第21話 金髪美少女の出会い
「今日はありがとね! 後、これからよろしくお願いします」
「こちらこそ。よろしく頼む」
愛美さんの手料理を食べた後、家に帰ろうと玄関に向かった俺に愛夏はそう声をかけてくれた。
今日から晴れて恋人同士になったわけだけど、こうして少しだけぎこちない会話になってしまっている。
まあ、それも付き合いたての醍醐味ということで楽しむことにしよう。
「瑠衣君、今日は私が車で送っていくわ」
「え、いや、申し訳ないですよ。そこまで遠いわけでもないですし」
「いいのよ。今日はいつもより遅い時間帯だし、車を運転するくらいならそこまで苦じゃないし」
「そういう事なら、お言葉に甘えて。お願いします」
頑なに断ることでもないし、送ってくれるという事ならありがたいので送ってもらうことにした。
「愛夏はお風呂に入っていて頂戴」
「え? 私も瑠衣君を送りに行くよ」
「ダ~メ。車の中とは言え女の子が外を出歩いていい時間じゃないんだから。それに私は瑠衣君と少し話したい事があるから」
目の前でそうやり取りをしていて、少しだけ身構えてしまう。
愛美さんが俺と二人で話したい事って何なのだろうか?
「むぅ~わかった。じゃあ、また明日ね。瑠衣君」
「ああ。明日の朝迎えに来るよ」
不服そうにしながらも最終的には愛夏は愛美さんに従った。
こうして俺は愛美さんが運転する車に乗って送ってもらうことになったのだ。
◇
「今日はこんなに遅くまで付き合わせてごめんなさいね。ついつい浮かれちゃって」
「いえ、とても楽しい時間でした。自分の家は両親が昔から忙しくて、あんな風に楽しく食事をする機会が少なかったので」
愛美さんは運転しながら楽しそうに語りかけてくる。
俺も愛美さんと話すのは楽しいから嫌いじゃないけど、愛美さんは俺たち2人でしか話せない何かを話そうとしている。
そんな予感がした。
「ならよかったわ。……それとありがとうね」
「え?」
いきなりお礼を言われて戸惑ってしまう。
いつもお世話いなっているのは俺の方で、愛美さんにお礼を言われるようなことをした覚えはない。
だから、何に対してのお礼かはわからなかった。
「あの子と付き合ってくれて」
「お礼を言われるようなことじゃないですよ。俺が愛夏と付き合いたくて付き合ってるので」
「ふふっ、そうなんだけどね。でも、あの子があんなふうに誰かと遊んでるのもあんなに純粋な笑顔をしてるのも初めて見たから嬉しくて」
「……そうなんですか?」
愛夏は学校でかなり人気だから俺みたいに家に呼んだりして遊んでいると思っていたのだけど、愛美さんの話を聞く感じそうではないらしい。
「そうよ。あの子は昔から人間関係があまり良くなくてね。誰かと関わるときも、常に壁を作っていたわ。そんなあの子が少し前に、楽しそうに男の子の話を私にしてきたのよ」
楽しそうに愛美さんはコロコロ笑っていた。
話の流れ的に、その男の子って言うのは俺の事なんだろう。
「そうだったんですか?」
「ええ。本当に楽しそうにその話をするものだから、つい聞いちゃったのよ。その子のこと好きなの? って」
これ以上は愛夏のいないところで聞かないほうが良いのかもしれないけど、どうしても続きが気になってしまう。
「そしたら、顔を真っ赤にして「そうかも」って言ったのよ。あんな表情ができるなんて私知らなかったわ。だから、あの子と一緒になってくれてありがとうね。できることなら、これからも一緒に居てあげてくれると嬉しいわ」
「もちろんです。愛夏と離れるつもりなんてありませんから」
「なら安心だわ。じゃあ、これからも娘のことをよろしくね」
「任せてください!」
そんな会話を愛美さんとしているとすでに、愛美さんが運転する車は俺の家の前についていた。
「送っていただいてありがとうございます」
「ええ。じゃあ、また今度遊びに来て頂戴ね」
そう言うと愛美さんは車を走らせて帰っていった。
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