第16話 クリア後の世界?
問題は解決した…かに見えた。がしかし、本当にそうなのか。悠はすっきりしない日々を送っている。
確かに、家の中で起こっていた不思議な現象はピタリと止まった。ホンさんも「もう大丈夫」と太鼓判を押してくれた。
でも…なぜ船霊の宿った小箱を林田さんが持っていたのか。元々は林田さんの祖父・寅吉の持ち物ではなかったのか。そもそもエエとこのボンやった林田さんが、なぜ奈良に住み、孤独の中で亡くなったのか。その点が分からないままである。
考えてみれば、寅吉と船霊、つまり人間とこの世のものではない者の恋(だよな?)のいきさつも分からないままだ。
とにかく何も分からないまま、いきなりの終焉宣言を出されたのだ。悠の脳内の無限のはてなマークは、まだ大量に残されたままだ。
「で、どうしたいん?」
和歌山から奈良に戻って数日後、学食で落ち合った葛城先輩が聞いてきた。隣にはいつものようにホンさんがちんまりと座り、紙コップに入ったコーヒーを美味しそうに啜っている。
「いや、まだ問題は解決してませんよね?」
悠はおずおずと切り返す。最初はひたすらに怖かった葛城先輩だが、今回一緒に行動しているうちに、随分慣れてきた気がする。怖いというより、余計な愛想がない人なのだ。むしろ、愛想がないだけに、笑顔を浮かべている瞬間に遭遇すると、なぜかこちらも救われる感がある。同時に、表情がないと思っていた葛城先輩だが、よく観察すると、微妙に表情が変化する。悠自身が葛城先輩をじっと見つめる機会がなかっただけなのだ。
いや、本題は葛城先輩の表情の話ではない。林田さんと船霊のつながりだ。そこが分からないままなのだ。謎の本質に迫らないと、また同じことが起こる気がする。特に、「見えてしまう」体質の悠にとっては死活問題となってくる。いつでもホンさんや葛城先輩が救ってくれるとは限らない。これからは自分ひとりで対峙していくのだ。今のうちに、解決方法を学んでいかなければ。
「林田波香さんから預かった寅吉さんの日記が糸口になるかも、ですね」と葛城さん。
「じゃあ、それ、早く読みましょうよ」
「あのね、私、夏休み前に院試あるんよ。日記の方は分厚いの数冊あるし、しかも明治時代の仮名遣いやし」
「あ、そうでした…」
「ワタシ、漢字勉強中だからムリですぅ」
いやいや、ホンさんに頼もうとは思っていません…。じゃ、やっぱり俺か…と悠はため息をつく。俺も古文とか苦手やけど、明治の文体ならまだマシかな…。
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