幼馴染に振られてから同じクラスの金髪美少女が遠慮なく落としに来る

夜空 叶ト

第1話 高校二年のクリスマスにて失恋

「友達としては好きだけど、ごめん。瑠衣るいとは付き合えない」


 高校二年のクリスマス。

 生まれたころからの付き合いで幼馴染でもある藍原あいはら 穂乃果ほのかに振られた。

 よくある振り文句は、俺の頭の中に残り続けることになる。


 そんなことを言われても、俺は明日からどうやって穂乃果と接すればいいのか。

 幼馴染に告白して振られると、こういった関係性にも響くから厄介だ。


「何がダメだったんだろうな」


 ベッドに転がって考える。

 今まで長い時間一緒にいたし、何回もデートにだって行った。


 それなのに振られてしまった。友達のままでいたい。なんて残酷な言葉なんだろう。

 その言葉は告白を振った側のエゴでしかない。


「本当、告白なんてしなければよかった」


 告白なんかしなければ、こんなに辛い思いをする必要もなかったし、明日から穂乃果とどうやって接すればいいのかなんて悩まなくてもよかった。


「寝るか。全く人生最悪のクリスマスだ」


 今日はクリスマス。俺は穂乃果に告白をして見事に撃沈。

 明日からどうやって過ごせばいいのか。希望が無くなった。


「まあ、明日のことは明日の俺が何とかしてくれるだろ。今はただ、現実から逃げたい」


 ベッドにうずくまって目を瞑る。今日一日歩き回った疲れもあったのか、程よい睡魔が俺を襲ってきた。

 俺はその眠気に逆らわずにそのまま眠りについた。


 ◇


「朝か。今日は何をしようかな」


 クリスマスが終わって今日は12月26日。いたって普通の平日である。

 冬休みの真っただ中だから、学校もないし冬休みの課題はすでに終わらせている。

 だから、やるべきことは特にないのだが……


 何かをしていないと気が滅入ってしまいそうなので、重い体を引きずってベッドから降りる。

 何とかして洗面台にたどり着いて、顔を洗う。

 真冬の冷水を顔に浴びせると先ほどまでぼやけていた意識が鮮明化する。


「朝ごはん食うか」


 父さんと母さんは朝から仕事ですでに家にいない。朝ごはんが用意されていると言う事もないので、トーストを焼いて食べる。

 少しだけ心が落ち着いた。


「ん? こんな時間に誰からだ?」


 朝ごはんを食べて一息ついているとスマホに一軒のメッセージが入っていた。


「俺の連絡先を知っている奴なんてそうそういないと思うけど」


 交友関係はあまり広くないので、こんな朝からメッセージを送ってくる奴は限られてくる。

 それこそ、両親か穂乃果くらいしかいないような気がする。


「穂乃果かよ。少し気が重いな」


 画面を見てみれば、そこには見知った名前の藍原 穂乃果という名前が表示されていた。

 昨日振られたばかりだから、メッセージの内容を見るのも少し億劫に感じてしまったため、一瞬無視しようと思ったら電話がかかってきた。


 昨日振った男に軽々電話をかけれるなんて、穂乃果の積極性は相変わらずだ。


「……もしもし?」


「もしもし! 瑠衣今日暇?」


「暇と言えば暇だけど……何かあったのか?」


「じゃあ、今から遊びに行こう! 10分待ってあげるから支度して迎えに来てね!」


「ちょっちまっ……切りやがった」


 俺が彼女を止めるよりも早く電話を切ってしまった。

 どんな思考をしてたら振った男と翌日に遊びに行こうなんて考えが出るんだ。

 ……まあ、穂乃果らしいといえばらしいんだけど。


「……行くしかないよなぁ~ここで行かなかったらすごく怒られそうだし、俺ばっかり変に意識してるのもなんだかアホらしいしな」


 そう割り切って支度を済ませた俺は穂乃果の家に向かった。

 予想していたよりも緊張していないのは、穂乃果との付き合いが長いからなのか、それとも俺が能天気なのか。

 まあ、どちらでもいいか。


「穂乃果~言われた通り来たぞ~」


 隣にある穂乃果の家を訪ねるとすぐに玄関が開かれる。

 出てきたのは、昨日見たのと変わらない穂乃果の姿だった。

 茶色の髪を肩の少し下まで伸ばしていて、瞳は綺麗な翡翠色をしている。

 いつ見てもかわいい穂乃果の姿に見惚れてしまう。


「お! ちゃんと10分でこれたね! 褒めてあげるよ!」


「なんでそんなに上から目線なんだよ。てか、頭撫でんな」


 よしよしと頭を撫でられるからその手を振り払う。

 身長は俺よりも低いから少し背伸びをして頭を撫でてきていた。

 こいつはいっつもこんな事をしてくるよな。


「ええ~ちゃんと言う事を聞けるこの頭は撫でてあげないといけないでしょ?」


「俺は犬じゃない」


「あはは~」


 いつものようにじゃれあいながら移動を開始する。

 昨日まであんなに落ち込んでいたのに、こうして会ってみればあまり緊張していない自分に少しビックリした。

 もう少し緊張したり、話せなかったりするかと思ったのだが。

 どうやら、俺のメンタルはそれなりに強かったようだ。


「それで? わざわざ今日俺を呼び出した理由はなんなんだ?」


「いや、暇だったから? あと、服を買いに行きたかったからってのもあるかな~」


 能天気に穂乃果はそういう。

 個人的にはこうして幼馴染のままでいられるのは嬉しいのだけど、逆に言えば俺のことを本当に異性として認識していないんだと思い知らされて悲しくなる。


「ほかの奴誘えばいいだろ? お前人気者だし」


 穂乃果は俺と違って交友関係がかなり広い。本人の明るい性格も相まって男女問わずに人気があるのだ。だから買い物くらいなら違う友達を誘えばいいと思う。

 少なくとも、昨日振った幼馴染を誘うのは明らかな人選ミスだ。


「いやまあ、そうなんだけどさ。遊んでて一番居心地がいいのは瑠衣だからさ。居心地良いっていうか、落ち着けるっていうかね」


「何だよそれ」


 そういわれて嬉しくないと言えば噓になってしまう。だけど、逆に言えば男として見られていないという事なのだろう。

 それはそれで凹んでしまう。


「別にそんな大層な理由があるわけじゃないよ。私は居心地がいい人と一緒にいたいだけだし。それが瑠衣だったってだけ」


 ……こんなことを言われたら昨日振られたばかりなのに勘違いするだろうが。

 こいつが何考えてんのか本当にわかんねぇ。


「そう言われて悪い気はしないな。それで、向かう場所は決まってるのか?」


「うん! 駅前のショッピングモールに行こうかなって! あそこならいろんなお店があるから時間を潰すのには最適でしょ?」


「そうだな。確かにいろんな店があるから時間を潰すのには困らないと思うが、そんなに時間を潰したいのか?」


 正直、時間を潰すという目的だけなら家でゲームでもすればいいと思うのだが、服を買うという目的もあるのだからしょうがない。


「うん! 私、暇なの嫌いだし。瑠衣と遊んでるのは楽しいからね!」


「……」


 そんな屈託のない笑みを向けられると皮肉すら言えないじゃないか。

 穂乃果は本当に卑怯だ。

 こいつは一緒にいるのは確かに楽しいけど、男として見られていないと思うと心が軋む。今日遊び終わったらしばらく距離を置こう。

 少なくとも、昨日の失恋の傷が癒えるまでは。

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