【第11章】夜明けの誓い、新たなる時代へ

 戦いは、終わった。

 王都に連れ戻されたレオナルドとアリアには、国王自らの手によって、厳しい裁定が下された。

 レオナルドは、王太子としての地位を完全に剥奪され、その身柄は遠い南の修道院へと幽閉されることが決定した。聖女を騙り、国を混乱に陥れたアリアもまた、レオナルドと共に同じ修道院へ送られることになった。表向きは神に仕える身となるというものだが、事実上の永久追放だった。


 同時に、私イザベラ・フォン・ヴァイスにかけられていた「聖女への嫉妬による殺人未遂」という冤罪も、国王の名において正式に撤回された。ヴァイス公爵家の名誉、そして私の名誉は、完全に回復されたのだ。


 王都は、国の根幹を揺るがした今回の事件の後始末に追われていた。国力の疲弊は著しく、人心も荒んでいる。

 国王は、ゼノと私を王城に招くと、頭を下げて懇願した。

「シュヴァルツ辺境伯、そしてイザベラ夫人。どうか、この国の立て直しに力を貸してはくれまいか。そなたの軍事的な知見と、夫人の持つ革新的な内政の才は、今の王国にとって必要不可欠なのだ」

 それは、国王からの最大限の賛辞であり、協力要請だった。


 ゼノは、しばらく黙って国王の言葉を聞いていたが、やがて静かに口を開いた。

「陛下の要請、お受けいたします」

 国王の顔に安堵の色が浮かぶ。だが、ゼノは言葉を続けた。

「ただし、一つ条件がございます。私の本拠は、どこまでいっても、あの北の『冬の領地』です。そして、私の隣には、常に妻であるイザベラがいます。我々は、王都の都合に振り回されるために力を貸すのではありません。この国の、真の未来のために尽力するのです」

 それは、王都への恭順ではなく、対等なパートナーシップを求めるという、静かだが力強い独立宣言だった。私たちはもう、理不尽な命令にただ従うだけの存在ではない。

 国王は、ゼノの言葉に、彼の揺るぎない意志と、隣に立つ私への深い愛情を感じ取ったのだろう。彼は、満足そうに大きく頷いた。

「……承知した。それでこそ、我が国が誇る『氷の騎士』だ」


 王都からの帰路、二人で馬を並べて進みながら、私は感慨にふけっていた。

 私はもう、「悪役令嬢」でもなければ、「追放された令嬢」でもない。

「辺境伯妃イザベラ」として、そして、これからは王国の復興に貢献する重要な人物として、新たな人生を歩み始めるのだ。

 ゼノが、私の手をそっと握った。

「帰ろう、イザベラ。俺たちの楽園へ」

「はい、ゼノ様」


 彼と二人で築き上げた、あの愛しい領地を思い浮かべる。

 私たちの前には、どこまでも明るく、希望に満ちた未来が広がっているように思えた。

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