんだ? アリア。俺たちは、将来を誓い合った仲じゃ……」

「それはあなたが聖剣に選ばれたからですわ。まさか、スキルが【ゴミ】だなんて……期待させて、裏切って、なんてひどい方」


ひどいのは、どっちだ。

足元から地面が崩れ落ちていくような感覚。


「そういうことだ、レオン」


追い打ちをかけたのは、親友の声だった。

カインが、すっとアリアの肩を抱き寄せる。


「! カイン、お前……」

「アリア嬢は俺がもらう。お前のような『ゴミ』には、もとより不釣り合いだったんだ。平民は平民らしく、泥水を啜って生きていればよかったんだよ」


勝ち誇った笑み。

ずっと隠していた本性が、牙を剥く。


ああ、そうか。

最初から、俺だけが浮かれていたのか。

聖剣に選ばれただけで、こいつらと同じ土俵に上がれた気になっていた。

なんて、愚かで、惨めなんだろう。


「……もう、いいだろう」


アルフォンス団長の冷たい声が、俺の最後の希望を打ち砕いた。


「白銀騎士団は、王国の誇り。ゴミを置いておく場所ではない」

「……」

「レオン・アークライト。本日をもって、貴様を騎士団から除名する。装備は全て没収の上、即刻王都より立ち去れ!」


その宣告は、まるで死刑判決のように重く響いた。


「待ってくれ! 話を聞いてくれ!」


見習い用の粗末な鎧を剥ぎ取られながら、叫ぶ。

だが、もう誰も俺の声に耳を貸す者はいなかった。

衛兵に両腕を掴まれ、引きずられていく。


「アリア! カイン!」


最後に見たのは、寄り添いながら俺を見下す二人の姿と、満足げに頷く騎士団長の顔だった。

そして、謁見の間の重い扉が、無情にも閉ざされた。

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