第22話 金髪美少女と朝登校

「おはよう愛夏」


「おはよう! 瑠衣君。ちゃんと迎えに来てくれたんだね」


「もちろん。約束したし、愛夏と一緒に居たいしな」


 翌日、約束通り愛夏を迎えに行ってそのまま学校に向かう。

 朝の憂鬱な気分を隣にいる彼女がかき消してくれる。

 ここまで幸せな平日は久しぶりかもしれない。


「昨日、お母さんと何話したの?」


「愛夏の話をしてたな。そんなヤバイ話は聞いてないから安心してくれ」


 少しだけ不安そうに愛夏は俺に話を切り出した。

 きっと愛美さんが俺に変なことを吹き込んでいないか不安だったのだろう。

 確かに、愛美さんは口が軽そうではあるけど本当に言ってはいけないことは言わない人だと思う。


「むぅ~私が聞いてるのは内容なんだけどな。その感じだと教えてくれないでしょ?」


「正解。あんまり本人に話すことでもないしな。でも、その話を聞いて愛夏のことを更に好きになったから安心してくれ」


 頬を膨らませて不機嫌さをアピールしてくる愛夏が愛おしくて頭を撫でる。

 本当に撫で心地の良い頭でいつまでも撫でていたくなる。


「なんかモヤモヤするなぁ~」


「まあまあ。手でも繋ぐか?」


「なんでいきなり。まあ、繋ぐけど」


 せっかく付き合ったのだから登校中に手を繋ごうと思って切り出したけど、文脈がおかしかったな。


「なんか、こうやって登校中に手を繋いでると恋人になったって実感するな」


「だね! ドキドキするけどそれ以上に心地いい感じがしてすごく良い!」


 隣を歩く彼女は本当に明るい笑顔で笑っていて、それを見た俺は見惚れてしまう。

 やっぱり可愛いな。

 こんなにも可愛い子と付き合えた事実を実感して幸せな気分が止まらなくなる。


「おはよ~さん。朝から手を繋いじゃって。やっと付き合ったか?」


「おはよう陽太。見ての通り付き合ったし、今はとても幸せな朝の気分を満喫してるから邪魔しないでくれ」


 うちの学校の制服を着て登校している生徒が多くなってきた通学路を歩いていると、いつものように陽太が後ろから肩を叩いてきた。

 全く、空気の読めない奴である。


「……へ? お前それマジで言ってんの?」


「マジだよマジ。てか、隣に本人が居るのにこんな痛い嘘をつくほど俺の心臓は丈夫じゃねぇ」


「それは確かに」


 いつもみたいに陽太と茶番を繰り広げていると、隣から愛夏が話しかけてくる。


「2人って本当に仲いいよね! 昔からの知り合いだったりするの?」


「いや、こいつと初めて会ったのは二年生になってからだな。なっ陽太」


「ああ。この一年瑠衣には世話になりっぱなしだな」


 爽やかにそういう陽太だけど、俺もこいつに十分助けられてるからトントンって感じだな。


「へぇ~そんな印象はあんまりなかったかな。二人とも仲いいから昔からの知り合いだと思ってた」


「瑠衣、俺達もしかして前世では親友だったんじゃないか?」


「変な事いうなよ。てか、手を握ってくるな!」


 愛夏と繋いでいる手と逆の手を掴んでくる陽太を引きはがす。

 せっかく愛夏と手を繋いでいるのに、野郎の手なんか握りたくない。


「冷たいこと言うなよな~まあ、何はともあれ。おめでと」


 ニカッと笑いながら陽太は俺たちを祝福してくれる。

 本当に恨めない奴で、いい奴だ。


「ありがとな」


「ありがとう! 空風くん!」


 二人でお礼を言うと陽太は嬉しそうに笑う。

 相変わらず笑顔の似合う奴だった。


「じゃあ、俺は先行くな! あんまり新婚さんの邪魔したくないしな」


「まだ結婚してないけどな?」


ね」


「俺のいる前でイチャイチャするのやめてもらっていいか? 胸焼けしそうだ」


 陽太はそう言いながら学校に走り去っていった。

 たまには、こんな風に誰かに見せつけてもいいだろう。

 まあ、今も手を繋いでるわけだからかなりの注目を集めてるわけなんだけどな。


「ふふっ、空風くんって良い人だよね」


「ああ。話の分かる奴だし、気遣いもある程度はできるからな。いい友人だよ」


「空風くんみたいに瑠衣君の良さがわかる人がいて私は嬉しいよ。えへへ」


 本当にうれしそうに笑う愛夏に見とれながら朝の登校時間を楽しむのだった。


 ◇


「へぇ~やっと付き合い始めたんだなあいつら」


 俺は学校に向かって走りながら呟く。

 瑠衣はぶっきらぼうだし、たまに口は悪いけど本当にいい奴だと思う。

 面倒見は良いし、本人に自覚は無いんだろうけどあいつはかなりスペックがいい。

 なのに、驕らずに真面目で謙虚に過ごしてる。

 人助けも頻繁にしてるっていう、なんだかどこかのアニメの主人公みたいなやつだ。


「でも、良かったぜ。あの二人ならお似合いだ」


 学校の連中は瑠衣を下に見てるやつが多いけど、俺は絶対にそんなことは無いと思っている。

 むしろ、一ノ瀬さんでちょうど釣り合いが取れていると思うほどだ。


「というか、藍原はないよな」


 瑠衣が藍原のことを好きと知った日は少しどうかと思ったくらいだ。

 確かに優等生ではあるし容姿も整っていると思う。

 でも、瑠衣に対する扱いが悪い。

 多分、藍原はそんな自覚が無いんだろうけど瑠衣を物みたいに扱ってる節があるし。

 そんな相手と一緒になっても幸せにはなれないだろう。


「その点、一ノ瀬さんなら幸せになれそうだよな~」


 俺には彼女がいるから羨ましいとは思わないけど、クラスのほとんどの連中が羨ましがるだろうな。


「俺ができることはクラスの連中が瑠衣に過度にちょっかいを出さないようにするくらいだな」


 あいつには返しくれないくらいの恩がある。

 普段返す機会がない分こういう時に返していかないとな。

 俺はそう心に決めながら教室に向かうのだった。

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