第10話 探偵団(?)結成!
悠が巻き込まれた原因はどうにか分かった。多分、老人が持ち込んだ木箱を掴んだ瞬間、悠は「何か」に取り憑かれたのだ。次の課題はその「何か」の解明だ。
「その燃えた家はどこにあるんかな」
しばらく考えていた聖が再び口を開いた。
「スーパーに行く途中に陸橋があるんですが、陸橋の手前に古い住宅が固まっているところがあるんです」
「ああ、あの団地の隣?」と郡山先生。
「そうです。その古い住宅の一番端の家が燃えていて。崩れそうなくらい古い家やったし、てっきり誰も住んでいないんだと思ってたので、火が出たと聞いてびっくりしました」
そこまで言って悠はあっと口を抑える。
「一人…高齢男性が一人で住んでいたらしいです…ほんで、その火事でその男性が亡くなったと…」
俺ってバカだ。曽爾悠は心からそう思った。俺は「見える」人間だ。でも、それがイヤで怖くて、人に知られるのが怖くて、考えないようにしていた。
親にも話さなかった。親に見放されるのが怖かったのだ。でも、その結果、悠がしてきたことと言えば、「現実逃避」だ。これは現実じゃない…現実じゃないんだ…そう自分に言い聞かせるだけで何もしなかった。そう、何も。
その結果がこれだ。知らないうちに何かに取り憑かれ、家族も危険にさらす。でも、どうしたら良いのかも分からない。挙句の果てに自分の事なのに自分で努力もせず、今も他人任せだ。結局、すべての原因は俺なんだ。
「気にすることはないよ、悠君のせいじゃない」
ホンが笑いかける。
「え?」
「今、悠君、自分が悪いと思っているでしょ。でもそんなことないよ。悠君は優しいから、人間にも霊にも好かれます。モテ期来たね!」
ホンちゃんが目をクルクル回しておどけて見せる。カワイイ…って見とれてる場合じゃない。それに俺、霊にまでモテたくない。
「すみません。俺、子どもの頃から何か不思議なものが見えるんですけど、どうして良いか分からなくて…見たくないんです、本当は。でも、どうしても見えてしまう時があって、そういう時は相手が生きているのか死んでいるのかも分からなくて…」
声が詰まる。始めて、自分のことを誰かに相談している。しかも、ゼミの担当教授の前で。
「なるほど」
郡山先生がいつもの声でメガネのつるをまたクイッとする。もはや郡山先生の感情は分からない。いきなり「霊に取り憑かれました」と相談に来るゼミ生はそうそう居ないだろう。ただ、怒ったり呆れたりはしていないようだ。良かった…いや、良いのか?
「曽爾悠君、キミの話はよく分かりました。まあ、よくあることです」
よく…あることなんや。
「あとのことは、葛城聖さんとホンさんに任せます。彼女たちがいれば大丈夫でしょう。あと、定期的に私に報告を入れるように」
「は、はい。ありがとうございます」
曽爾悠は指導教授に頭を下げた。三人は一礼してから研究室を去る。
「さて、曽爾君、行こうか」とホンがニコニコしながらリュックを背負う。
「行くって…どこに?」
「だから、燃えた家に行くんです」と葛城先輩。こちらもショルダーバッグを掴みながら立ち上がった。
「お祓いだの除霊だのする前に、真相を掴まなくては」
確かにそのとおりです。
「探偵団結成ですね。団長の葛城さんの言うことをよく聞くんですよえ」
背後から郡山先生が声をかけてくる。ドアを開けて三人の話を聞いていたらしい。なんだか嬉しそうだ。
「じゃあ、私、副団長します!」とホンちゃんが立候補する。
あ、じゃ、おれ平団員で…と悠がボソッと呟くと、聖が少し笑った。
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