<プロローグを読んでのレビューです>
物語は暗い部屋に閉じこもる男の姿から始まる。かつてはゲーム世界の頂点に立った彼が、現実に取り残され、孤独と怠惰に沈む姿が淡々と描写されている。その一方で、過去の栄光や大会での興奮、そしてオンライン世界の広大さが挿入され、現在との落差を際立たせている。読者は自然と「ここからどう変わっていくのか」と期待を抱かされる構成だ。
印象的だったのは、「薄暗い四畳の部屋、眩く光る画面の中で俺はただ自分の存在を紛らわせ続けた」という一文。
部屋の狭さと画面の輝きの対比が、現実の閉塞と仮想の解放を端的に表し、主人公の生き方そのものを象徴しているように感じられる。
全体を通して、ゲームの世界を細部まで丁寧に描きながらも、現実との落差を一つのリズムとして積み重ねていく。その語り口の落ち着きと、淡々とした描写がかえって主人公の感情を際立たせ、物語の次を読み進めたくなる魅力を生んでいる。