※第1話を読んでのレビューです。
灰色に沈んだ森。その中で響く鐘の音から物語は始まる。冒頭から読者を包み込むのは、湿った空気と乾いた葉擦れの音。色彩を奪われた世界に差し込むのは、わずかに揺らぐ光と、登場人物たちの微かな温度である。
この章で描かれるのは、剣と魔法と歌――それぞれ異なる三つの力を背負った存在に育てられる少年の一日。彼らは人間ではなく、騎士の鎧、魔導書、そして半透明の歌人。だが彼らの言葉や仕草には、むしろ人間以上の確かさと優しさが滲んでいる。
文章は、具体的でありながら余韻を残す。たとえば「手は実体を持たず、ただ温かい気配だけが髪を通り過ぎていく」という一文。感覚的な描写が、視覚を超えて触覚や温度までも立ち上げ、現実にはあり得ないはずの存在を、むしろ鮮明に感じさせる。
また、世界の外から差し込む夢の断片が印象的だ。高速で行き交う鉄の箱や、光る板。少年が異物であることを示すこれらの記憶は、物語全体に不穏な余白を残す。静謐な日常の裏で、確実に何かが動き始めているのだと予感させる。
強い起承転結はない。ただし、その欠如は欠点ではなく、むしろ「ここから続く日々」を確かに期待させる余韻となる。灰の森の中で芽吹き始めた最初の音色。それがどのように交響曲へと展開していくのか、続きを読みたくなるのではないだろうか?