day23.探偵
俺が中学生になったばかりの頃、じいさんが神社に剪定に行くと言うので、手伝いとしてついて行った。
いつもなら笑顔で飛び出してくる葵が出てこなくて、どうしたんだろうと思っていたら、葵のおじいさんの神主さんが困ったように笑った。
「葵は今朝から機嫌が悪くてね、どこかに隠れちゃったんだ。藤乃ちゃん、手が空いたら探してくれるかい?」
「わかりました」
俺はうなずいた。
じいさんの指示で、剪定後の枝や葉っぱを箒で集めたり、雑草を抜いたり。ひととおり終わってから、葵を探しに行った。
「……見つけた」
葵は神社の裏手、神主さんの家と社の間に隠れていた。
膝を抱えてしゃがみこんで、かわいい顔をふくらませている。
「なんでわかったの」
俺が隣にしゃがむと、ふてくされた声で葵が見上げてきた。
「わかんないから、神社の中を全部探した。戻ろう。もうすぐお昼だよ」
「……やだ」
「なんで?」
「お花、かたづけちゃうから」
……それって、どういうことなんだろう。
「あおい、いまのお花が好きなのに」
ああ、そっか。そういうことなんだ。俺は察しがいい方じゃないし、小さな女の子の気持ちなんてよくわからないけど、それでも唇をとがらせて睨む葵の気持ちは伝わってきた。
「……わかった。ちょっと待ってて」
葵の頭をなでて立ち上がると、不満そうな顔で俺を見上げてきた。
「一緒に行く?」
「……うん」
手を差し出すと、小さな手が重なった。
じいさんのところに戻って、お願いをした。
お昼を食べてから、また葵と手をつないで花壇に向かった。
「葵が好きなのは、どれ?」
「これと、これ。あと……」
しおれかけた花の中から、元気そうなのを選ぶ。合いそうなものを探して、いくつかまとめたら神主さんの家に向かった。
神主さんの奥さんが輪ゴムとリボンと包装紙をくれたので、それで花をまとめて小さな花束にした。
「どうぞ」
「……ありがと、ふじのくん……」
泣き出した葵に、なんて言えばいいのかわからない。でも、このために母に教わってきたから、少しでも役に立ててよかった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます